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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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つなぐもの

テントを叩く雨音で、悠真は目を覚ました。


「ん……?」


しばらく横になったまま耳を澄ませる。


一定のリズムで聞こえてくる雨音に、悠真はゆっくりと身体を起こした。


「今日は雨か〜。雨具出さないと」


《アイテムBOX》から雨具を取り出し、テントの外へ出る。


外では、静かに雨が降り続いていた。


辺りの草木はすっかり濡れ、昨日までとは違う、しっとりとした空気に包まれている。


すると、隣のテントからツバキも起きてきた。


「悠真さん。おはようございます」


「おはよう」


ツバキは空を見上げる。


「今日は雨ですね〜」


「そうね。それは?」


ツバキの視線が、悠真の手元へ向いた。


「あ、これですか? これは傘ですね」


悠真は《アイテムBOX》からもう一本取り出し、ツバキへ差し出す。


「どうぞ。みなさんの分もありますから」


「あら、ありがとう」


「作業する時は、こっちのポンチョを使いましょう〜」


続けて取り出したポンチョを見て、ツバキが興味深そうに手に取った。


「ええ。助かるわ。普段は魔物の皮で作られた布を羽織るだけなの」


「そうだったんですね〜。こっちではあまり雨に当たらなかったから、知らなかったです」


「ふふ、あまり降らないものね。山の方はよく降るから、水には困らないのよ」


「なるほど〜」


そのうちフィルとゼノンも起きてきた。


悠真は二人にもポンチョを渡し、全員で野営の片付けを始める。


雨の中、ポンチョを着たフィルは嬉しそうに腕を広げた。


「このポンチョ、すごく雨を弾くので濡れなくて便利で好きです〜」


「おお。魔物の皮もだんだん濡れてくるからな〜」


ゼノンも感心したように、自分のポンチョを眺めている。


「よかったです。朝ごはんは、馬車の中で簡単に済ませましょう〜」


「はいです〜」


「わかったわ」


「そうだな」


雨音の響く中、悠真たちは野営の片付けを進めていった。


馬車の中へ入ると、悠真は《アイテムBOX》からガスコンロを取り出した。


その上にフライパンを置き、ベーコンと卵を焼いていく。


ジュウッ――。


香ばしい匂いが馬車の中に広がる。


焼き上がったベーコンと目玉焼きをパンに挟み、悠真はみんなへ手渡した。


「どうぞ」


フィルはさっそく大きな口で頬張る。


「美味しいです〜。このトロ〜っとした目玉焼きがたまりません〜」


嬉しそうに食べるフィルの横で、ツバキはガスコンロへ興味深そうな視線を向けていた。


「このガスコンロは便利ね〜。こうやって馬車の中でも火が使えるもの」


「そうですね……」


悠真もガスコンロへ目を向ける。


そこで、ふと考えた。


「ツバキさん、ゼノンさん。これ、作れませんかね?」


「これを?」


「はい。炎鉱石と魔石を組み合わせたら、できませんか?」


ゼノンがガスコンロを覗き込み、顎に手を当てる。


「おお、それはいい考えだな〜」


「そうね。今度、作ってみようかしら?」


ツバキも興味を持ったようだった。


「その時は手伝ってもらえるかしら?」


「もちろんですよ」


そんな三人のやり取りを聞きながら、フィルがパンを頬張る。


「なんか、すごい事話してますね〜」


やがて朝食を終えると、フィルが立ち上がった。


「そろそろ出発しますよ〜」


「うん。なら今日は、僕も御者台に乗るよ」


「はい。お願いします〜」


ツバキとゼノンはというと、すでに先ほどの魔道具の話に夢中になり始めていた。


まずはフィルが御者台に座って手綱を握り、雨の中、馬車を走らせる。


しばらく進んだところで悠真と交代した。


悠真はフィルから雨の日の馬車の動かし方を教わりながら手綱を握り、降り続く雨の中、街道を進んでいった。


途中、ぬかるみが酷く、車輪を取られそうな場所では、フィルが《グラビティ》で馬車にかかる重さを調整する。


そうしてしばらく進んでいくと、前方に大きな川が見えてきた。


しかし――。


「ん?」


橋の手前に、大勢の人が集まっている。


悠真は馬車を止めると、御者台から降りて人だかりへ駆け寄った。


「どうしましたか?」


声をかけると、一人の行商人が困ったように頭を掻いた。


「いや〜、まいったよ〜。どうやら鉄砲水で橋が壊れちまったらしくてさ〜。渡れなくて、みんな困ってんだよ〜」


「橋が……」


悠真は川へ目を向ける。


そこには大破した橋の残骸が残されていた。


川は雨の影響で増水し、濁った水が激しい勢いで流れている。


とても歩いて渡れるような状態ではない。


反対岸にもこちらへ渡れずにいる人たちが集まっていた。


「ちょっと待っててくださいね」


そう告げると、悠真は馬車へ戻った。


「ツバキさん。ちょっといいですか?」


「何かしら?」


「実は橋がこの雨で壊れてしまったらしくて。錬金術でなんとかなりませんか?」


「ええ。いいわよ」


ツバキはすぐに立ち上がった。


二人はポンチョを着ると、壊れた橋のそばまで向かう。


何をするのだろうと、行商人たちも悠真たちを囲むように集まってきた。


「ツバキさん。いけますか?」


「ええ。大丈夫よ」


ツバキはその場にしゃがみ込み、地面へ手を触れた。


そして――錬成を始める。


地面が大きく盛り上がった。


「お、おい……!」


誰かが驚きの声を上げる。


盛り上がった地面は形を変えながら、五十メートルほど先にある反対岸へ向かって勢いよく伸びていく。


さらに川の中から何本もの柱が立ち上がり、伸びていく橋を下から支えていった。


やがて――。


先端が反対岸へ到達する。


そこには先ほどまで影も形もなかった、立派な橋が架かっていた。


だが、ツバキはまだ地面から手を離さない。


「仕上げに――《物質の昇華》!」


その瞬間、錬成したばかりの橋が光に包まれた。


ツバキの力によって、橋そのものの強度がさらに引き上げられていく。


光が収まると――。


「おおー!」


「すごいぞー!」


「やったぞー!」


「これで川が渡れるぞー!」


こちら側だけではない。


反対岸からも、大きな歓声が上がっていた。


「お姉さん、ありがとう! 助かったよ〜!」


次々と人がツバキの周りへ集まり、感謝の言葉を伝えていく。


「いや〜、もう半月は橋が架からないと思ってたんだ。姉さんのおかげで待たずに済んだよ〜」


「ありがとう〜!」


「あ、いえ……」


たくさんの人に囲まれたツバキは、少し恥ずかしそうに笑っていた。


その様子を見ていた悠真も笑みを浮かべる。


「ツバキさん。ありがとうございました」


「いいえ。私たちも橋がないと困るもの」


「そうですね。では、馬車に戻りましょう」


二人が馬車へ戻ると、フィルが目を輝かせながらツバキを迎えた。


「ツバキさん。凄かったです〜。あの長い橋を一瞬で錬成していました〜」


「さすがツバキだな〜」


ゼノンも感心したように頷く。


そしてすぐに、


「ほら、乗った乗った。さっきの話の続きでもしようぜ」


「わかりましたよ」


どうやらゼノンの頭の中は、先ほど話していた魔道具のことでいっぱいらしい。


「……はは」


悠真は思わず苦笑した。


「このまま進めば、今日は小さな街ですが、宿でゆっくり寝られそうです〜」


「そうなんだね。なら、もう少し頑張ろう」


再び悠真たちは馬車へ乗り込み、雨の降る街道を先へと進んでいった。

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