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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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声の向こう

八階層でテンペストヒュドラを倒した悠真たちは、九階層へ進む前に休憩を取っていた。


それぞれが回復薬を飲み、先ほどの戦いで消耗した体力を回復させていく。


そんな中、フィルが悠真のそばへやってきた。


「悠真さ〜ん。」


「ん?」


「こないだ食べたチョコレートって、もうないですか〜?」


「ん? あるけど、食べる?」


フィルの表情がぱっと明るくなる。


「はい。食べたいです〜。」


すると、その会話を聞いていたミリアも遠慮がちに手を上げた。


「わ、私は炭酸飲料が飲みたいです。」


「チョコレートと炭酸飲料?」


聞き慣れない言葉に、リシェルが首を傾げる。


「なんだ、それは?」


そして悠真をじっと見つめた。


「悠真のことだから、また変わった物じゃないのか?」


「リシェルも食べる?」


「ああ。食べてみたい。」


悠真は《アイテムBOX》から全員分のチョコレートバーと炭酸飲料を取り出し、それぞれに配っていく。


チョコレートを受け取ったフィルが、嬉しそうに頬を緩ませた。


「これです〜。疲れた時の甘い物です〜。」


ミリアは炭酸飲料を口にすると、満足そうに頷く。


「この、甘くてシュワシュワするやつがいいです。」


初めてチョコレートを口にしたリシェルは、目を見開いた。


「このチョコレートってやつは、なんて甘くて美味しいんだ。」


その隣では、ツバキもチョコレートを味わっていた。


「私はもう少し甘さ控えめでもいいわね。」


「このエールに似てシュワシュワして甘いのもいいが、やっぱりエールが飲みたいな。ガハハハ。」


炭酸飲料を片手に豪快に笑うゼノンを見て、悠真は苦笑する。


「ゼノンさんは相変わらずですね。」


やがて休憩も終わりに近づいた頃――。


フィルがふと九階層へ続く道へ顔を向けた。


「悠真さん。」


「どうした?」


「『助けて』って感じるのが、少し強くなりました。」


悠真の前に文字が浮かび上がった。


ーーーー


【緊急クエスト発生】


風の神龍を救え!


ーーーー


悠真の表情が引き締まる。


「そうなんだね。なら、そろそろ行こう。」


仲間たちもそれぞれ立ち上がる。


束の間の休息を終えた悠真たちは、九階層へ向けて歩き出した。


◇◇◇


九階層へと降りると、そこには巨大な空間が広がっていた。


悠真は周囲を警戒しながら、仲間たちへ声をかける。


「前に、いきなりブレスを放ってきた時があるから、警戒していこう。」


「ああ、わかった。」


「はい。」


「はいです〜。」


それぞれの返事を確認すると、悠真はツバキへ視線を向けた。


「ツバキさん、火の龍核兵も大型化してください。」


「わかったわ。」


「ゼノンさんは、火の龍核兵と一緒に正面で盾役をお願いします。」


「おう。」


続いてフィルへ視線を向ける。


「フィルは、僕とツバキさん、土の龍核兵の後ろにいて。詠唱をお願い。」


「わかりましたです〜。」


最後に悠真は、リシェルとミリアを見る。


「リシェルとミリアは、ブレスや尻尾での薙ぎ払いに気をつけながら、隙をついて攻撃していってくれ。」


「わかった。」


「わかりましたであります。」


それぞれが役割を確認し、九階層の巨大な空間を警戒しながら進んでいく。


部屋の奥。


そこには、邪悪な霧に包まれた神龍がうずくまっていた。


その姿を見つめていたフィルの耳に、不意に声が届く。


(……助けて。もう、……意識が。)


「え?」


フィルが目を見開いた。


「聞こえます。はっきり『助けて』っていう声が。でも、もう限界みたいです〜。」


そして、すぐに杖を構える。


「私は浄化魔法の詠唱に入ります。」


「わかった。」


悠真は神龍から目を離さないまま、仲間たちへ指示を出した。


「ゼノンさん、警戒しながら近づいていってください。」


「おう。」


「リシェルたちも左右から頼む。」


「わかった。」


ゼノンたちが動き始めた、その時だった。


神龍が低い唸り声を上げる。


次の瞬間――神龍の周囲に凄まじい風が巻き起こった。


吹き荒れる風が渦を巻き、巨大な身体を包み込んでいく。


まるで、誰も自分へ近づけさせないという意思があるかのように。


「悠真! とても近づけないぞ!」


リシェルの声が暴風の中から響く。


「わかってる。」


悠真は神龍と周囲の風を見つめる。


「ツバキさん、火の龍核兵に盾を渡してください。」


「わかったわ。」


ツバキが動き始めると、悠真は正面にいるゼノンへ声を飛ばした。


「ゼノンさん! 火の龍核兵が神龍を捕まえたら、ハンマーの方で攻撃してください!」


「意識さえなくせれば、チャンスはあります。」


「おう!」


ツバキは《錬成》で巨大な盾を作り出すと、大型化した火の龍核兵へと渡した。


ゼノンが火の龍核兵を見上げる。


「いくぞ。お前はその盾で突っ込んで、神龍を抑えろ。」


火の龍核兵は頷くと、巨大な盾を構えて駆け出した。


吹き荒れる暴風の中、盾で正面から風を受け止めながら、一歩、また一歩と神龍へ近づいていく。


そしてついに神龍のもとまで辿り着くと、その巨大な身体を押さえ込んだ。


「グオオオオオッ!」


神龍が激しく暴れ始める。


その隙にゼノンが神龍へと近づいていった。


悠真がその姿を見る。


しかし、ゼノンはハンマーを構えなかった。


「ハンマーより、いいのがあるわい。」


ゼノンが両足を踏ん張る。


「……《炎神武装》!」


瞬間――。


ゼノンの周囲から、凄まじい勢いで神炎が溢れ出した。


噴き上がった炎は巨大な塊となり、さらに膨れ上がっていく。


その大きさは、やがて大型化した龍核兵にも並ぶほどになった。


そして炎の塊は徐々に形を変え――ゼノンによく似た、巨大な上半身を形作っていく。


「ゼノンさん。それは?」


悠真が驚いて尋ねる。


「神炎を使ってるうちにな、自分の動きに合わせて動かせるようになったんだ。大きさも自由自在だぞ。」


「はは……。」


悠真は思わず苦笑いを浮かべた。


ゼノンは神龍を睨みつける。


「いくぞ! 目を覚まさんかい!」


ゼノンが右の拳を振り抜く。


それと同時に、巨大な炎の右腕が動いた。


神炎に包まれた巨大な拳が――


神龍へ向かって放たれた。

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