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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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重なる一撃

悠真たちは階段を下り、七階層へと足を踏み入れた。


その先で待ち構えていた魔物を見て、フィルが声を上げる。


「ストームグリフォンです。」


大きな翼を広げたグリフォン。


そして、その身体からは六階層のゲイルリザードと同じように、黒い霧のようなものが立ち昇っていた。


「やはり、邪悪な霧みたいなのが出てますね。」


悠真はグリフォンから視線を逸らさないまま、フィルへ告げる。


「フィルは俺の後ろに下がってて。」


「はいです。気をつけて下さい。グリフォンは、風の刃を飛ばしてきます。」


「ツバキさん。」


「わかってるわ。」


ツバキは龍核兵たちに触れると、《古代錬成》を発動する。


龍核兵たちの身体が形を変え、中型ほどの大きさへと変化した。


さらにツバキは土の龍核兵へ、錬成した盾を持たせる。


「あなたはフィルの護衛をして。」


土の龍核兵はフィルの前へ移動すると、大きな盾を構えた。


その様子を窺っていたストームグリフォンが動き出す。


巻き上がる風を全身に纏いながら、ゆっくりとフィルへ近づいてくる。


「くっ、これでは簡単には近づけないぞ。」


リシェルが剣を構えながら顔をしかめる。


するとゼノンが、火の龍核兵へ視線を向けた。


「お前ならいけるはずだ。行ってこい!」


火の龍核兵が勢いよく飛び出し、ストームグリフォンへ襲いかかった。


巻き上がる風に阻まれ、思うようには近づけない。


それでも火の龍核兵は踏み込み、爪による攻撃を繰り返す。


いくつかの攻撃はグリフォンの身体を捉えている。


だが、なかなか決定打には繋がらなかった。


「ツバキさん。錬成でグリフォンを抑えましょう。」


悠真は続けてリシェルを見る。


「リシェル。ミリアとフィルを頼む。」


「わかった。」


ツバキはすぐさま床へ手を当てた。


「《錬成》」


次の瞬間――


グリフォンの上下から、巨大な石柱が一気に伸びる。


ガンッ!


上下から迫った石柱が、ストームグリフォンの身体を挟み込んだ。


「今だ!」


悠真は《瞬歩》で一気に間合いを詰める。


「《アイスエンチャント》!」


剣に氷が纏わりつき、その刀身が伸びていく。


悠真の手には、二メートルほどのロングソードが作り出されていた。


そのままグリフォンへ斬りかかろうとした――その時。


グリフォンが体勢を立て直し、翼を大きく振るう。


鋭い風の刃が、悠真へ向かって放たれた。


「くっ!」


悠真は咄嗟に《空歩》で空中を蹴り、風の刃をかわす。


「やはり、そんな簡単にはいかないか。」


着地した悠真へ、ゼノンの声が飛ぶ。


「悠真! 一人で突っ込むんじゃねえ。龍核兵と合わせろ!」


悠真は、先ほどからグリフォンへ攻撃を続けている火の龍核兵を見る。


「……はい。」


その声に反応するように、龍核兵も悠真を見た。


悠真と火の龍核兵が、ストームグリフォンを挟むように左右へ分かれる。


互いに位置を取ると――


同時に地面を蹴った。


ガッ!


火の龍核兵の爪がグリフォンを捉える。


そして――


ザンッ!


反対側から振り抜かれた悠真の氷の剣が、その身体を斬り裂いた。


二人の合わせた攻撃を受け、ストームグリフォンは石柱に挟まれたまま、ついに動きを止めた。


「なんとかなりましたね。」


動かなくなったストームグリフォンを確認し、悠真は息を吐いた。


「ゼノンさん、ありがとうございます。」


「悠真。攻撃の時こそ周りを見ろ。」


ゼノンの言葉に、悠真は素直に頷く。


「はい。わかりました。」


ツバキは倒れたストームグリフォンへ視線を向けながら、考えるように口を開いた。


「今回は、フィルを狙ってたとは思うけど、むやみには襲いかかってこなかったわね。」


六階層で遭遇したゲイルリザードとは、どこか様子が違っていた。


「魔物の強さと関係もあるのかしら。」


「わかりません。でも、それなら私にも攻撃する隙はあると思います。」


フィルの言葉に、ツバキが頷く。


「そうね。次の魔物はAランク相当のはずだから、あなたの力も必要なはずよ。」


「はいです。」


悠真は仲間たちを見渡した。


「そろそろ行きますか。」


「はい。」


「はいです。」


一行は再び歩き出し、次の階層へと向かった。


階段を下り、悠真たちは八階層へと足を踏み入れた。


そこには、これまでの階層とは比べものにならないほど広い空間が広がっていた。


そして、その中央――。


三つの首を持つ巨大な蛇の魔物が、身体から邪悪な霧を立ち昇らせていた。


フィルがその姿を見て、表情を強張らせる。


「ヒュドラです。テンペストヒュドラ……。」


次の瞬間、悠真が叫んだ。


「みんな、防御態勢に!」


悠真はすぐさま《魔力障壁》を展開する。


ツバキは床へ手を当て、《錬成》で分厚い石の壁を築き上げた。


さらに土の龍核兵が前へ出て、盾を構える。


「《アースウォール》!」


フィルの魔法によって、土の龍核兵のさらに前方へ巨大な土の壁がせり上がった。


その直後――。


テンペストヒュドラの三つの首が大きく口を開く。


三つの口から同時に、邪悪な色をした風のブレスが放たれた。


「みんな、耐えるんだ!」


凄まじい風圧が、一行の防御を襲う。


フィルが作り出した土の壁が砕け散った。


その後ろで盾を構えていた土の龍核兵も、身体の半分を破壊される。


さらにブレスは止まらない。


ツバキが築いた分厚い石壁にまで亀裂が走り、半壊したところで――ようやく風のブレスがおさまった。


「ミリア! 行くぞ!」


「はいであります!」


リシェルとミリアが左右へ分かれ、テンペストヒュドラへ駆ける。


リシェルは右の首へ。


ミリアは左の首へ。


それぞれが剣を振るい、攻撃を叩き込んだ。


同時に、ゼノンと火の龍核兵が中央の首へ向かっていく。


悠真はフィルへ振り返った。


「フィルは、《多重詠唱》を。」


「もう、はじめてます!」


「ツバキさんは、土の龍核兵を修復しだいフィルの護衛に。」


「わかったわ。」


ツバキは半壊した土の龍核兵へ手を触れ、修復を始める。


その間にも、リシェルたちはテンペストヒュドラとの攻防を続けていた。


三つの首から繰り出される噛みつき。


そして、時折放たれる風のブレス。


それらをかわしながら、少しずつ攻撃を重ねていく。


だが――。


「くっ。攻撃したところから回復していってしまう……。」


リシェルが斬りつけた傷が、少しずつ塞がっていく。


「隊長。どうしますか!」


「とにかく、攻撃をしつづけて消耗させるしかない。」


「わかりましたであります!」


一方、中央では火の龍核兵がヒュドラの首へ噛みつき、その動きを押さえ込んでいた。


「おらぁ!」


その隙を逃さず、ゼノンが渾身の一撃を叩き込む。


巨大な斧が振り抜かれ――中央の首が宙を舞った。


「これで、どうだ。」


リシェルとミリアも一旦距離を取り、その様子を見守る。


首を失ったテンペストヒュドラが、大きくよろめく。


しかし――。


「なっ……。」


失われたはずの首が、徐々に再生していく。


やがて三つの首が、再び揃った。


「ダメか。」


ゼノンが顔をしかめる。


「でも、効いてるはずです。攻撃は続けます!」


「はいであります!」


再びリシェルたちが飛び出した。


テンペストヒュドラも攻撃を繰り返す。


だが戦いながらも、その巨体は少しずつ――確実にフィルへと近づいていた。


悠真がそれに気づき、フィルへ声をかける。


「フィル、まだか?」


「もう少しです。」


その間にツバキは土の龍核兵を修復しながら、その身体をさらに大型化させていく。


修復を終えた巨大な土の龍核兵が、フィルを守るようにテンペストヒュドラの前へ立ちはだかった。


「フィル、この子に抑えてもらうから急いで!」


「はいです〜。」


戦いは長引き、リシェルたちの動きにも少しずつ疲れが見え始めていた。


そして――。


「いきます! みなさん離れて下さい!」


フィルの声が響く。


リシェル、ミリア、ゼノン、火の龍核兵が一斉にテンペストヒュドラから距離を取った。


その隙を逃さず、ヒュドラがフィルへ襲いかかる。


「させるか!」


悠真がフィルの前に立ち、《魔力障壁》を展開した。


そしてフィルが、完成させた《多重詠唱》を解き放つ。


「《アイスロック》!」


テンペストヒュドラの足元から、凄まじい勢いで氷が広がっていく。


巨体が次々と凍りついていく中、フィルは続けた。


「《ウィンドウォール》!」


激しい風がテンペストヒュドラの周囲を取り囲み、渦を巻きながらその巨体を包み込む。


そして――。


「《コキュートス》!!」


強烈な冷気が一気にヒュドラを飲み込んだ。


白い冷気のもやが辺りを覆い、その姿さえ見えなくなる。


しばらくして――。


冷気のもやの中から、ヒュドラの姿が少しずつ現れはじめる。


その時、悠真の《気配察知》がヒュドラの気配を捉えた。


(……まだ、生きてる。)


悠真はその光景を見据えたまま叫んだ。


「ツバキさん! 土の龍核兵に大剣を!」


そして大型化した土の龍核兵へ視線を向ける。


「僕に合わせて下さい!」


ツバキはすぐさま大剣を錬成し、大型化した土の龍核兵へと渡した。


悠真も剣を構える。


「《アースエンチャント》!」


剣に土が纏わりつき、瞬く間に巨大な刀身を形成していく。


悠真が構えたのは――


三メートルほどにもなる巨大な大剣だった。


冷気のもやがゆっくりと消えていく。


その中から現れたのは――全身を完全に凍りつかせたテンペストヒュドラだった。


三つの首も、巨大な胴体も動かない。


だが悠真は剣を構えたまま、その姿を見つめていた。


(……まだだ。)


凍りついた身体の奥から、微かに聞こえてくる。


――ドクン。


テンペストヒュドラの心臓は、まだ鼓動していた。


悠真はすぐさま攻撃態勢に入る。


「行くぞ!」


悠真は《瞬歩》で地面を蹴る。


さらに《空歩》で空中を蹴り、テンペストヒュドラの真上へと駆け上がった。


それと同時に、大型化した土の龍核兵も真正面で大剣を振り上げる。


ピキッ――。


テンペストヒュドラを覆っていた氷に、亀裂が走った。


その瞬間――。


悠真と土の龍核兵の大剣が、同時に振り下ろされる。


ズザンッ!!


土の龍核兵の斬撃が、三本の首をまとめて斬り落とす。


そして真上から振り下ろされた悠真の大剣が――テンペストヒュドラの胸を貫き、そのまま心臓を斬り裂いた。


テンペストヒュドラは静かに動きを止める。


今度こそ、その心音も《気配察知》にも反応しない。


巨体がゆっくりと傾き――


ズズンッ!!


大きな音を立てて、地面へ倒れ込んだ。


「よし。」


悠真が大剣を下ろす。


リシェルがテンペストヒュドラを見つめながら、悠真へ声をかけた。


「よく、気が付いたな。」


「うん。戦闘中はなるべく観察をするようにしていたからかな?」


悠真は倒れたテンペストヒュドラへ、もう一度視線を向けた。


「悠真さん、さすがです〜。」


フィルが嬉しそうに声を上げる。


「自分も、気付きませんでした。」


ミリアも倒れたテンペストヒュドラを見ながら感心したように頷いた。


「悠真。ちゃんと見えているな。」


ゼノンの言葉に、ツバキも微笑む。


「ええ。大事なことね。」


みんなから次々と言葉をかけられ、悠真は少し恥ずかしそうに視線を逸らした。


「そんなこと、ないです……。」


そして誤魔化すように、辺りを見回す。


「とりあえず、休憩に入りましょう。」


「そうね。」


「賛成です〜。」


「ああ。ここまでだいぶ体力を使ったな。」


激しい戦いを終え、悠真たちはその場で休憩に入った。


次はいよいよ九階層。


悠真はその先へと続く道を見つめながら、静かに身体を休めた。

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