守護者の先
悠真たちは、五階層へ到達しようとしていた。
階段を下り、その先へ足を踏み入れる。
広い部屋の中央には、一体のガーディアンが立っていた。
その巨体には風が纏わりつき、絶えず周囲の空気を揺らしている。
リシェルが足を止めた。
「あれか? ガーディアンは?」
「ああ。こっちから動かない限り、向こうは襲ってこない。おそらく奥にある扉を守っているだけなんだと思う」
悠真の言葉を聞き、リシェルはガーディアンの後方へ視線を向ける。
そこには、巨大な扉がそびえ立っていた。
「そうみたいだな」
その時――。
悠真の前に文字が浮かび上がった。
――――
【クエスト発生】
風のガーディアンを討伐せよ。
報酬:????
――――
悠真はガーディアンを見据えたまま、ツバキへ声をかける。
「ツバキさん。土と火の龍核兵を大型化してください」
「分かったわ。炎鉱石を出してくれる?」
「はい」
悠真が炎鉱石を取り出し、ツバキへ渡す。
ツバキはそれを受け取ると、二体の龍核兵へ手を触れた。
「《古代錬成》!」
その瞬間、二体の龍核兵の姿が変わっていく。
土の龍核兵は、その身体を膨張させ、ガーディアンと並ぶほどの巨体へ。
そして火の龍核兵は――これまでのリザード型から、炎を纏う人型の姿へと変貌した。
まるで炎そのものが形を得たかのような、イフリート型。
「お〜」
悠真とゼノンの声が重なった。
悠真は興味深そうに、その姿を見上げる。
「火の龍核兵は、こんな形になるんですね」
「そうみたい」
ツバキ自身も、変化した龍核兵を見上げる。
「大きさは変えられるけど、形はこの子たちの意思で決まるみたいね」
悠真はガーディアンを見据えながら、仲間たちへ指示を出す。
「ツバキさんと龍核兵たちは、ガーディアンを抑えてください」
「分かったわ」
「フィルは《多重詠唱》を」
「はいです」
「ゼノンさんは、僕とガーディアンを少しずつ削っていきます」
「おう」
「リシェルとミリアは遊撃を」
「はい」
それぞれが役割を確認し、戦闘態勢に入る。
まず動いたのは、二体の龍核兵だった。
ガーディアンとの距離を詰めていく。
その瞬間――。
それまで微動だにしなかったガーディアンが動き出した。
土と火の龍核兵はそのまま前後へ分かれ、ガーディアンを挟み込むようにして、その巨体を抑えつける。
「今ね」
ツバキが床へ手を当てる。
「《古代錬成》!」
ガーディアンの足元から巨大な岩の腕が生まれ、その身体をがっしりと掴む。
「行きます!」
悠真とゼノンが同時に駆け出した。
二体の龍核兵に前後から抑え込まれたガーディアンへ、左右から攻撃を仕掛ける。
だが――。
「くっ……!」
ガーディアンの身体を包む風が、二人の接近を阻む。
一歩踏み込むだけでも、身体を押し返すような強い風が吹きつけてくる。
それでも悠真とゼノンは少しずつ距離を詰め、左右から攻撃を重ねていく。
その隙を狙い、リシェルとミリアも攻撃を仕掛ける。
しかし、風を纏ったガーディアンとは相性が悪く、思うように攻撃が通らない。
その時だった。
ガーディアンが突然、身体を縮こませる。
その巨体が低く沈み、踏ん張るような体勢を取った。
リシェルが叫ぶ。
「悠真! 離れろ!」
次の瞬間――。
ガーディアンを中心に、竜巻のような猛烈な風が巻き上がった。
「うわっ!」
周囲にいた二体の龍核兵が、凄まじい風に巻き込まれて吹き飛ばされる。
悠真とゼノンも吹き飛ばされたが、なんとか持ち堪えた。
やがて、ガーディアンの周囲で荒れ狂っていた風が止んだ。
そのタイミングを待っていたフィルが声を上げる。
「いきますよ〜!」
「《アイススピア》!」
フィルの前に、巨大な氷の槍が生成される。
続けて――。
「《ウィンドプレス》!」
氷の槍の後方へ、圧縮された空気が集まっていく。
二つの魔法が重なり合う。
「《アイスショットー!》」
圧縮された空気が一気に解放された。
巨大な氷の槍が高速で回転しながら、ガーディアンへ向かって勢いよく発射される。
ガーディアンは咄嗟に風の障壁を張った。
だが――。
氷の槍はその障壁を突き破る。
ガーディアンは両手を伸ばし、迫る氷の槍を受け止めようとする。
それでも勢いは止まらない。
そのまま――。
巨大な氷の槍が、ガーディアンの胴体を貫いた。
ガーディアンの動きが止まる。
そして、その巨体は大きな音を立てながら崩れ落ちた。
悠真たちはなんとか、ガーディアンを倒すことができた。
――――
【クエスト達成】
風のガーディアンを討伐せよ。
LEVEL UP
Lv.64 → Lv.71
報酬:《リフレッシュ》
――――
(《リフレッシュ》……?)
崩れ落ちたガーディアンを見つめながら、ミリアがフィルへ駆け寄る。
「フィルちゃん、すごいです!」
「いつの間に《多重詠唱》なんて使えるようになったんだ?」
リシェルも驚いた様子で尋ねる。
フィルは待ってましたと言わんばかりに胸を張った。
「それはですね〜」
そして、得意げな顔で言い放つ。
「私が大魔法使いだからです。エヘン」
「ぷっ、確かにそうかもね」
悠真が思わず吹き出す。
「違いない」
ゼノンも笑いながら頷いた。
「まあ〜、あながちウソは言ってないかもね」
ツバキも楽しそうに笑う。
「あ〜。またバカにしてますね〜。ムゥ〜」
フィルが頬を膨らませる。
「いえ、ホントにすごかったです!」
ミリアだけは真っ直ぐな目でフィルを見つめていた。
「ミリアちゃんだけだよ〜。そう言ってくれるのは〜」
先ほどまでの激しい戦いが嘘だったかのように、辺りは和やかなムードに包まれた。
そんな中、リシェルがガーディアンの後ろにある巨大な扉の前へと歩いていく。
目の前にそびえ立つ扉を見上げる。
「これが……」
「うん。下の階層へつながる扉だね」
悠真も隣に立ち、扉を見上げた。
「どうする? 一度戻る? それとも試してみる?」
リシェルは少し考えたあと、静かに答える。
「……一度戻ろうと思う」
「そうか、分かった」
悠真はみんなの方へ振り返った。
「みんな、一度戻って族長に報告しにいこう」
「はい」
「はいです〜」
一行が扉から離れていく。
その時――。
フィルだけが、もう一度扉の方へ振り返った。
「…………」
巨大な扉をじっと見つめる。
(……なんだろ、何か呼ばれてる気がする)
「フィル、いきますよ」
先を歩いていたツバキの声に、フィルは我に返った。
「はいです〜」
フィルはみんなの後を追いかける。
そして悠真たちは巨大な扉を後にし、ソレイアへと戻っていった。




