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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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その先に

 翌朝。


 悠真たちは宿を出ると、風の神殿がある山頂を目指していた。


 メンバーは悠真、フィル、そしてミリアの三人。


 ソレイアを囲むように広がる渓谷を、その地形に沿って進んでいく。


 見上げれば、左右には切り立った山々。


 その間には緑豊かな大地がどこまでも続き、時折吹き抜ける風が草木を大きく揺らしていた。


「それにしても……」


 悠真は歩きながら、遥か先へ視線を向ける。


 目指す山頂は、まだ遠い。


 さらにその上空は厚い雲に覆われ、昨日リシェルから聞いた風の神殿の姿を見ることはできなかった。


「まだまだ先は長そうだな」


「そうですね〜」


 フィルも同じ方向を見上げる。


「でも、この先に風の神殿があるんですよね〜」


「ああ」


 悠真は頷いた。


 今回の目的は、まだ神殿へ向かうことではない。


 まずは――ミリアの新しい武器に必要な風鉱石を手に入れること。


 三人は山頂へと続く渓谷を、さらに奥へ進んでいった。


 山頂を目指して進むうちに、いつしか辺りは白い雲に包まれていた。


 先ほどまで見えていた渓谷の景色も、今ではほとんど見えない。


「だいぶ登ってきたな〜」


 悠真が白く霞む先へ目を凝らす。


「ん?」


 少し離れた場所に、何かが見えた。


「あれ……建物か?」


 雲の向こうに、ぼんやりと建物らしき影が浮かんでいる。


 三人はそのまま先へ進んでいく。


 そして、しばらく歩いたところで――。


「うわ〜。凄いな〜」


 悠真は思わず足を止めた。


 視界いっぱいに広がる雲。


 その雲海の中に、いくつもの巨大な建物が浮かんでいた。


「ほんとに建物が浮いてるよ〜。それに、すごく太い木の蔓が大きく絡みついてるね〜」


 浮かぶ建物同士を繋ぐように、巨大な蔓が幾重にも絡み合っている。


 フィルはその蔓を見上げると、少し困ったような顔をした。


「はい〜。この蔓をつたって登って行くことを考えると……」


 さらに上へと続く蔓を目で追っていく。


「まだ、階段の方がよかったです〜」


「フィルちゃんは面白いことを言いますね〜」


 ミリアが楽しそうに笑った。


「でも、あの太さなら歩いて登っていけると思うけど……」


 悠真は建物へと伸びている巨大な蔓を眺める。


「何言ってるんですか〜! あの高さですよ! 今までの神殿の階段の比じゃないですよ〜」


 フィルは遥か上空に浮かぶ建物を見上げながら声を上げた。


「大丈夫です。自分も居ますから」


 ミリアが笑顔で答える。


「う〜……」


 それでも不安そうに蔓を見上げるフィルに、悠真は苦笑した。


「さて、今日は神殿には行かないし、風鉱石の採掘に向かおう」


「はいです〜」


「わかりました」


 三人は風の神殿から少し離れ、ゼノンから聞いていた坑道を目指すことにした。


 しばらく歩くと、山肌にぽっかりと開いた坑道が見えてくる。


 そして、坑道の入口へ差しかかった瞬間――。


ーーーー


〈クエスト発生〉


風鉱石を採掘せよ


報酬:???


ーーーー


 悠真の目の前に、見慣れた文字が現れた。


「……」


 悠真はそれを見ると、そのまま小さく頷き、坑道の中へと入っていく。


 坑道内を進みながら、《採掘》と《鑑定》を使って風鉱石を探していく。


 だが――。


「なかなか見つからないな……」


 周囲の岩肌を調べながら進んでみても、それらしい鉱石は見つからない。


「もう少し奥に行ってみよう」


「はいです〜」


「はい」


 三人はさらに坑道の奥へと進んでいった。


 さらに坑道の奥へと進んでいた、その時だった。


「……!」


 悠真の《気配察知》が、突然何かを捉えた。


「フィル! ミリア! 右横の壁の中から何かくる!」


「えっ!?」


「はい!」


 三人は咄嗟に足を止め、戦闘態勢に入る。


 次の瞬間――。


 ガガッ!


 右側の岩壁が崩れ、体長五十センチほどの何かが勢いよく飛び出してきた。


「ウィンドモールです! きゃー!」


 フィルが声を上げる。


 飛び出してきたウィンドモールは、そのまま全身に風を纏うと、一直線にフィルへと突っ込んでいった。


「危ない!」


 悠真が咄嗟に《魔力障壁》を展開する。


 ドンッ!


 ウィンドモールが障壁へ激突し、その反動で大きくよろめいた。


 その瞬間――ミリアが動く。


「はっ!」


 ザシュッ!


 素早く間合いへ入り込むと、ショートソードでウィンドモールを斬りつけた。


 ウィンドモールはその場へ倒れ、そのまま動かなくなる。


「フィル、大丈夫か?」


「はいです〜」


 無事を確認した悠真は、今度はミリアを見る。


「それにしても、ミリアは素早い動きで凄かったよ」


「そんなことないであります」


 ミリアは少し照れたように答える。


 だが――。


「……!」


 悠真の表情が変わった。


 《気配察知》の反応が、まだ消えていない。


「みんな、まだだよ! 他の場所からも出てくるから構えて!」


「え〜。わかりました〜!」


「はいです!」


 三人が再び武器を構える。


 直後――。


 ガガガッ!


 左右の壁。


 さらに前後からも岩が崩れ始めた。


 次々と姿を現すウィンドモール。


 一体、二体――。


 一度に五、六体が飛び出し、風を纏いながら三人へ襲いかかってくる。


「来るぞ!」


 前方は悠真。


 後方はミリア。


 そして二人の間にフィルが入り、魔法で援護する。


 狭い坑道の中で、次々と飛び出してくるウィンドモールを三人は迎え撃っていった。


 そして――。


「……ふ〜」


 悠真は小さく息を吐いた。


 ようやく《気配察知》から反応が消える。


「終わりましたか〜?」


「とりあえず、今は大丈夫かな」


「二人とも、無事でありますか?」


「ああ」


「大丈夫です〜。でも……」


 フィルは周囲に倒れているウィンドモールを見回した。


「そんなに強くはないですけど、数が多すぎます〜」


「……三十二体くらいですかね」


 数えていたミリアも、少し驚いた様子で辺りを見回している。


「そんなにいたのか……」


 悠真は苦笑すると、倒れているウィンドモールへ目を向けた。


「とりあえず、このままはまずいから《アイテムBOX》にしまっとこ〜」


「お願いします」


 悠真がウィンドモールを次々と《アイテムBOX》へ収納していく。


 すると、フィルが少し疲れた様子で声をかけてきた。


「悠真さん。少し休憩しませんか〜?」


「そうだね」


 悠真は《アイテムBOX》から折りたたみ式の椅子とテーブルを取り出した。


 さらに冷えた炭酸飲料とチョコバーを取り出し、それぞれに手渡す。


「はい」


「ありがとうございます〜」


「ありがとうであります」


 三人は椅子へ腰を下ろし、しばしの休憩を取ることにした。


 フィルはチョコバーの包みを開け、一口かじる。


「……!」


 その瞬間、目を大きく見開いた。


「なんですか、この食べ物!」


「ん?」


「めちゃくちゃ美味しいのに、中に何か入ってますよ!」


「ああ。チョコレートって言うんだ。それと、中にはナッツとかが入ってるよ」


「チョコレート……ナッツ……」


 フィルはよく分からないといった顔をしながら、もう一口かじる。


「よくわかりませんが、この美味しさはたまりません〜」


 その隣では、ミリアが炭酸飲料を不思議そうに眺めていた。


「この口の中がシュワシュワする飲み物も凄いであります」


「ほんとです〜」


 フィルも炭酸飲料を一口飲む。


「甘いのに、お口の中シュワシュワして、チョコレートと合います〜」


「うん。疲れた時は甘い物が一番だからね」


 悠真もチョコバーをかじりながら、椅子の背にもたれた。


 坑道の奥。


 つい先ほどまで三十体を超える魔物と戦っていたとは思えないほど、三人の周りにはのんびりとした空気が流れていた。


 休憩を終えた三人は椅子とテーブルを片づけ、再び坑道の奥へ進もうとした。


 その時――。


「ん?」


 悠真が足を止めた。


 先ほどウィンドモールが飛び出してきた壁。


 その穴の一部が戦闘の衝撃で崩れ、さらに奥へ空間が続いているように見える。


「フィル」


「はいです〜?」


「ここの穴を、魔法で広げてみてくれないか?」


「わかりました〜」


 フィルは穴から少し離れると、杖を構えた。


「《ウィンドカッター》!」


 放たれた風の刃が、穴の周囲へ叩き込まれる。


 さらに二発、三発――。


 ガラガラッ!


 岩が崩れ落ち、やがて人がなんとか通れるほどの大きさまで穴が広がった。


「よし。フィル、ありがとう」


「はいです〜」


「フィルちゃんの魔法も凄いですね」


「えへへへ〜」


 ミリアに褒められたフィルは、嬉しそうに笑った。


 三人は穴をくぐり、その先へと進んでいく。


 そして――。


「わ〜……!」


 フィルが思わず声を漏らした。


 そこには、薄緑色の鉱石が一面に広がっていた。


 壁にも。


 地面にも。


 淡い緑色の光を帯びた鉱石が、辺り一面でキラキラと輝いていた。


挿絵(By みてみん)

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