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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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それぞれの想い

 宿へ戻ると、悠真たちはそれぞれの部屋へと戻っていった。


 悠真も自分の部屋へ入り、ベッドに腰を下ろしてひと息つく。


 しばらくゆっくりしていると――。


 コンコン。


「はい?」


「リシェルだ。今いいか?」


「うん。いいよ」


 ガチャ。


 扉が開き、部屋着姿のリシェルが入ってくる。


「どうしたの?」


 どこか懐かしい感じがして、悠真はそう尋ねた。


「いや……フィルが来て、ミリアと話が盛り上がっていてな……」


 その言い方で、悠真はなんとなく察する。


「フィルにどうせからかわれたんだろ?」


「……」


 リシェルは気まずそうに視線を逸らした。


(とても、悠真のことでいろいろ聞かれたなんて言えない……)


「そんなことないよ……」


 その口調を聞いて、悠真が少し笑う。


「やっと、その口調になったね」


「え?」


「王都にいた時に、二人でいた時の感じ」


「だって、仕方がないじゃないか。みんな居るし……」


 二人は顔を見合わせると、自然と笑った。


「確かにね」


 少し間を置いて、悠真が尋ねる。


「それで、あの後はどうだった?」


「ああ。あの後、盗賊たちを王都まで護送して報告した後は、特別なこともなく、日々任務についていた感じかな」


 リシェルはそこで少し言葉を止める。


「二人で住んでいたから、一人になって……少し寂しかった……」


「え?」


「ち、違う! やっぱり今のは無し!」


 リシェルは頬を赤くして、そのまま黙り込んだ。


「そうか……」


 悠真も少し照れながら続ける。


「俺も、リシェルと離れてからリシェルのことは気になってたよ」


「ホント?」


「うん。剣が折れて、ゼノンに打ち直してもらった時もさ。リシェルから預かった大事な剣だったから、戻ってきた時は本当に嬉しかった」


「……そうなんだ」


 リシェルの頬がさらに赤くなる。


 それを見た悠真も、なんとなく照れくさくなった。


「……」


「……」


 気まずいような、でも嫌ではない沈黙が流れる。


 その時――。


 ゴーン!


 悠真の頭の中に、鐘の音が鳴り響いた。


(え? 鐘の音!)


「リシェル!」


「はい!」


 その直後、悠真の身体が光に包まれ始める。


「ごめん、急だけど行かなくちゃ」


「え?」


「明日のことは頼んでいいか?」


「わかった。いってらっしゃい」


「うん。いってきます」


 悠真は光とともに、その場から姿を消した。


 ◇◇◇


 目が覚めると、いつもの部屋だった。


 悠真はぼんやりと天井を見つめる。


 まだ、アラームが鳴る前だった。


「もう少し、寝てたかったかな……」


 さっきまでリシェルと話していたことを思い出しながら、悠真はゆっくりと身体を起こす。


「さて、今日は会社に行って出張の報告しないとな」


 ベッドから降りると支度を済ませ、会社へと向かった。


 会社に到着した悠真は、そのまま会議室へ向かう。


 部屋の前まで来ると、すでに蓮と美月が待っていた。


「おはよ〜」


「おはよ」


「おはようございます」


 挨拶を交わしたところで、悠真は美月を見る。


「昨日は……ちゃんとまっすぐ帰りましたか?」


「う、うん」


「レポートはまとめましたか?」


「やったよ」


 美月は少し恥ずかしそうにしていたが、いつもの美月に戻っていた。


 その後、三人は会議室へ入り、出張の報告を行った。


 そして――。


「では、三人ともよろしく頼むよ」


「はい。ありがとうございました」


 会議を終え、三人は部屋を出た。


「何とかまとまりそうだな」


 蓮が嬉しそうに話す。


「よし、今夜も飲みに行くか?」


「出張でも飲んでたじゃないか」


 悠真は呆れたように答える。


「美月だって、そんなに頻繁だと迷惑だろ?」


「悠真さんがいるなら……」


「ん?」


「い、いえ!」


 美月は慌てて首を振った。


「そうですね。今夜は帰ってやることがありますから。では、失礼します」


 そう言って、美月は足早にその場を離れていった。


 蓮は悠真へ顔を向ける。


「なら、悠真はどうだ?」


「ん〜、今日はアウトドアショップに行きたいしな〜」


「そうか。じゃあ、また今度な」


「おう」


 それぞれ仕事へ戻り、その日は何事もなく業務を終えることになった。


「今日も作業が捗ったな〜」


 悠真は仕事を終えながら、今日一日のことを振り返る。


「レベルが上がって、重たい物も楽に持てるようになったし、《鑑定》で物がどこにあるかすぐに分かるしな〜」


 以前なら苦労していたことが、今では当たり前のようにできる。


「なにより《気配察知》で、事故が起こる前に判断できるのはすごく良かったな」


「俺……結構変わったんだな」


 悠真は自分の手を見ながら、小さく笑った。


「さて、アウトドアショップに寄って帰ろ」


 仕事を終えた悠真は、そのままアウトドアショップへ向かった。


 ◇◇◇


 店に入り、必要な物を物色していると――。


「あんた、そんなに何に使うの?」


 聞き覚えのある声に、悠真が振り返る。


「ん〜? 陽菜か?」


「陽菜か? じゃないわよ」


 そこにいたのは、幼馴染の陽菜だった。


「こないだもいろいろ買ってったけど、何か多くない? どっか大人数で旅でもするわけ?」


「ち、違うよ。備えあればってやつだよ」


(何か、勘がいいんだよな〜)


「ふ〜ん」


 陽菜は少し疑うように悠真を見る。


「ま〜、大事なお客様ですから〜。いいんですけど〜」


「な。ま〜、いいじゃん」


 悠真は笑って誤魔化した。


 すると陽菜が、少し期待するように悠真を見る。


「ならさ、また今度キャンプに連れてってよ。そしてさ、SUPでもサイクリングでもいいから、一緒にやろ? ね?」


「ん〜。蓮とかもか?」


「……急に誘ったら悪いから、二人で行こ!」


「わかった。なら、今度の連休でいいか?」


「うん! シフト合わせるね」


 陽菜は嬉しそうに答えた。


「じゃ〜、店員さん。コレ下さい」


「は〜い。お会計ですね〜。ありがとうございま〜す」


 陽菜はすぐに店員の顔へ戻り、悠真の会計を済ませる。


 買った物を持って店を出た悠真は、駐車場で荷物を車へ積んでいく。


「悠真!」


 声に振り返ると、店から陽菜が顔を出していた。


「ありがとうね! またね!」


「うん。陽菜もな!」


 悠真は手を上げて返事をすると、車へ乗り込んだ。


 その後も途中でいろいろと買い出しを済ませ、家へと向かった。


 家に帰ると、買ってきた物を片付けながら、夢世界で必要になりそうな物を《アイテムBOX》へ入れていく。


「これと……これも入れとくか」


 準備を進めながら、悠真はふと手を止めた。


「そういえば……今日は、あの違和感は何もなかったな〜」


 ここ最近、現実で感じるようになった不可思議な違和感。


「なんだったんだろうな〜……」


 少し考えてみるが、答えは出ない。


 悠真は再び手を動かし始めた。


 何も起こらなかったことを気にしながら――。

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