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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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あの日と変わらないもの

悠真たちは、ツバキがいつも利用している宿へと向かっていた。


しばらく街を歩いていると、目的の宿が見えてくる。


だが――。


「なんか、宿の前が騒がしいですね。」


宿の前には何人もの人が集まっていた。


ツバキもそちらへ目を向ける。


「何かあったのかしら。」


悠真たちは、そのまま宿へと近づいていく。


すると、人だかりの中に見覚えのある姿があった。


白銀の鎧。


長い銀髪。


見間違えるはずがない。


悠真は思わず足を止めた。


「……リシェル?」


その声に、女性が振り返る。


「――悠真?」


リシェルの目が大きく見開かれた。


驚いた表情のまま、しばらく悠真を見つめている。


「……本当に、悠真なのか?」


「ああ。久しぶり。」


その言葉を聞いた瞬間、リシェルの表情がふっと緩んだ。


「……そうか。」


ほんの少しだけ俯き、すぐに顔を上げる。


「久しぶりだな、悠真。」


その声は、いつもの凛とした騎士のものだった。


けれど、その顔には隠しきれない笑みが浮かんでいた。


悠真もつられるように笑う。


「ああ。」


するとリシェルは、ようやく我に返ったように悠真たちへ目を向ける。


「それにしても……どうしたんだ!? こんなところで。」


「いや、俺が聞きたいよ!」


思わぬ再会に、悠真も苦笑する。


「ちょうどこの国に着いたばかりで、ツバキさんが普段使ってる宿まで来たんだ。」


「そうか。私たちは騎士団の任務でソレイアに来たんだ。」


そこへフィルが嬉しそうに駆け寄る。


「リシェルさん、久しぶりです〜!」


そして、その隣にいた少女にも笑顔を向けた。


「ミリアちゃんも久しぶりですね〜。」


「フィルちゃんも久しぶりです。」


久しぶりの再会を喜ぶ四人を見ながら、ツバキが尋ねる。


「それで、どうしたんですか?」


「ああ、それが……。」


リシェルは困ったように宿を振り返る。


「ここの宿に泊まろうとしたんだが、さすがにこの人数は泊められないと言われてな。他の宿を探すところだったんだ。」


「そういうことでしたか。」


ツバキは宿を見上げると、少し考えてから頷いた。


「それなら、私が懇意にしている宿ですので、聞いてみますね。」


ツバキはそう言うと、宿の中へ入っていった。


そして、宿のオーナーと何やら話を始める。


しばらくして話がまとまったのか、小さく頷いた。


「分かったわ。それでお願いできるかしら。ありがとう。」


オーナーとの話を終え、ツバキは宿の外で待つリシェルたちのもとへ戻ってきた。


「リシェルさん。ここの宿のオーナーが、知り合いの宿を紹介してくれるそうです。そこなら、この人数でも大丈夫みたいですけど……どうしますか?」


「すまない。お願いできるか?」


「はい。では、騎士団のみなさんはそちらの宿をお使いください。」


そこでツバキは、リシェルとミリアを見て微笑んだ。


「それと……せっかくなので、リシェルさんとミリアさんのお部屋はこちらで押さえてもらいました。一緒にこちらへ泊まりましょう。」


「え?」


「いろいろお話ししたいことがあると思うので……ね。」


そう言って、ツバキは意味ありげに微笑む。


「やった〜! ミリアちゃんと一緒にお泊まりできます〜!」


フィルが嬉しそうに声を上げる。


「ミリアはそれで大丈夫であります。」


「そうか。では、よろしく頼む。」


リシェルは騎士団員たちへ振り返った。


「みなは、紹介された宿へ移動してくれ。また連絡をよこす。それまでは宿で待機していてくれ。」


「はっ!」


騎士団員たちは返事をすると、宿のオーナーに案内されて移動していった。


その姿を見送ってから、悠真が口を開く。


「せっかくなので、夕飯も一緒にどうですか?」


「いいのか?」


「もちろんです。」


「やったです〜!」


フィルが再び両手を上げる。


その時――。


「んん。」


低い声が聞こえた。


「あっ。」


悠真はようやく思い出したようにゼノンを見る。


「リシェル。こちらはドワーフの国で一緒になったゼノンさん。」


そしてゼノンにもリシェルを紹介する。


「ゼノンさん。こちらが王都騎士団のリシェルです。俺が王都でお世話になった人です。」


「ゼノン……?」


リシェルが目を見開く。


「まさか、あの伝説の鍛冶師ゼノンか!?」


ゼノンは何も答えず、腕を組んだままリシェルを見る。


「お会いできて光栄だ。」


リシェルがそう言うと、ゼノンは悠真の腰にある剣へ目を向けた。


「悠真に剣をやったのは、嬢ちゃんか?」


「……ああ。そうだが。」


「悠真が折っちまった剣は、俺が鍛え直しておいたぞ。」


リシェルは悠真の腰の剣を見る。


「そうか……。」


そして、少し嬉しそうに笑った。


「それは、すごいことだな。」


「お腹すきましたよ〜。」


そこへフィルの声が割り込んだ。


「荷物置いて、早く行きましょうよ〜。」


「フィル……。」


悠真が苦笑する。


隣を見ると、リシェルも同じように笑っていた。


久しぶりに見るその表情に、悠真も自然と笑みを浮かべる。


◇◇◇


悠真たちは荷物を宿へ置くと、近くの酒場へ向かった。


店内は多くの客で賑わい、料理の香ばしい匂いと楽しそうな笑い声に包まれている。


テーブルには次々と料理が運ばれ、ゼノンは早速、大きなジョッキを手にしていた。


「ガハハハ! ここの酒はうまいな!」


豪快に笑いながら、ゼノンが酒を飲み干す。


「ええ。私もソレイアに来ると、いつもここでお酒を飲んでしまうの。」


ツバキも楽しそうにグラスを傾けている。


「食べ物も美味しいです〜!」


フィルはテーブルいっぱいに並んだ料理へ目を輝かせていた。


「ミリアちゃん、これも美味しいですよ〜。」


フィルが取り分けた料理をミリアへ差し出す。


「はい。美味しいです。」


ミリアも嬉しそうに頷いた。


賑やかな声が飛び交う中――。


悠真は、隣に座るリシェルへちらりと視線を向けた。


久しぶりに会えた。


それが嬉しい。


話したいことだって、たくさんあったはずなのに。


(……何を話したらいいんだろうな。)


いざ隣に座ってしまうと、不思議と言葉が出てこない。


そして――。


それはリシェルも同じだった。


何度か悠真へ視線を向けては、何も言えないまま料理へ視線を戻している。


そんな二人の様子を、向かい側からじっと見ている者がいた。


「お二人さ〜ん。」


フィルだった。


口元を緩ませ、明らかに楽しそうな顔をしている。


「せっかく久しぶりに会えたのに、何か話すことはないんですか〜?」


「え?」


悠真とリシェルが同時にフィルを見る。


「ほらほら〜。」


「フィル……。」


リシェルが少し睨むが、フィルはまったく気にしていない。


悠真は困ったように頬をかき、隣のリシェルを見る。


「えっと……リシェルは、その……元気だったか?」


「あ、ああ。げ、元気だったぞ。」


どこかぎこちない返事をしたあと、リシェルも悠真を見る。


「悠真はどうなんだ?」


「俺か?」


悠真は少し考えてから笑った。


「いろいろあったけど、こうして元気にやってるよ。」


「そうか。」


リシェルの表情が柔らかくなる。


「それもこれも……。」


悠真は少し照れくさそうに視線を逸らした。


「王都でリシェルに会ったおかげかな……。」


「……っ。」


リシェルは一瞬目を見開き、頬をわずかに赤くする。


「そ、そうか……。」


「…………。」


「…………。」


二人の間に、なんとも言えない沈黙が流れた。


すると――。


「あれ〜?」


楽しそうな声が聞こえてくる。


「お二人さん、なんだかお顔が赤くないですか〜?」


「フィル!」


リシェルが声を上げる。


「いい加減にしないか!」


「はい、は〜い。」


フィルはまったく反省していない顔で笑う。


「あとはお二人さんでどうぞ〜。私はミリアちゃんとおしゃべりしますから〜。」


「フィルちゃん、何のお話をしますか?」


「そうですね〜。」


本当に二人だけで話し始めてしまった。


リシェルはそんなフィルを見て、小さく息を吐く。


「まったく……変わらないな。」


その言葉に、悠真も思わず笑った。


二人は顔を見合わせ――。


どちらからともなく、苦笑した。


けれど先ほどまでとは違い、二人の間にあったぎこちなさは少しだけ消えていた。


ゼノンの豪快な笑い声。


ツバキの楽しそうな声。


フィルとミリアのおしゃべり。


そして、久しぶりに再会した悠真とリシェル。


その夜、酒場にはいつまでも楽しげな声が響いていた。

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