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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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日々の積重ね

朝。


悠真たちは、獣人の国へ向けて出発の準備をしていた。


荷物を馬車へ運びながら、悠真はどこか楽しそうに口を開く。


「獣人の国って、どんなところなんだろうな〜」


「香辛料だけじゃなくて、果物や野菜もいっぱいあるんですよ〜」


フィルも楽しみにしているのか、いつもより声が弾んでいる。


「ええ。薬品に使う、月読では手に入らない薬草なんかもありますよ」


ツバキも荷物をまとめながら微笑んだ。


すると、ゼノンも腕を組みながら頷く。


「向こうでしか手に入らねぇ鉱石もあるからな。俺も楽しみだ」


ゼノンは荷物を見回した。


「馬車なら、だいたい二日くらいだ。そんなに荷物もいらんだろ」


「大丈夫ですよ。僕には《アイテムBOX》がありますから」


「ああ、そうだったな」


ゼノンは少し考えると、悠真を見る。


「なら、向こうでも鍛冶ができるように、少し道具を持っていってもいいか?」


「もちろんです」


「それと――」


ゼノンは自分の肩へ目を向けた。


そこには、小さな火の龍核兵がちょこんと座っている。


「こいつを大きくしてもらうのに、炎鉱石も持っていかねぇとな」


そう言いながら、ゼノンは火の龍核兵を指先で撫でる。


その姿を見て、フィルがくすっと笑った。


「すっかりゼノンさんのペットみたいになってますね〜」


「ふふっ」


ツバキも楽しそうに笑う。


「……んんっ! そろそろ出発するぞ!」


ゼノンはごまかすように咳払いをした。


「はい」


準備を終えた悠真たちは馬車に乗り込み、獣人の国へ向けて出発した。



フィルが手綱を握り、馬車を走らせる。


途中で悠真と御者を交代しながら、旅は順調に進んでいった。


やがて悠真が馬車を止める。


「さて、お昼にしましょう〜」


悠真は《アイテムBOX》から折りたたみ式の椅子とテーブルを次々と取り出した。


最後に取り出したのは、大きな鍋。


蓋を開けると、ふわりと白い湯気が立ち上った。


中には、たっぷりの野菜が入った温かそうなスープが揺れている。


「悠真さん、どうしたんですか? これ?」


フィルが鍋を覗き込む。


「昨日のうちに仕込んどいたんだ」


悠真は《アイテムBOX》からボアの肉で作ったベーコンを取り出した。


「あとは、これを切って入れれば出来上がり!」


ベーコンを食べやすい大きさに切り、鍋へ加えていく。


「ボアベーコンと野菜のスープです!」


「野菜がたっぷりで、美味しそうですね」


ツバキが鍋を覗き込みながら微笑む。


その横で、ゼノンは料理ではなく別のものをじっと見つめていた。


「……この折りたたみの椅子? と、テーブル? はどうなってるんだ?」


「あっ」


フィルが得意げな顔をする。


「ふふん。ゼノンさんは初めてでしたね。悠真さんのすごい道具です」


またもやフィルが、なぜかドヤ顔で言う。


「はは。あとで詳しく見てもらって大丈夫ですから、冷める前にスープとパンをどうぞ」


悠真はスープを器によそっていく。


「パンはツバキさんが今朝焼いたものです」


それぞれの前にスープとパンが並ぶ。


「いただきます」


「いただきま〜す」


フィルはさっそくスープを一口飲む。


「美味しいです〜。スープにもしっかり味があります〜」


「このベーコンってのは、塩っ気が効いてて美味いな」


ゼノンも気に入ったようで、もう一切れ口へ運ぶ。


「今度は焼いて出しますよ」


「お〜。それもいいな」


ツバキも野菜を口に運び、ゆっくりと味わう。


「お野菜にも味が染みていて、美味しいですね」


昼食を楽しんだ悠真たちは、再び馬車に乗り込み、獣人の国を目指した。



しばらく穏やかな道が続いていた、その時――。


悠真の《気配察知》が何かを捉えた。


「……魔物が迫ってきます」


フィルが馬車から顔を出し、前方を確認する。


「ファイヤキャトルです!」


街道の向こうから、全身に炎を纏った巨大な牛型の魔物が、こちらへ向かって猛然と突進してきていた。


その姿を見たゼノンが、斧を手に取る。


「じゃあ、俺の出番だな」


ゼノンは馬車から降り、斧を構えた。


「お願いします」


悠真は手綱を握ったまま、その戦いを見守ることにした。


ファイヤキャトルは速度を落とすことなく、ゼノンへ向かって一直線に突進する。


「来い!」


ゼノンは一歩も退かない。


そして、激突する寸前――。


ファイヤキャトルの突進に合わせ、斧の槌側を思い切り振り抜いた。


ガンッ!


激しい衝撃に、ゼノンの斧が大きく弾かれる。


ファイヤキャトルも衝撃で体勢を崩し、巨体をよろめかせた。


「ふんっ!」


ゼノンは弾かれた斧の反動をそのまま利用し、身体をひねる。


そして今度は、反対側の斧刃を勢いよく振り抜いた。


ザンッ!


ファイヤキャトルの巨体が傾き、大きな音を立てて地面へ倒れた。


「どうだ〜! ガハハハハ!」


ゼノンが豪快に笑う。


「やりましたね、ゼノンさん!」


「すごいです〜。よくあの突進に耐えられましたね〜」


フィルが目を丸くする。


「鍛え方が違うんだよ」


ゼノンは誇らしげに胸を張った。


「ええ。お見事」


ツバキも素直に称える。


そして倒れたファイヤキャトルへ目を向ける。


「さて、悠真さん。このままここで解体しながら、野営の準備に入ってしまいましょうか」


「そうですね」


悠真も頷いた。


「フィル〜。ゼノンさんと一緒に野営の準備をしてくれる?」


「はいです〜」


「さて、僕らは解体して、夕飯の準備もしてしまいましょう〜」


「分かったわ」


悠真とツバキはファイヤキャトルの解体を始め、フィルとゼノンは野営の準備に取りかかった。


――のだが。


「おいフィル。このテントってのは、どうなってんだ?」


「ゼノンさん、そっちじゃありません〜!」


「じゃあ、この折りたたみベッドは――」


「それはあとです〜! 先にテントを組み立ててください〜!」


悠真から預かった現代のテントや折りたたみベッドが気になって仕方がないゼノン。


そのたびにフィルに怒られながら、どうにか設営を進めていく。


そんな二人の声を聞きながら、悠真はファイヤキャトルを解体していた。


ふと、手を止める。


「……そうだ」


ファイヤキャトルの肉を見る。


そして《アイテムBOX》に入っているボアの肉を思い出した。


「キャトルとボアの素材があるなら……アレが作れるな!」


「悠真さん、アレとは?」


ツバキが不思議そうに首を傾げる。


「え? まあ、お楽しみってことで!」


悠真は楽しそうに笑う。


「ツバキさん。解体が終わったら、ギリギリ手に収まるくらいの丸いパンを焼いてもらえますか?」


「……?」


ツバキは不思議そうな顔をしながらも、


「分かりました」


と頷いた。



解体を終えた悠真は、さっそく夕食の準備に取りかかった。


ファイヤキャトルの肉と、昨日手に入れたボアの肉を取り出し、包丁で叩くように細かく刻んでいく。


細かくなった二種類の肉を混ぜ合わせ、つなぎを加えてしっかりとこねる。


それを丸く形作り、熱したフライパンへ。


ジュウゥゥ――。


肉の焼ける音とともに、香ばしい匂いが辺りに広がっていく。


両面をしっかりと焼き上げると、ツバキが焼いてくれた丸いパンを半分に切る。


その上に焼きたての肉を乗せ、テリヤキソースをたっぷりとかける。


さらに野菜を重ね、最後にマヨネーズ。


もう半分のパンで挟めば――。


「よし、完成!」


悠真は出来上がった料理をテーブルへ並べた。


「みんな〜、出来たよ〜」


「待ってました〜!」


真っ先にフィルがやってくる。


ツバキは見慣れない料理を不思議そうに眺めた。


「これは何て料理ですか?」


「これは、ファイヤキャトルとボアの肉を使ったテリヤキハンバーガーです!」


「ほぉ。なんだか美味そうだな」


ゼノンは大きなハンバーガーを手に取ると、豪快にかぶりついた。


「……うん。美味い!」


「前に使ったマヨネーズは、こんな使い方もするんですね〜」


ツバキも興味深そうに味わっている。


フィルはハンバーガーを頬張りながら、昼食の残りのスープにも手を伸ばした。


「お昼の残りのスープとも合いますね〜」


こうして四人は、出来たてのテリヤキハンバーガーとスープを囲みながら夕食を楽しんだ。



夕食を終え、夜も更けてきた頃。


フィルたちが寝る準備を始める中、悠真は一人、少し離れた場所で剣を振っていた。


一振り。


もう一振り。


何度も同じ動きを繰り返す。


「悠真さん、今日も剣を振ってるんですね〜」


声をかけたのはフィルだった。


「うん。なんか、あれから毎日振ってないと落ち着かなくて」


「そうなんですね〜」


その会話を聞いていたゼノンが、悠真へ目を向ける。


「そういう積み重ねが大事だからな」


「はい」


ツバキが小さく微笑む。


「さて、私たちはそろそろ寝ましょう〜」


そして悠真を見る。


「悠真さんも、ほどほどにね」


「はい」


「おやすみなさい」


「おやすみなさい」


三人がテントへ戻ったあとも、悠真はしばらく剣を振り続けた。


静かな夜の中――。


剣が風を切る音だけが、何度も響いていた。

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