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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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つながるスパイス

 朝。


 悠真たちは朝食を食べ終えると、出かける支度を始めた。


「それじゃあ、行きましょうか」


「はいです〜」


「打ち直した剣の確認でしたね〜」


「ああ。それと、せっかく魔物を討伐するなら、食材も確保したいしね」


「それなら、美味しい魔物がいいです〜」


 フィルが嬉しそうに答える。


「結局、食べ物なのね」


 ツバキが苦笑する。


「お前ら、何しに行くんだ?」


 ゼノンが呆れたように言う。


「剣の確認ですよ〜」


「食材もです〜」


「…………」


 ゼノンは何も言わず、斧を背負った。


 四人は工房を出ると、冒険者ギルドへ向かった。


     ◇◇◇


 ギルドへ入ると、フィルは真っ先に依頼書が並ぶ掲示板へ向かった。


「この依頼がいいです〜」


 フィルが一枚の依頼書を指差す。


「フレイムボアの討伐か」


「はいです〜。これなら食材にもなりますよ〜」


「やっぱり食材で選んでるじゃないか」


「えへへ〜」


「まあ、いいんじゃない? これにしましょう」


「おう」


 依頼を受けた悠真たちは、フレイムボアが目撃された山の麓へ向かった。


     ◇◇◇


 山の麓へ着き、しばらく辺りを探していると――。


「いました〜」


 フィルが指差す。


 そこには、二体のフレイムボア。


 そして、その奥には一回りどころではない巨大なフレイムボアクイーンがいた。


「相変わらず、クイーンはデカいな〜」


「ですね〜。オスが可哀想になります〜」


「…………」


 悠真は苦笑する。


 その時。


「こら、離れんか〜」


 ゼノンの声が聞こえてきた。


 見ると、火の龍核兵はゼノンの肩に乗ったまま、離れようとしていない。


「ふふ。ゼノンはそのままでいて」


「何でだ?」


「ここで炎なんて使われたら、辺り一面が燃えてしまうわ」


「う……分かった」


 ゼノンは不満そうに答えた。


 悠真はフレイムボアたちへ視線を戻す。


「では、ツバキさんと土の龍核兵は、クイーンを抑えててください」


「フィルと僕で、残りのボアを討伐します」


「分かりました〜」


「分かったわ」


 ツバキは地面へ手をついた。


「《錬成》」


 地面が大きく隆起し、クイーンの両側から巨大な岩の腕が現れる。


 さらに――。


「《物質の昇華》」


 岩の腕が硬度を増し、左右からクイーンの巨体を掴んだ。


「ブゴォォォッ!」


 クイーンが激しく暴れ、岩の腕を振りほどこうとする。


 そこへ土の龍核兵が正面から巨大な盾を押しつける。


 クイーンの動きが完全に封じられた。


 その時には、悠真はすでに動いていた。


「《アイスエンチャント》!」


 手にした剣へ冷気が纏う。


「《瞬歩》!」


 一瞬でフレイムボアとの間合いを詰め、そのまま剣を振り抜いた。


 ザンッ――!


「ブギィッ――!」


 フレイムボアの身体が斬り裂かれる。


 綺麗に切れた切断面は、《アイスエンチャント》の冷気によって瞬く間に凍りついていった。


「……やっぱり、前より振りやすい」


 悠真は手にした剣を見る。


 切れ味だけではない。


 握った時の感触も、剣を振った時の重さも、以前よりしっくりと手に馴染んでいた。


 その時――。


「ブゴォォォッ!」


 もう一体のフレイムボアが、フィルへ向かって突進する。


 地面を蹴り上げ、巨体が一直線に迫る。


 フィルは慌てることなく杖を構えた。


「《アイススピア》!」


 目の前に巨大な氷の槍が形成される。


「いっけぇ〜!」


 フィルが杖を振る。


 ヒュンッ――!


 氷の槍が勢いよく放たれた。


 ドスッ――!


「ブギャァァッ!」


 フレイムボアの横腹へ深々と突き刺さる。


 突進の勢いを失った巨体は、そのまま地面へ倒れ込んだ。


 残るはクイーン。


 だが――。


「もう終わりよ」


 ツバキが再び地面へ手をつく。


「《錬成》」


 ズドドドッ――!


 クイーンの真下から巨大な岩の槍が突き上がった。


「ブゴォォォォッ――!」


 岩の槍が巨体を貫く。


 クイーンはそのまま力を失い、動かなくなった。


「…………」


 ゼノンが手にした斧を見下ろす。


「俺の斧はいつ使えるんだ?」


「ゼノンさんが斧を振ると、ボアが丸焼きになっちゃうから、また今度ですね」


「そうですよ〜」


 フィルがニヤつきながら言う。


「…………」


 ゼノンは不満そうに斧を背負い直した。


 悠真は手にした剣をゼノンに見せる。


「ゼノンさん。どうですか?」


 ゼノンは剣を見てから、悠真へ目を向けた。


「ああ。問題なさそうだな」


「よかった。これでリシェルから預かった剣も使える」


 悠真は安心したように剣を見る。


「ええ。そろそろ戻りましょう」


 ツバキの言葉に、みんなが頷いた。


 その時――。


――――


【クエスト達成】


フレイムボアを討伐せよ。


LEVEL UP


Lv.57 → Lv.59


報酬:《調合》


簡単な薬品、調味料などが調合できる。


――――


「《調合》か」


 悠真は新しく手に入ったスキルを確認する。


(調味料も作れるのか。料理にも使えそうだな)


 新しいスキルの使い道を考えながら、悠真は仲間たちと冒険者ギルドへ戻った。


     ◇◇◇


「はい。確認できました」


 受付嬢が討伐の確認を終える。


 そして、少し驚いたように顔を上げた。


「クイーンも討伐したんですか?」


「そうなんですよ〜」


 フィルが得意げに答える。


「それなら、今回の討伐でフィルさんはCランクに昇格です」


「ホントですか〜? やりました〜!」


 フィルが嬉しそうに両手を上げる。


「よかったね、フィル」


「はいです〜」


 新しくなったギルドカードを嬉しそうに眺めるフィルとともに、四人はギルドをあとにした。


     ◇◇◇


 ギルドの依頼を終えた四人は、ゼノンの工房へ戻ってきた。


 さっそく悠真とツバキは、持ち帰ったボアの解体を始める。


「悠真さんも、解体が上手になりましたね」


「そんなことないですよ。ツバキさんと比べたら、まだまだです」


「ふふ。最初に比べたら、ずいぶん手際がよくなったわよ」


 一通り解体を終えると、一部はそのままアイテムBOXへ保存し、悠真は料理の仕込みを始めた。


 ボアの肩ロースやバラ肉を大きめに切り分ける。


 バラ肉には味をつけ、鍋でじっくりと煮込んでいく。


「悠真さん。これは何の料理ですか?」


「角煮というものです。出来上がりを楽しみにしていてください」


 しばらくすると、肉の煮える匂いにつられてフィルがキッチンへ入ってきた。


「いい匂いです〜。ホント、悠真さんの料理は美味しそうです〜」


「あとは、ロースも焼いていきます」


 熱したフライパンへ肉をのせる。


 ジュウゥゥ――。


 香ばしい肉の匂いがキッチンいっぱいに広がった。


「ん〜。これもいい匂いね」


「お酒にも合いそうだわ」


「ですね。きっと合うと思いますよ」


 その横で――。


 フィルの手が、焼き上がった肉へそっと伸びる。


「フィル」


「…………」


「つまみ食いしないで、テーブルに運んで」


「はーい。分かりました〜」


 フィルは伸ばしていた手を引っ込め、皿を持っていった。


     ◇◇◇


 テーブルに料理が並ぶ。


 ゼノンも席に着いていたが、すでにエールを飲んでいた。


「はい。では、いただきます」


「いただきま〜す」


 ゼノンが目の前の料理を見ながら尋ねる。


「これは何てのだ?」


「角煮です。それと、こっちはボアの生姜焼きです」


 フィルがさっそく角煮を口へ運ぶ。


「ん〜! 角煮、柔らかくて美味しいです〜」


 ツバキも生姜焼きを一口食べる。


「生姜焼きはご飯にも合うわね〜」


 ゼノンはエールを飲みながら頷く。


「うん。美味い」


 しばらく料理を楽しんでいると、フィルが口を開いた。


「どの料理も美味しいんですけど〜、そろそろカレー食べたいです〜」


「何だ? そのカレーとは?」


 ゼノンが尋ねる。


「スパイスが効いてて、凄く美味しいのよ〜」


 ツバキが答える。


「悠真さん、明日はカレーがいいです〜」


「ごめん。カレーの素を切らしててさ〜。買ってくるの忘れてたんだ」


「え〜! おつまみとかは準備がいいのに〜?」


「おい」


 悠真は思わずツッコミを入れる。


「でも、リシェルと王都で買い物をしている時に、カレーの材料になるスパイスが売ってて、一度作ったことがあるんだよ」


「ホントですか〜?」


「ああ。その時に聞いたんだけど、そのスパイスは獣人の国から仕入れてきたものらしくてさ」


「獣人の国といえば隣の国じゃないか!?」


 ゼノンの言葉に、みんなが顔を見合わせる。


「なら、次は獣人の国へ行ってみましょう」


 ツバキの言葉に、フィルも頷く。


「そうですね。獣人の国には、風の神殿もありますから〜」


「スパイスも手に入るかもしれないしね」


「カレーです〜!」


 フィルが嬉しそうに声を上げる。


「目的は風の神殿だからな?」


「分かってますよ〜」


 悠真は笑いながら頷いた。


「よし。次は獣人の国へ行ってみよう!」


「はいです〜」


「ええ」


「おう」


 次の目的地は――獣人の国。


 風の神殿。


 そして、カレーのスパイス。


 新たな目的地へ向けて、悠真たちは再び旅立つことになった。

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