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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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大事な剣

 朝。


 悠真が目を覚ますと、下から金属を打つ音が聞こえてきた。


 カンッ――。


 カンッ――。


 どうやらゼノンは、もう鍛冶場で作業を始めているようだ。


 身支度を済ませて下に降りていった。


 けれど、そこにはまだ誰もいなかった。


「まだ寝てるのかな?」


 悠真はキッチンを見渡す。


「よし、それなら朝ごはんを作ろう〜」


 まずはご飯を炊く。


 その間に卵を薄く焼き、スパムもこんがりと焼いていく。


 炊き上がったご飯を手に取り、食べやすい大きさに握る。


 その上に薄く焼いた卵をのせる。


「僕は、ここでマヨネーズをかけるのが好きなんだよな〜」


 卵の上にマヨネーズをかけ、焼いたスパムをのせる。


 最後に海苔でくるりと巻けば――。


「出来上がり〜。スパムおにぎりだ」


 出来上がったスパムおにぎりを見て、悠真は満足そうに頷く。


「これなら、作業をしてるゼノンも手軽に食べられるしな〜」


 まだ鍛冶場からは、音が聞こえてくる。


「さて、人数分作っちゃおう〜」


 悠真が次のおにぎりを作っていると、足音が聞こえてきた。


「おはようございます」


「おはよ〜です〜」


 起きてきたツバキとフィルだった。


 二人はキッチンへ入ってくると、テーブルの上に並んだスパムおにぎりに目を向ける。


「悠真さん、これは何ですか?」


「僕の好きな、手軽に食べられるスパムおにぎりです」


「え〜、美味しそうです〜」


 フィルがさっそく手を伸ばそうとする。


「先に顔を洗ってきましょう」


「は〜い」


 ツバキに促され、フィルは名残惜しそうにスパムおにぎりを見ながら離れていった。


 その間に、悠真はおしぼりを用意する。


「よし。ゼノンさんのところに持っていこう」


     ◇◇◇


 ガチャ。


「ゼノンさん、おはようございます」


「おう」


「朝ごはん作ってきましたけど。どうですか?」


 ゼノンは作業の手を止めずに答える。


「おう。悪いな〜。今いいところで抜けられないんだ」


「そう思って、片手で食べられるものを作ってきましたよ〜。どうぞ」


「お?」


 ゼノンはスパムおにぎりを受け取り、一口かじる。


「……美味いな〜。塩っけが効いててちょうどいいな〜」


「はい。残りも置いておくので、食べてください」


「ああ。悪いな」


 悠真は作業中のゼノンを見る。


「順調ですか?」


「あ〜。今、いい感じだ〜」


 ゼノンは作業中の剣へ目を向ける。


「逆鱗がやっと馴染んできやがった。お昼頃には出来上がりそうだな」


「そうですか」


 悠真は完成を楽しみにしながら、鍛冶場を後にした。


     ◇◇◇


 戻ると、フィルとツバキはすでに席についていた。


「悠真さん、お腹空きました〜」


「フィルはそればっかりだな〜」


「そうですね」


 ツバキも頷く。


「そんなことないですよ〜」


 フィルは少し思い出す。


「食べては魔導書を読んで、お昼寝して、食べては魔導書を読む……」


「…………確かに」


 フィルは一度認めてから、すぐに続ける。


「でも、魔導書を読んで勉強してますから〜」


「そうだね〜」


 悠真は笑いながら席についた。


「さて、食べよう」


「いただきます」


「いただきま〜す」


 三人でスパムおにぎりを食べ始める。


「うん。美味しいですね」


 ツバキはスパムおにぎりの中を見ながら、不思議そうに尋ねる。


「この間に塗ってある白いものは何ですか?」


「それは、マヨネーズです。何にでも合うんですよ〜」


「へ〜。今度は違う料理で、試してみたいですね〜」


 そんな会話をしている横で――。


 フィルはひたすらスパムおにぎりを食べていた。


     ◇◇◇


 朝ごはんを食べ終えると、それぞれいつものように過ごし始めた。


 悠真とツバキ、それに小型化した土の龍核兵は、掃除や洗濯をする。


 土の龍核兵もすっかり慣れた様子で、二人の後をついて回りながら手伝っていた。


 家事が一段落すると、悠真は外で剣の素振りを始める。


 フィルはというと、魔導書を開いて読んでは――。


 いつの間にか眠っている。


 しばらくすると目を覚まし、また魔導書を読む。


 そして、また眠る。


 そんなことを繰り返していた。


 ツバキはというと――。


 しばらくして、工房から何かを持って出てきた。


 悠真は素振りを止める。


「どうしたんですか? それは?」


「ええ。ゼノンから取りあげ……」


「……?」


「んん。ゼノンから借りてきた火の龍核よ」


 ツバキは何事もなかったように言い直した。


「ゼノンったら、なかなか渡さないんですもの。龍核は鍛冶では使えないって、私じゃないと扱えないのよって説明しても、なかなか納得してくれなくてね」


 ツバキは手にした火の龍核を見る。


「とりあえず、持ってきちゃった」


「はは……」


「ついでに、相性がよさそうだから炎鉱石も持ってきたわ」


 ツバキは火の龍核と炎鉱石を手にすると、錬成を始めた。


 炎鉱石がゆっくりと形を変えていく。


 形を変えた鉱石は龍核へ纏わりつき、少しずつ身体を作り上げていく。


 足りない部分は、周囲にある石などで補填されていった。


 やがて、一体の小さな龍核兵が姿を現す。


「なんか、トカゲさんみたいで可愛いです〜」


 いつの間にか起きていたフィルが、出来上がった龍核兵を覗き込んでいる。


「あら?」


 ツバキも首を傾げた。


「土の龍核兵みたいに人型にしたつもりなのに……不思議ね」


 生まれたばかりの火の龍核兵は、辺りをキョロキョロと見回す。


 そして――。


 突然、工房の中へ入っていった。


「ちょ、ちょっと〜」


 三人は慌てて後を追う。


 工房に入った途端、鍛冶場の方からゼノンの声が響いた。


「おい! 何だこれは? まとわりついて離れないぞ〜!」


 三人が鍛冶場へ入る。


 そこには、ゼノンに身体をすり寄せている火の龍核兵の姿があった。


「あらあら」


 ツバキがその様子を眺める。


「生まれたばかりだけど、ご主人が誰かすでに分かっているのね」


「なんとかならんのか〜?」


「可愛いじゃないですか〜」


 フィルは楽しそうに火の龍核兵を見ている。


 ゼノンはまとわりつく龍核兵を見下ろした。


「何だこれは?」


「火の龍核を錬成した、龍核兵よ。なぜその形になったのかは分からないけど……お似合いよ」


「…………」


 ゼノンはしばらく無言で火の龍核兵を見つめる。


 そして――。


「悠真。出来たぞ!」


「え?」


 突然話を変えられ、悠真は一瞬反応が遅れる。


「あ、ありがとうございます」


 ゼノンから剣を受け取る。


 悠真は、出来上がった剣をゆっくりと眺めた。


「少しですが、赤みがかった感じですね〜」


「おう。切れ味も性能もぐんと上がってるぞ」


「へ〜」


 悠真は剣を握ってみる。


「そこの丸太で試し切りしてもいいですか?」


「それもいいが、外の岩でもいいじゃないか?」


「そうですか?」


 ゼノンの言葉に促され、みんなで工房の外へ出る。


 悠真は外にある岩の前に立った。


 剣を構える。


「ふぅ……」


 一度、深く息を吐く。


 そして――。


 一太刀。


「……え?」


 岩が切れた。


 しかも、その断面は驚くほど綺麗だった。


 ゼノンは満足そうに頷いている。


 悠真は手にした剣と、切れた岩を交互に見る。


「ゼノンさん……これ、ちょっと危ないですよ〜」


「ガハハハ! ちゃんと扱えるように鍛えるんだな〜」


 ゼノンはそう言うと、工房へ戻っていった。


「すごかったですね〜」


「ええ。とても普通の人には扱えないわね〜」


「…………」


 悠真は手にした剣を見つめた。


     ◇◇◇


 その日の夜。


 みんなで夕飯を食べていると、ゼノンが一本の剣を悠真へ差し出した。


「ほれ」


「え?」


 悠真は剣を受け取る。


 それは、見覚えのある剣だった。


「これは?」


「お前が最初に持ってきた、折れた剣だ。《古代鍛錬》で鍛え直しといたぞ」


「ほんとですか!?」


「あ〜。あの、エンチャントだかなんだろうが、そんな簡単には折れたりしないぞ。普段はこっちを使うといい」


 ゼノンは、リシェルから預かった剣を鍛え直してくれていたのだ。


 悠真は、戻ってきた剣を見つめる。


「ありがとう。リシェルから預かった大事な剣なんだ」


「さっきはあんなこと言っといて、案外優しいところあるのね」


「ゼノンさん、さすがです〜」


「うるせぇ」


 ゼノンは照れくさそうにそっぽを向いた。


     ◇◇◇


 夕食を終えると、悠真は受け取った剣を大事に抱えながら部屋へ戻った。


 部屋で一人、鍛え直された剣を見つめる。


 初めてこの剣を受け取った時のことを、少しだけ思い出す。


「…………」


(リシェル……元気にしてるかな)


 そんなことを、少しだけ気にする悠真だった。

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