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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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二つの居場所

 目が覚めると、そこにはゼノンの工房が見えた。


 ついさっきまで現実世界にいたはずなのに、目の前にはもう見慣れた景色が広がっている。


 工房の前では、ツバキが洗濯物を干していた。


 その傍では、小型化した土の龍核兵が洗濯物を抱え、ツバキのお手伝いをしている。


 少し離れたところでは、フィルが魔導書を開いていた。


 いつもと変わらない光景だった。


「おーい。ただいま〜」


 悠真が声をかける。


 二人がこちらを振り向いた。


「おかえりなさ〜い」


「おかえりなさい」


 二人の声が返ってくる。


 ツバキは手にしていた洗濯物を干すと、悠真へ視線を向けた。


「そちらの世界はどうでした?」


「ん〜、こないだからもそうなんだけど……」


 悠真は少し考えてから続ける。


「なんか、不思議なことが起きてるんだ」


「そう。とりあえず、中に入りましょか」


「はい」


 ツバキが残りの洗濯物を片付ける。


 小さな土の龍核兵も、その後を追うようにせっせと動いていた。


 フィルも開いていた魔導書を閉じる。


 三人はそのまま家の中へ入っていった。


     ◇◇◇


 家の中へ入ると、鍛冶場から金属を打つ音が聞こえてきた。


 カンッ――。


 カンッ――。


 ゼノンはまだ鍛冶をしているようだ。


 三人は腰を落ち着けると、悠真は現実世界で起こり始めていることを二人に話した。


 歪んだ空気の裂け目のようなものが現れたり、本来いるはずのない魔物が現れたりしていることを――。


「そうなんですか〜?」


 フィルが驚いたように悠真を見る。


「不思議ね。何でそんなことが起き始めているのかしら?」


「僕にも、さっぱり分からなくて」


 しばらく考えていたフィルが口を開く。


「悠真さんの夢渡りと何か関係があるんですかね〜?」


「ん〜。どうなんだろう〜」


 悠真にも、その答えは分からない。


「でも、こっちの世界で強くなって、向こうでも魔物の討伐はできたからよかったけど……」


「そうね。悠真さんが居なかったらどうなっていたことやら」


 話している間も、鍛冶場からは金属を打つ音が響いている。


 カンッ――。


 カンッ――。


 やがて、その音が止まった。


 少しして――。


 ガチャ。


「何だ、悠真、帰ってたのか?」


 鍛冶場からゼノンが出てきた。


「帰ってたんなら、声をかけてくれりゃ〜いいじゃね〜か」


「はい。すみません。ゼノンさんも作業中だったので」


「そうか。それよりもコレ見てくれよ」


 ゼノンはどこか嬉しそうに、自分の斧を見せる。


「古代の知識と《古代鍛錬》で、武器に属性を付けることができるみたいでな。さっそく自分の斧とツバキの短剣に属性を付与してみたんだ」


 ゼノンは満足そうに斧を見る。


「いい出来だぞ〜。斧は振ると炎が出るんだ」


「へ〜」


「ツバキの短剣は土属性にしたから、悠真みたいに土を纏わせることができるぞ」


 ツバキも自分の短剣に目を向ける。


「悠真さんほどではありませんが……」


「へ〜。凄いですね〜」


 悠真が感心していると、ゼノンが手を差し出した。


「だから、ほれ、お前の剣も貸せ」


「え? は、はい」


 悠真は剣をゼノンに渡す。


 受け取ったゼノンは、待ってましたと言わんばかりに剣を見る。


「待ちくたびれたぞ。早く火の神龍の逆鱗を使って打ち直したくてな」


「え? 今からですか?」


「何だ? ダメか?」


「いや、そんなことないですけど……」


 悠真は鍛冶場の方を見る。


「すでに今日は鍛冶を終えたんじゃ?」


「俺は、すぐに打ちたいんだがな」


 ゼノンはまだやる気満々だった。


 そんなゼノンを見て、ツバキが口を挟む。


「ゼノン。もうすぐ夕飯だし、明日にしたら?」


「ん〜……」


 少し考えてから、ゼノンは剣を置く。


「そうだな! 今日は、もう温泉入ってくら〜」


「そうして下さい」


 ツバキは悠真へ顔を向ける。


「悠真さんも一緒に行ってきたらどうですか? 急に帰ってしまって、温泉入れてないですから」


「え? いいんですか?」


「はい、いってらっしゃい」


 そして、ツバキはフィルを見る。


「フィルは手伝ってくれるかしら?」


「はいです〜」


     ◇◇◇


 温泉から立ち上る湯気が、ゆっくりと流れていく。


 悠真は肩まで湯に浸かり、身体の力を抜いた。


「ふぅ〜……」


 思わず息が漏れる。


 向かいでは、ゼノンが気持ちよさそうにエールを飲んでいた。


「ふ〜、鍛冶の後のエールと温泉はしみるな〜」


「そうですね〜」


 ゼノンはもう一口エールを飲むと、傍に置いてあるつまみに手を伸ばした。


「それにこの、何だったか」


「チータラとさきいかですか?」


「そうそう」


 ゼノンはさきいかを口に放り込む。


「悠真はエールに合うもんをいつも用意してくれるな〜」


「そんなことないですよ。たまたまです」


「それに、この明太子ってやつはピリっとしてていいな〜」


 ゼノンが明太子にも手を伸ばした、その時だった。


「あー!」


 聞き慣れた声が響く。


「ツバキさん。もう、なんか食べてますよ〜。ずるいです〜」


 夕飯の支度を終えたフィルとツバキが温泉に入ってきた。


「そうね。悠真さんが用意してくれる、おつまみ? はどれも美味しいですからね〜」


 ツバキも自然につまみに手を伸ばす。


 それを見て、悠真は笑いながらエールを手に取った。


「じゃ〜、あらためまして」


 みんながそれぞれ杯を手にする。


「火の神殿の調査完了を祝して、カンパーイ!」


「かんぱーい!」


 杯を合わせる音が、温泉に響いた。


 フィルもさっそくつまみに手を伸ばそうとする。


「フィルは夕飯前ですから、ほどほどにしておきなさい」


「え〜、ツバキさんも食べてるじゃないですか〜」


「私は、いいんですよ」


「え〜、なっとくできませんよ〜」


 そんな二人のやり取りを見ながら、悠真は笑っていた。


(あ〜、いいな〜)


 温泉に浸かりながら、みんなでくだらない話をして笑う。


(帰ってきたって感じがしてしまうな〜)


 そう思ってから、悠真はふと首を傾げる。


(ん? どっちなんだ?……)


 現実世界にも、自分の帰る場所がある。


 そして今、ここでも同じように感じている。


 悠真は楽しそうに話している三人を見る。


(……まっ、いっか)

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