古代の知識
「よし。受け取るぞ」
ゼノンが答えた。
『承知した』
神龍の身体が、淡い光を放ち始める。
その光はゆっくりとゼノンへと集まり――。
「おお……」
やがて、ゼノンの身体へ吸い込まれるように消えていった。
そしてゼノンの手には、土の神龍の時と同じように二つのものが残されていた。
火の神龍の逆鱗。
そして、龍核。
『汝らの祠への出入りを許そう』
「ありがとうございます」
『我は少し眠る』
そう言い残すと、神龍はゆっくりと目を閉じた。
しばらくすると、静かな寝息が聞こえてくる。
「寝ちゃいましたね〜」
「ああ」
フィルがゼノンへ近づく。
「何を授かったんですか〜?」
「古代の鍛冶の知識と、《古代鍛錬》というものだ」
「古代鍛造?」
「ああ。それと、《古代鍛錬》に必要な《神炎》だ」
「神炎?」
ゼノンの手のひらに、淡い小さな炎が灯る。
「おお〜」
「《神炎》とは、鍛冶に必要な炎を生み出し、操れるものだ。この場で、この逆鱗と悠真の剣を打ち直すことも出来る」
「へ〜。凄いですね〜」
「ああ。まだまだ隠された力がありそうだがな」
ゼノンは自分の身体を確かめるように見下ろす。
「それと、火の神龍の加護が付いたぞ。魔力もだいぶ上がって、何でも出来そうだ」
「それは凄いです」
悠真も驚きながらゼノンを見る。
「さて、下に行ってみましょう」
ツバキが階段へ目を向ける。
「はい」
「行きましょ〜」
四人は祠のある十階層へと向かった。
階段を下りた先には、土の神殿と同じような光景が広がっていた。
部屋の中央には祠。
そして、その傍らには古文書が置かれている。
「あっ、ありました〜」
フィルが古文書へ近づき、中を調べる。
「やっぱり、腐食してあんまり読めませんね〜」
「こっちもか……」
悠真も横から覗き込む。
文字の大部分は消えかかり、まともに読むことが出来ない。
フィルが顔を上げる。
「悠真さんの《修復》で、なんとかなりませんか〜?」
「無理だよ〜。一年以内のものまでしか修復できないから」
「そうでした〜」
「まあ、試しにやってみるよ」
悠真は古文書へ触れる。
「《修復》」
古文書が淡い光に包まれる。
「おお〜」
やがて、光がゆっくりと収まっていった。
悠真は古文書を見つめる。
「やっぱり、ダメだね」
「待って下さい」
フィルが古文書へ顔を近づけた。
「わずかに読める部分があります」
「本当?」
「はい。えっと……」
フィルは一文字ずつ拾うように読み上げる。
「……七英雄……古代魔法……」
「七英雄?」
「それから……」
フィルが目を細める。
「……リクサーから霊薬へ……は……の素材が……」
しばらく古文書を調べる。
「……これくらいしか分かりません」
「リクサー?」
ツバキが反応する。
「エリクサーのことかしら?」
「エリクサー?」
「ええ。ってことは……霊薬を作るには、エリクサーが必要ってことかしら……」
ツバキは古文書を見つめる。
「それに、七英雄って……」
「何か分かったのか?」
ゼノンが尋ねる。
「ええ。私が追い求める霊薬には、エリクサーと何かが必要ってことね」
「何か?」
「そこまでは読めないわ」
ツバキは再び古文書へ目を落とす。
「でも……七英雄って何のことかしら?」
フィルが首を傾げる。
「土の神殿で見た古文書にあった古代種と封印……何か関係があるんでしょうか〜?」
「全ては繋がっているんでしょうか?」
悠真の言葉に、ツバキは少し考える。
「……断言は出来ないわね」
そして、静かに続ける。
「それに、私たち適合者の存在……」
「ま〜、また次の神殿へ行ってみれば、何か分かるかもしれませんね〜」
「そうね」
ツバキが頷いた。
「じゃ〜、戻るとするか」
ゼノンが火の神龍の逆鱗を見る。
「俺は早く戻って、古代の知識を使って悠真の剣とこの逆鱗で打ち直したいんだ」
「分かったわ。戻りましょ」
「賛成です〜」
四人は祠をあとにし、九階層へと上がった。
すると――。
「……ん?」
そこには、巨大な何かが立っていた。
「…………」
ツバキはその姿を見上げる。
「……ごめんなさい。そのサイズのままじゃ着いてこれなかったわね」
龍核兵は身体が大きすぎて階段を通ることが出来ず、その場に残されていた。
ツバキは龍核兵に触れる。
「《古代錬成》」
龍核兵の身体が縮んでいき、元の大きさへと戻った。
「さて、戻りましょ」
こうして悠真たちは、火の神殿をあとにした。




