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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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魔道具製作

「おい! 起きろ!」


 朝から響いた大声に、悠真は勢いよく目を覚ました。


「……え?」


 ぼんやりとした視界の先。


 そこには、昨日とまったく同じように仁王立ちするゼノンの姿があった。


「神殿行くぞ!」


「…………」


 悠真はしばらくゼノンを見つめる。


(……またか。)


 そこへ、眠そうな顔をしたフィルがやってきた。


「ゼノンさん……またですか〜?」


「あぁ? 何がだ?」


「昨日も朝から悠真さんを起こしてたじゃないですか〜」


「いいんだよ。こういうのは早い方が」


「ゼノン!」


 今度はツバキの声が飛んできた。


「あ?」


「朝食が先!」


「…………」


 ゼノンが黙った。


 悠真とフィルは顔を見合わせる。


 昨日とほとんど同じ光景だった。


 ◆


 結局。


 四人はいつものように食卓を囲んでいた。


「昨日、試し斬りもした。次は神殿だろ? 早く行こうぜ」


 朝食を食べながらも、ゼノンは落ち着かない様子だった。


「神殿に行くのは分かったから」


 ツバキが呆れたようにゼノンを見る。


「まずは準備が必要でしょ?」


「準備?」


「火の神殿なんでしょ? たぶん中は相当暑いわよ」


「まあな」


「まあな、じゃないわよ」


 ツバキがため息をつく。


「悠真さんは平気そうだったけど、私とフィルは昨日の火山でも暑かったのよ?」


「そうですよ〜。あれより暑いところを歩くなんて嫌ですよ〜」


「こんなん普通だろ」


「ゼノンさんの普通と一緒にしないでください〜」


 フィルが頬を膨らませる。


「だから、火耐性を持ったマント型の魔道具を作りましょ」


「マント型の魔道具?」


 悠真が尋ねる。


「ええ。火属性の素材を組み合わせれば作れると思うわ」


「何が必要なんですか?」


 ツバキは少し考える。


「まず、火の魔石」


「それならあるぞ」


 ゼノンが即答する。


「工房にいくつか置いてある」


「じゃあ、それは大丈夫ね。あとは火属性の魔物の皮」


「フレアバイソンならどうだ?」


「あら、いいじゃない。皮も上質だし、身体も大きいから……二体あれば四人分作れると思うわ」


「もう一つ必要だな」


 ゼノンが続ける。


「炎鉱石だ」


「炎鉱石?」


「火の魔石とマントを繋ぐのに使える」


 悠真が頷く。


「どこで採れるんですか?」


「こないだの坑道だ」


「あそこですか」


「おう」


 必要な素材は決まった。


 火の魔石。


 フレアバイソン二体分の皮。


 そして炎鉱石。


「なら、まずはギルドね」


 ツバキが言う。


「フレアバイソンの居場所を聞きに行きましょ」


「よし! やっと行けるな!」


「だからゼノン」


「あ?」


「朝ご飯、残ってるわよ」


「…………」


 またゼノンが黙った。


 ◆


「フレアバイソンですか?」


 冒険者ギルド。


 受付嬢は依頼書を確認すると、一枚を取り出した。


「ちょうど討伐依頼が出ていますよ。山の麓で二体確認されています」


「二体?」


 ツバキがフィルを見る。


「ちょうどいいわね」


「ですね〜」


「この依頼、受けます」


 悠真が答える。


「はい。では、フレアバイソン二体の討伐ですね」


 受付嬢が手続きを始める。


 その時。


 悠真の前に文字が浮かび上がった。


 ――――――――――


【クエスト発生】


マントの素材を手に入れろ。


報酬:????


 ――――――――――


(マントの素材か)


 表示を確認していると、ツバキが声をかける。


「二手に分かれた方が早そうね」


「そうですね」


「私とフィルでフレアバイソンを倒してくるわ。悠真さんはゼノンと炎鉱石をお願い」


「分かりました」


「は〜い」


「おう」


 こうして四人は二手に分かれ、それぞれの素材を集めることになった。


 ◆


「いましたよ〜」


 山の麓。


 フィルの指差す先に、二体の巨大な魔物がいた。


 牛を思わせる巨体。


 赤褐色の皮膚。


 太く湾曲した角。


 身体の周囲では陽炎が揺らめき、地面の草が熱で乾いている。


 フレアバイソン。


「大きいですね〜」


「これなら皮も十分取れそうね」


 一体が二人の存在に気づいた。


「ブモォォォォッ!」


 地面を蹴り、こちらへ突進してくる。


「私が止めるわ」


 ツバキが地面へ手をついた。


「《錬成》」


 地面が隆起する。


 土が形を変え、巨大な二本の腕となってフレアバイソンへ伸びた。


 左右から巨体を挟み込む。


「ブモォォォォッ!」


 フレアバイソンが暴れる。


「フィル!」


「はい!」


 フィルが魔力を集中させる。


 だが――。


 ジュウウウウ……。


「え?」


 土の腕から煙が上がり始めた。


 フレアバイソンの身体から放たれる熱で、表面が焼かれている。


 ピシッ。


 土の腕に亀裂が走った。


「ツバキさん!」


「フィル! 早く!」


「はい!」


 フィルは杖を構え、魔力を集中させる。


「《ウィンドカッター》!」


 鋭い風の刃が飛ぶ。


 ザンッ――!


 フレアバイソンの首が落ちた。


 巨体が地面へ倒れる。


 それとほぼ同時に、拘束していた土の腕も崩れ落ちた。


「危なかったですね〜」


「ええ……普通の土じゃ、この熱には耐えられないみたいね」


 残った一体が、倒れた仲間を見て唸る。


「ブモォォォォッ!」


 ツバキは崩れた土を見つめる。


「なら――」


 再び地面へ手をついた。


「次は――《物質の昇華》」


 地面が淡い光に包まれる。


 土そのものの性質が変化していく。


 より硬く。


 より強く。


 そして、熱に耐えられる素材へ。


 そこから再び二本の巨大な腕が作り出された。


「《錬成》」


 二本の腕が伸び、二体目のフレアバイソンを捕らえる。


「ブモォォォッ!」


 熱気が周囲へ広がった。


 ジュウウウ――。


 しかし。


 今度は崩れない。


「すごいです〜! さっきと全然違います!」


「素材そのものを一段階上に引き上げたからね」


 ツバキがフィルを見る。


「今よ!」


「はい!」


「《ウィンドカッター》!」


 ザンッ――!


 二体目の首が落ちた。


「やりました〜!」


「これで二体分ね」


 ツバキは倒れた二体のフレアバイソンを見る。


 四人分のマントに必要な皮。


 まず一つ目の素材を確保した。


 ◆


 一方。


 悠真とゼノンは、以前訪れた坑道を進んでいた。


「炎鉱石は、この奥ですか?」


「ああ。前に魔鉱石を掘ったところより、もう少し奥だ」


「分かりました」


 悠真は《気配察知》を使いながら進む。


 しばらくすると――。


 カサッ。


「……?」


 足を止める。


 カサカサカサッ。


「ゼノンさん」


「ああ。いるな」


 岩陰から何かが姿を現した。


 赤黒い身体。


 八本の長い脚。


 脚の先には炎のような赤い毛が生えている。


 ブレイズスパイダー。


「…………」


 悠真の顔が引きつった。


「どうした?」


「…………」


 悠真は静かに一歩横へ移動する。


 そして。


 ゼノンの後ろへ隠れた。


「……おい」


「お願いします」


「はぁ?」


「蜘蛛は無理です」


「お前、レッサードラゴン倒しただろうが」


「ドラゴンと蜘蛛は別です」


「何が違うんだよ!」


「全部です」


「意味分かんねぇよ!」


 ブレイズスパイダーが脚を大きく広げる。


 そして一気に二人へ迫った。


「ったく!」


 ゼノンが背負っていた斧を抜く。


 一歩踏み込む。


「ふんっ!」


 ズバッ――!


 振り抜かれた斧がブレイズスパイダーを斬り裂いた。


 巨体が地面へ落ちる。


「ほら。終わったぞ」


「ありがとうございます」


「ったく……」


 ゼノンが斧を担ぎ直す。


 そして、倒したブレイズスパイダーを見下ろした。


「ん?」


「どうしました?」


「……こいつの糸、使えるな」


「糸?」


「ああ」


 ゼノンがニヤッと笑う。


「ブレイズスパイダーの糸は炎耐性がある。ちょうど良かったな。マントを縫うのに使えるぞ」


「…………」


 悠真が倒れた蜘蛛を見る。


 そして、すぐに目を逸らした。


「回収……お願いします」


「あぁ!?」


 ゼノンの声が坑道に響いた。


 ◆


 その後。


 悠真とゼノンはさらに坑道の奥へ進んだ。


 悠真は《鑑定》を使いながら岩壁を確認していく。


 そして。


「ゼノンさん。ここです」


「おう」


 ゼノンが岩壁を見る。


「間違いねぇ。炎鉱石だ」


 二人は採掘を始めた。


 カンッ。


 カンッ。


 坑道に音が響く。


 しばらくして。


「これだけあれば十分だ」


「じゃあ、戻りましょう」


「おう」


 炎鉱石。


 そして予定にはなかったブレイズスパイダーの糸。


 二つの素材を手に入れ、悠真とゼノンは坑道を後にした。


 ◆


 夕方。


 四人は冒険者ギルドで合流した。


「二体とも倒してきましたよ〜」


 フィルが嬉しそうに報告する。


「こっちも炎鉱石は採れたぞ」


 ゼノンが答える。


「それと、ちょうどいい素材も手に入った」


「ちょうどいい素材?」


「ブレイズスパイダーの糸だ。炎に強ぇからマントに使える」


「あら、それはいいわね」


「…………」


 悠真だけは黙っていた。


「悠真さん?」


「なんでもないです」


 受付嬢へフレアバイソン二体の討伐を報告する。


 確認が終わり、依頼達成の手続きが行われた。


 その時だった。


 悠真の前に文字が浮かぶ。


 ――――――――――


【クエスト達成】


マントの素材を手に入れろ。


レベルアップ


Lv.49 → Lv.50


報酬:《裁縫》


 ――――――――――


(裁縫……?)


 悠真は新しく得たスキルを確認する。


 だが、何も言わず三人とともにギルドを後にした。


 ◆


 工房へ戻ると、作業台の上に集めた素材が並べられた。


 フレアバイソン二体分の皮。


 炎鉱石。


 ブレイズスパイダーの糸。


 そして、ゼノンが保管していた火の魔石。


「じゃあ、始めましょ」


 まずツバキがフレアバイソンの皮へ手を置いた。


「《物質の昇華》」


 皮が淡い光に包まれる。


 上質だった皮が、さらに強く、しなやかな素材へと変化していく。


 火への耐性も、それまで以上に高まっていた。


「これでいいわ」


 続いて、四人それぞれの体格に合わせて皮を《錬成》していく。


 やがて、作業台には四枚のマントが並んだ。


「次は俺だ」


 ゼノンが炎鉱石を炉へ入れる。


 熱し。


 叩き。


 形を整える。


 カンッ――!


 カンッ――!


 工房に槌の音が響き続けた。


 加工された炎鉱石に、それぞれ火の魔石を組み込んでいく。


 しばらくして。


「よし」


 ゼノンが四つの装具を作業台へ置いた。


「これをマントに取り付けりゃ完成だ」


 悠真は作業台を見る。


 四枚のマント。


 四つの装具。


 そして――ブレイズスパイダーの糸。


「じゃあ、俺がやります」


「できるのか?」


「はい」


 悠真は針と糸を手に取った。


 ――《裁縫》。


 針を通す。


 炎耐性を持つブレイズスパイダーの糸で、魔道具の装具をマントへ丁寧に縫い付けていく。


 一着。


 二着。


 三着。


 そして――四着目。


「できました」


 作業台の上に、四着のマントが並んだ。


「おお。いいじゃねぇか」


「これなら火の神殿でも大丈夫そうね」


「明日は暑くないんですね〜!」


 フィルが嬉しそうにマントを手に取る。


 悠真も完成した自分のマントを見る。


 フレアバイソンの皮。


 炎鉱石。


 火の魔石。


 そして、ブレイズスパイダーの糸。


 集めた素材と、それぞれの技術を合わせて作った火耐性のマント。


 これで――。


 火の神殿へ向かう準備は整った。


 明日。


 四人はいよいよ、火の神殿へ向かう。

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