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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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ギルドランク

「おい! 起きろ!」


 朝から響いた大声に、悠真は勢いよく目を覚ました。


「……え?」


 ぼんやりとした視界の先には、仁王立ちするゼノンの姿がある。


「ギルドに行くぞ!」


「……ギルド?」


「まず、お前のその詐欺みてぇなランクを上げに行く。ドラゴンの素材持って出発するぞ!」


 まだ頭の回っていない悠真をよそに、ゼノンはすでに出発する気満々だった。


 そこへ、眠そうな顔をしたフィルがやってくる。


「ゼノンさん……まだ早くないですか〜?」


「何言ってんだ。こういうのは早い方がいいんだよ」


 続いてツバキも姿を見せる。


「まだギルドも始まってないから、朝ご飯にしましょ」


「…………」


 ゼノンが黙った。


 結局。


 四人はいつも通り朝食を食べ、それぞれ支度を済ませてから街へ向かうことになった。


 ◆


 冒険者ギルドの扉を開ける。


 その瞬間。


 中にいた冒険者たちの視線が一斉にこちらへ向いた。


「おい……落ちこぼれのゼノンが来たぞ」


「珍しいな」


 聞こえるか聞こえないか程度の小声。


 だが、ゼノンの耳にはしっかり届いているはずだった。


「ふん」


 ゼノンは鼻を鳴らしただけで、そのままカウンターへ向かう。


「おい。ギルド長を出せ」


「えっ?」


 受付嬢が困ったような表情を浮かべる。


「あの……ギルド長に、どのようなご用件でしょうか?」


「話があんだよ」


「ですが――」


「何だ、朝から騒がしいぞ」


 奥から一人の男が姿を現した。


 身なりを整えた、落ち着いた雰囲気の男だった。


 ゼノンを見ると、少し意外そうに眉を上げる。


「何だ、ゼノン。珍しいな〜。何の用だ?」


「おう。こいつのギルドランクを上げてくれ」


 そう言って、ゼノンが悠真を指差した。


「……急な話だな。とりあえずギルドカードを見せてくれ」


「はい」


 悠真はギルドカードを差し出す。


 ギルド長はしばらくカードを確認していたが、やがて首を横に振った。


「ん〜。依頼数が足りてないから急には無理だな。何か特別なことがない限りな」


「だから、お前を呼んだんだよ」


「お前の頼みだからって、限界がある」


「分かった。見せりゃ〜いいんだろ」


 ゼノンが悠真を見る。


「悠真。アレ出せ」


「はい」


 悠真は《アイテムBOX》を開く。


 そして――。


 鱗。


 牙。


 爪。


 骨。


 次々とカウンターへ並べていく。


「な、なんだ……?」


「おい、あれ……」


 周囲がざわつき始めた。


 ギルド長も並べられた素材を一目見るなり、目を見開く。


「これは……レッサードラゴンの素材じゃないか。どうしたんだ?」


「こいつが昨日討伐したんだよ」


「……ほんとか?」


 ギルド長が悠真を見る。


「はい」


「それが本当なら、実力はBランクで間違いないぞ!?」


 再びギルド内がざわめいた。


「ただな……上げられてもCランクまでだ」


「あぁ? なんでだ」


「お前も知ってるだろ〜。Bランクに上がるには昇格試験があるだろ」


「それを、お前の力でなんとかするのが仕事だろう〜」


「いや。さすがにそれは無理だ」


 ギルド長は苦笑しながら首を横に振る。


「昇格試験ならいつでも受けられる。それを受けてくれれば、あとはこっちでやる」


「…………」


 ゼノンは少し考える。


 そして、悠真の腰にある新しい剣へ視線を落とした。


「分かった。ま〜、コイツのデビュー戦にはちょうどいいか〜」


「?」


 悠真もゼノンの視線を追い、自分の剣を見る。


 ギルド長が何枚かの依頼書を取り出した。


「いくつか候補があるが……」


 ゼノンはその中から一枚を選び、悠真たちへ見せる。


 討伐対象――。


 Bランク魔物。


 フレイムタイガー。


「悠真もそれでいいな?」


「はい。むしろ、だいぶ良くしてもらってる気がします」


 悠真が頷く。


「ツバキたちもいいか?」


「はい。大丈夫です」


「大丈夫ですよ〜」


 ツバキとフィルも頷いた。


「それじゃ〜、これにする」


 その瞬間。


 悠真の前に、見慣れた文字が浮かび上がった。


 ――――――――――


【クエスト発生】


フレイムタイガーを剣術のみで討伐せよ。


報酬:????


 ――――――――――


(ん? 剣術のみ……ってことは、属性付与は禁止ってことか?)


 悠真が表示を見つめている間に、受付嬢が依頼書を受け取った。


「はい。受け取りました。昇格試験のフレイムタイガー討伐ですね」


「お願いします」


 こうして四人はギルドを後にし、フレイムタイガーが生息する火山の中腹へと向かった。


 ◆


「暑いですね〜」


 額の汗を拭いながら、フィルが呟く。


「そうね〜」


 ツバキも手で顔を扇いでいた。


「こんなん普通だ」


 ゼノンだけは平然としている。


 そして――。


「…………」


 悠真も涼しい顔で歩いていた。


 《属性耐性》が発動しているため、火山の熱気もほとんど気にならない。


「悠真さん、なんでそんなに平気なんですか〜?」


「まあ……いろいろと」


 そんな会話をしながら進んでいると。


 ゼノンが足を止めた。


「いたぞ」


 少し離れた岩場。


 巨大な虎の姿があった。


 赤黒い毛並み。


 身体の周囲には陽炎が揺らめき、その口元からは時折炎が漏れている。


 フレイムタイガーは、仕留めた獲物を食べている最中だった。


「とりあえず、ツバキたちは見ててくれ」


「分かりました」


「は〜い」


 ゼノンが悠真を見る。


「悠真。いけるな?」


「はい」


 悠真は一人、前へ出た。


 腰から新しい剣を抜く。


 そして構えた。


 フレイムタイガーが食事を止める。


 ゆっくりと顔を上げ、悠真を見た。


「グルルルル……」


 低い唸り声。


 次の瞬間。


 地面を蹴り――一気に飛び込んできた。


「っ!」


 悠真は《瞬歩》で横へかわす。


 フレイムタイガーの巨体が、先ほどまで悠真が立っていた場所を通り抜けた。


 悠真は追わない。


 一度距離を取り、再び剣を構えた。


(今までなら……ここで追いかけてたな)


 だが、今回は違う。


 焦らない。


 まず見る。


 相手がどう動くのか。


 どこを見ているのか。


 どう仕掛けてくるのか。


 フレイムタイガーもすぐには襲ってこなかった。


「グルル……」


 悠真を見ながら、ゆっくりと歩く。


 先ほど確実に捉えたと思った獲物が、一瞬で目の前から消えた。


 警戒するように悠真を見つめながら、少しずつ間合いを詰めてくる。


 悠真も動かない。


 ただ、相手を見る。


 互いの距離が少しずつ縮まっていく。


 その時だった。


 ――ドンッ!


 山頂付近で小さな噴火が起こった。


 岩肌が震える。


(くる!)


 悠真が剣を構えた、その瞬間。


「ガァァァッ!!」


 フレイムタイガーが地面を蹴った。


 二度目の飛びつき。


 巨大な爪が悠真へ迫る。


 ――《見切り》。


 ギリギリまで引きつける。


 そして。


 紙一重。


 フレイムタイガーの爪が悠真の身体をかすめる直前、悠真は横へ身体をずらした。


 すれ違う巨体。


 その首が目の前に入る。


 悠真は剣を振った。


 ザンッ――!


「…………」


 静寂。


 フレイムタイガーの巨体が、そのまま地面へ倒れた。


 悠真は振り抜いた剣を見る。


 手に残る感触が、あまりにも軽かった。


「……ゼノンさん」


「何ですか、この斬れ味は〜」


 ゼノンは何も答えない。


 ただ――満足そうに一度、頷いた。


「悠真さん、すごいです〜!」


「悠真さん。やりましたね」


 フィルとツバキが駆け寄ってくる。


 悠真はまだ剣を見つめていた。


「…………」


 そこへゼノンが一言。


「よし。戻るぞ〜」


「は〜い」


「えっ?」


 悠真は余韻にひたる間もなく、ギルドへ戻るのであった。


 そして帰路。


 悠真の前に再び文字が浮かび上がる。


 ――――――――――


【クエスト達成】


フレイムタイガーを剣術のみで討伐せよ。


レベルアップ


Lv.44 → Lv.49


報酬 : 《修復・復元》


 ――――――――――


(修復・復元?)


 悠真が意識を向ける。


 破損した物を修復し、元の状態へ復元する。


 ただし、破損してから一年以上が経過した物には使用できない。


 悠真は新しく得たスキルを確認しながら、三人の後を追った。


 ◆


 冒険者ギルドへ戻る。


 扉を開けた瞬間、再び視線が集まった。


「もう戻ってきたぞ」


「どうせ失敗して戻ってきたんだろ〜」


「レッサードラゴンの素材だって、どっかから持ってきたに決まってるさ〜」


 小声で聞こえてくる陰口。


 ゼノンが小さく息を吐いた。


「わり〜な。俺のせいで、お前たちに嫌な思いさせちまってよ〜」


「何言ってるんですか〜?」


 フィルが頬を膨らませる。


「昼間から何もしないでお酒飲んでる人たちに言われても、何も感じませんよ〜だ」


「そうよ。ほっときましょ」


 ツバキも気にした様子はない。


「はい。それに証拠もありますから」


 悠真も頷いた。


「……そうか?」


 ゼノンは少し照れくさそうに顔をそらした。


 四人がカウンターへ向かう。


「どうかされましたか?」


 受付嬢が不思議そうに尋ねる。


「はい。フレイムタイガー、討伐してきました〜」


「え〜!? 早すぎますよ〜!? Bランクの魔物ですよ〜?」


 受付嬢の声がギルド中に響く。


「ゼノン。終わったか?」


 その声に振り返ると、奥からギルド長が出てきていた。


「おう」


「そうか。なら、ギルドカードを預かる」


 悠真がカードを差し出す。


 ゼノンが首を傾げた。


「なんだ。確認しないのか〜?」


「レッサードラゴンの素材を見れば分かる」


「そうかよ」


「素材の買取はするから、向こうに預けてくれ」


「おう。悠真。タイガーの素材は向こうに置いてくれ」


「はい。分かりました」


 悠真は指定された場所へ向かう。


 そして《アイテムBOX》から、フレイムタイガーの死骸を取り出した。


 ドサッ――。


 再び周囲がざわついた。


「お、おい……」


「本当に倒してるぞ……」


「それより……首を見ろ」


「なんだよ、あの断面……」


 フレイムタイガーの首。


 その切断面は、異様なほど綺麗だった。


 ギルド長も一度だけそこへ目を向ける。


「フッ」


 小さく笑うと受付嬢を見る。


「手続きを頼む」


「は、はい!」


 それだけ告げると、ギルド長は奥の部屋へ戻っていった。


 ◆


「ふ〜……今日も一仕事の後の温泉とエールは最高だな〜」


 湯気の立ち込める温泉。


 ゼノンは気持ちよさそうに湯へ浸かりながら、エールを飲む。


 ポリポリ。


「私たちはあまり何もしていませんでしたけどね〜」


 フィルも笑う。


 ポリポリ。


「え〜。でも、少しスカッとしたわ〜」


 ツバキも微笑む。


 ポリポリ。


「…………」


 悠真は三人を見た。


 ポリポリ。


 ポリポリ。


 ポリポリ。


「いくら、えびせんをスキルで復元したからって、食べすぎじゃないですか!?」


 温泉に、悠真の声が響き渡った。

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