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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第2章「王都編」

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変わらない日常、変わり始めた自分

眩しい朝日がカーテンの隙間から差し込む。


悠真はゆっくりと目を開けた。


「……朝か。」


天井を見つめたまま、大きく息を吐く。


夢世界では七日近く過ごした。


オーガとの死闘。


リシェルとの共闘。


そして、最後に見せたあの笑顔。


「何も言えずに帰ってきちゃったな……。」


胸の奥が少しだけ締め付けられる。


夢なのに、別れは本物だった。



ベッドから起き上がると、身体は少し重かった。


肩にはまだ痛みが残っているような気がする。


鏡の前でシャツを脱ぐ。


「……ない。」


夢世界で受けた傷は消えていた。


それでも、吹き飛ばされた衝撃だけは身体が覚えている。


(痛みは残るんだな。)


机の上のメモ帳を開く。


悠真は夢世界で分かったことを書き足していく。



・現実1時間=夢世界1日


・夢世界で覚えたスキルは現実でも使える


・《見切り》習得


・ボス級の魔物は一人では勝てない


・リシェルは騎士団所属


・王都へ行く約束をした



「次に会ったら、ちゃんと約束を守らないとな。」


そう呟いた瞬間、スマートフォンが震えた。


篠宮陽菜


その名前を見て、悠真は思わず笑う。


「朝から珍しいな。」


メッセージを開く。


『今日休みでしょ? 久しぶりに遊ぼうよ!』


さらに続けて、


『断ったら家まで迎えに行く(笑)』


「相変わらずだな。」


悠真は苦笑しながら返信する。


『昼なら空いてる。駅前で。』


すぐに返事が返ってきた。


『やった! 遅刻禁止だからね!』



昼過ぎ。


駅前の噴水広場。


「悠真ー!」


元気な声とともに、小柄な少女が手を振る。


篠宮陽菜。


幼稚園からの幼なじみ。


肩まで伸びた栗色の髪を揺らしながら、満面の笑みで駆け寄ってくる。


「久しぶり!」


「この前も会っただろ。」


「二週間前は久しぶりなの!」


「そんなもんか?」


「そんなもん!」


陽菜は昔から変わらない。


明るくて、おしゃべりで、人懐っこい。


悠真が落ち込んでいるときは、いつも隣にいてくれた。


「今日は付き合ってもらうからね!」


「はいはい。」



ショッピングモールでは、洋服を見て回り、雑貨店に立ち寄り、ゲームセンターでクレーンゲームに挑戦する。


「ほら! あのぬいぐるみ可愛くない?」


「陽菜、家に何個あるんだよ。」


「数えたことない!」


「増やすなよ……。」


そんな何気ない会話に、悠真は自然と笑っていた。


夢世界では命懸けの日々。


現実ではこんな穏やかな時間。


(どっちも、本当の俺の人生なんだ。)


ふと、そんなことを思う。



帰り道。


夕暮れの交差点。


信号が青に変わり、人々が横断歩道を渡り始める。


その時だった。


「わっ!」


幼い男の子が転ぶ。


横断歩道を走ってきた男の子が転んでしまったのだ。


その先には、信号を無視して走ってくるワゴン車。


「危ない!」


陽菜の叫びが響く。


考えるより先に、悠真の身体が動いていた。


(間に合う!)


男の子までの距離。


車の速度。


飛び込む角度。


夢世界で身につけた《見切り》が、一瞬だけ最適な軌道を頭に描き出す。


悠真は地面を蹴った。


「うわっ!」


男の子を抱きかかえ、そのまま歩道へ転がる。


次の瞬間。


キィィィィィッ!!


急ブレーキの音が響き、ワゴン車は目の前で停止した。


周囲が騒然となる。


「大丈夫!?」


「子どもを助けたぞ!」


母親が涙を流しながら何度も頭を下げる。


「本当に……ありがとうございました!」


「いえ、無事でよかったです。」


悠真は照れくさそうに笑った。


その横で、陽菜だけが黙って悠真を見つめていた。


(今の動き……。)


(あんなに速かった……?)


子どもの頃からずっと一緒にいた。


だからこそ分かる。


今の悠真は、昔の悠真じゃない。



帰り道。


夕焼けに染まる歩道を二人で歩く。


「ねぇ、悠真。」


「ん?」


「最近、何かあった?」


悠真の足が一瞬だけ止まる。


「どうして?」


「なんとなく。」


陽菜は笑っていた。


でも、その瞳はどこか真剣だった。


「前より強くなった気がする。」


「……気のせいだよ。」


「そっか。」


それ以上、陽菜は聞かなかった。


でも心の中では、小さな違和感が芽生えていた。



その夜。


ベッドに横になった悠真は、スマートフォンの時計を見る。


眠る時間が近づいている。


「リシェル、待ってるかな。」


目を閉じる。


ゆっくりと意識が沈んでいく。


王都へ向かう約束を果たすために。


そして、新しい冒険が始まる。

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