↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第2章「王都編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/114

変わらない日常、変わり始めた自分

眩しい朝日がカーテンの隙間から差し込む。


悠真はゆっくりと目を開けた。


「……朝か。」


天井を見つめたまま、大きく息を吐く。


夢世界では七日近く過ごした。


オーガとの死闘。


リシェルとの共闘。


そして、最後に見せたあの笑顔。


「何も言えずに帰ってきちゃったな……。」


胸の奥が少しだけ締め付けられる。


夢なのに、別れは本物だった。


⸻


ベッドから起き上がると、身体は少し重かった。


肩にはまだ痛みが残っているような気がする。


鏡の前でシャツを脱ぐ。


「……ない。」


夢世界で受けた傷は消えていた。


それでも、吹き飛ばされた衝撃だけは身体が覚えている。


(痛みは残るんだな。)


机の上のメモ帳を開く。


悠真は夢世界で分かったことを書き足していく。


⸻


・現実1時間=夢世界1日


・夢世界で覚えたスキルは現実でも使える


・《見切り》習得


・ボス級の魔物は一人では勝てない


・リシェルは騎士団所属


・王都へ行く約束をした


⸻


「次に会ったら、ちゃんと約束を守らないとな。」


そう呟いた瞬間、スマートフォンが震えた。


篠宮陽菜


その名前を見て、悠真は思わず笑う。


「朝から珍しいな。」


メッセージを開く。


『今日休みでしょ? 久しぶりに遊ぼうよ!』


さらに続けて、


『断ったら家まで迎えに行く(笑)』


「相変わらずだな。」


悠真は苦笑しながら返信する。


『昼なら空いてる。駅前で。』


すぐに返事が返ってきた。


『やった! 遅刻禁止だからね!』


⸻


昼過ぎ。


駅前の噴水広場。


「悠真ー!」


元気な声とともに、小柄な少女が手を振る。


篠宮陽菜。


幼稚園からの幼なじみ。


肩まで伸びた栗色の髪を揺らしながら、満面の笑みで駆け寄ってくる。


「久しぶり!」


「この前も会っただろ。」


「二週間前は久しぶりなの!」


「そんなもんか?」


「そんなもん!」


陽菜は昔から変わらない。


明るくて、おしゃべりで、人懐っこい。


悠真が落ち込んでいるときは、いつも隣にいてくれた。


「今日は付き合ってもらうからね!」


「はいはい。」


⸻


ショッピングモールでは、洋服を見て回り、雑貨店に立ち寄り、ゲームセンターでクレーンゲームに挑戦する。


「ほら! あのぬいぐるみ可愛くない?」


「陽菜、家に何個あるんだよ。」


「数えたことない!」


「増やすなよ……。」


そんな何気ない会話に、悠真は自然と笑っていた。


夢世界では命懸けの日々。


現実ではこんな穏やかな時間。


(どっちも、本当の俺の人生なんだ。)


ふと、そんなことを思う。


⸻


帰り道。


夕暮れの交差点。


信号が青に変わり、人々が横断歩道を渡り始める。


その時だった。


「わっ!」


幼い男の子が転ぶ。


横断歩道を走ってきた男の子が転んでしまったのだ。


その先には、信号を無視して走ってくるワゴン車。


「危ない!」


陽菜の叫びが響く。


考えるより先に、悠真の身体が動いていた。


(間に合う!)


男の子までの距離。


車の速度。


飛び込む角度。


夢世界で身につけた《見切り》が、一瞬だけ最適な軌道を頭に描き出す。


悠真は地面を蹴った。


「うわっ!」


男の子を抱きかかえ、そのまま歩道へ転がる。


次の瞬間。


キィィィィィッ!!


急ブレーキの音が響き、ワゴン車は目の前で停止した。


周囲が騒然となる。


「大丈夫!?」


「子どもを助けたぞ!」


母親が涙を流しながら何度も頭を下げる。


「本当に……ありがとうございました!」


「いえ、無事でよかったです。」


悠真は照れくさそうに笑った。


その横で、陽菜だけが黙って悠真を見つめていた。


(今の動き……。)


(あんなに速かった……?)


子どもの頃からずっと一緒にいた。


だからこそ分かる。


今の悠真は、昔の悠真じゃない。


⸻


帰り道。


夕焼けに染まる歩道を二人で歩く。


「ねぇ、悠真。」


「ん?」


「最近、何かあった?」


悠真の足が一瞬だけ止まる。


「どうして?」


「なんとなく。」


陽菜は笑っていた。


でも、その瞳はどこか真剣だった。


「前より強くなった気がする。」


「……気のせいだよ。」


「そっか。」


それ以上、陽菜は聞かなかった。


でも心の中では、小さな違和感が芽生えていた。


⸻


その夜。


ベッドに横になった悠真は、スマートフォンの時計を見る。


眠る時間が近づいている。


「リシェル、待ってるかな。」


目を閉じる。


ゆっくりと意識が沈んでいく。


王都へ向かう約束を果たすために。


そして、新しい冒険が始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。