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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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誰にも止められない

 翌朝。


 悠真は宿の部屋で目を覚ました。


「……ん?」


 身体を起こしたところで、下の階から騒がしい声が聞こえてくる。


 何人もの人間が慌ただしく行き交っているようだった。


「何かあったのか?」


 悠真は急いで身支度を整えると、部屋を出て一階へ降りた。


 食堂には昨日とは違う緊張した空気が漂っていた。


 宿泊していた冒険者たちが武器を手に、次々と外へ出ていく。


「何があったんですか?」


 近くにいた冒険者へ尋ねる。


「魔物の群れだ! この村に向かってきてるらしい!」


「魔物の群れ?」


「ああ。ギルドから緊急招集がかかった!」


 その言葉を聞いた悠真は、すぐにフィルとツバキの部屋へ向かった。



 三人がギルドへ到着すると、すでに多くの冒険者が集まっていた。


 そして、ギルドから緊急依頼が発表される。


 討伐対象は――。


「ラッシュシープ……?」


 悠真は首を傾げた。


(シープ? 羊?)


 隣にいたフィルへ小声で尋ねる。


「フィル。ラッシュシープって?」


「ラッシュシープは、三メートルから五メートルくらいある羊型の魔物です」


「……でかくない?」


「一体一体はそれほど強い魔物じゃないんですけど、群れで行動するんですよ」


 フィルの表情が少し曇る。


「とにかく群れで突進してくるので、ものすごく厄介なんです」


「突進……」


 その瞬間。


 悠真にしか見えない文字が目の前に浮かび上がった。


――


【緊急クエスト発生】


中継地点の村へ迫る脅威を排除せよ。


報酬:???


――


(また来たか)


 悠真は表示を確認すると、ふと考え込む。


「でもさ」


「はい?」


「突進してくるってことは、急には止まれないってことだよな?」


「まあ……そうですけど」


「だったら、ぶつかる寸前に壁に当てちゃえばいいんじゃない?」


「…………」


 フィルが悠真を見る。


 そして、ゆっくりとツバキへ顔を向けた。


「……そんな簡単な……ことじゃないですよね? ツバキさん?」


「え、ええ……そうね」


 そう答えるツバキも、明らかに動揺している。


「?」


 悠真だけが不思議そうに二人を見ていた。



 依頼を受けた三人は、他の冒険者たちとともに村の外へ向かった。


 村から少し離れた平原。


 遠くから地面を揺らすような音が響いてくる。


 ドドドドドドド――。


 悠真は目を細めた。


「……来た」


 砂埃を巻き上げながら、巨大な魔物たちがこちらへ向かってくる。


 その数――八体。


 巨大な角を持つラッシュシープの群れだった。


「本当にでかいな……」


 しかも、速度が速い。


 あの巨体の群れが村へ突っ込めば、家屋などひとたまりもないだろう。


 悠真は迫ってくるラッシュシープを見つめる。


 そして――。


「フィル!」


「はい!」


「できるだけ広く、一面に氷を張ってくれ!」


「分かりました!」


 フィルが杖を構える。


「――アイスフィールド!」


 冷気が一気に地面を走った。


 パキパキパキッ――!


 三人の前方に広がる地面が、次々と氷に覆われていく。


 それでもラッシュシープは止まらない。


 まっすぐこちらへ突進してくる。


 フィルが再び杖を構えた。


「――アイススピアー!」


 無数の針状の氷が生み出される。


 次の瞬間――。


 ヒュヒュヒュヒュッ!


 氷の雨がラッシュシープの群れへ襲いかかった。


「ブモォォォッ!」


 先頭を走っていたラッシュシープたちが、次々と地面へ倒れていく。


 しかし――。


 すべてには当たらない。


 氷の隙間を抜けたラッシュシープが、そのまま三人へ突っ込んでくる。


「来ます!」


 フィルが叫ぶ。


 そしてラッシュシープが、アイスフィールドへ足を踏み入れた。


 ズルッ!


「ブモッ!?」


 巨体が大きく体勢を崩す。


 しかし勢いは止まらない。


 滑りながら、そのまま三人へ向かってくる。


「ツバキさん!」


「ええ!」


 ツバキが地面へ手を向けた。


「――錬成」


 ズズズズズッ――!


 地面が盛り上がる。


 そして巨大な土の壁が、一瞬にして形成された。


 ただし――。


 ラッシュシープ側の壁面には、鋭い棘が無数に突き出している。


「…………」


 悠真はその壁を見る。


 フィルも見る。


 そして――。


 ドゴォォォン!!


 勢いを止めることのできないラッシュシープが、棘付きの壁へ激突した。


 さらに後ろから滑ってきたラッシュシープも――。


 ドンッ!


 ドゴォン!


 次々と壁へ突っ込んでいく。


「…………」


 フィルはしばらくその光景を見つめていた。


「本当に……できちゃいましたね」


「そうだな」


 悠真は何事もなかったように答える。


 ツバキは自分が錬成した壁を見ながら、わずかに苦笑していた。


 やがて最後のラッシュシープが倒れる。


 静かになった平原に、悠真にしか見えない文字が浮かび上がった。


――


【クエスト達成】


レベルアップ


Lv.35 → Lv.37


【スキル獲得】


《採掘》


――


「採掘……?」


 悠真は首を傾げる。


(何を掘るんだ?)


 今の悠真には、そのスキルが何のために与えられたのか分からなかった。



 その日の夜。


 中継地点の村では、ちょっとした宴が開かれていた。


 もしあのままラッシュシープの群れが村へ突っ込んでいれば、多くの家屋が破壊されていたかもしれない。


 最悪の場合、村そのものが壊滅していた可能性すらある。


 村人たちは冒険者たちへ酒や料理を振る舞い、無事を喜んでいた。


「おお……」


 悠真の前では、薄く切られた肉と野菜が鉄板の上で焼かれている。


 香ばしい匂いが立ち上る。


 悠真は焼き上がった肉を一切れ口へ運んだ。


(ジンギスカンみたいだな)


「うまい」


 昨日はマンガ肉。


 今日はジンギスカン。


 悠真は旅先ならではの食事を楽しみながら、隣に座るツバキへ尋ねた。


「そういえばツバキさん」


「はい?」


「ゼノンって、どんな人なんですか?」


 ツバキは少し考えてから答えた。


「ゼノンは昔、最強の鍛冶師と言われていたわ」


「最強の鍛冶師……」


「ええ。今は街外れの家で、一人で鍛冶の研究に没頭しているけどね」


「そうなんですね」


「母と私も魔道具を作るときにゼノンを頼ることがあるから、昔から知っているのよ」


「なるほど……」


 悠真は焼けた肉をもう一枚つまみながら、その言葉を頭の中で繰り返す。


(最強の鍛冶師か……)


 まだ見ぬゼノンという人物。


 そして、まだ見ぬドワーフの国。


 明日には、その地へ辿り着く。


 悠真は期待を膨らませながら、もう一枚ジンギスカンを口へ運んだ。

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