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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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龍核兵

「《古代錬成》」


 龍核を中心に、土が形を作っていく。


 頭。


 胴体。


 腕。


 脚。


 やがて――。


 人形ほどの大きさをした、小さな人型が完成した。


「……。」


「……。」


「……。」


 三人が黙って見つめる。


 すると――。


 ピクリ。


 小さな腕が動いた。


 トコ。


 トコトコ。


「動いた……。」


「動きました〜!!」


 フィルがしゃがみ込む。


「すごいです! 本当に動いてます〜!」


 龍核兵は、ツバキの前まで歩いてくると静かに止まった。


「私の指示を認識している……?」


 ツバキが右手を上げる。


 龍核兵も右手を上げた。


「おお〜!」


「じゃあ、歩いて。」


 トコトコトコ。


「止まって。」


 ピタッ。


「すごいな……。」


 そのとき――。


「なにそれ〜!」


「え?」


 いつの間にか、スズが庭へ出てきていた。


 その目は龍核兵へ釘付けになっている。


「かわいい!」


「スズ、これは――」


 スズは龍核兵を両手で抱き上げた。


「遊ぼ〜!」


「ちょ、ちょっとスズ!」


 そのまま走り去っていく。


「……。」


「……。」


「……持っていかれましたね〜。」


「……そうね。」


 庭の向こうでは、スズが人形のココと龍核兵で楽しそうに遊び始めていた。


「まあ……しばらく待ちましょうか。」


「ですね〜。」



 しばらくして――。


「ママー。」


 スズが戻ってきた。


「これ返す〜。」


「……もういいの?」


「うん!」


 龍核兵をツバキへ渡すと、スズは再びココを持ってどこかへ走っていった。


「……。」


 ツバキが龍核兵を見る。


「飽きるの早いですね〜。」


「子どもだからな……。」


「まあ、返ってきたからいいわ。」


 ツバキは龍核兵を地面へ置いた。


「今度は大きさを変えてみましょう。」


「できますかね〜?」


「やってみるわ。」


「《古代錬成》」


 龍核兵の身体が大きくなっていく。


 人形ほどだった身体が――。


 フィルと同じくらいの高さで止まった。


「おお〜!」


 フィルが隣へ並ぶ。


「私と同じくらいです〜!」


「本当だな。」


「まだ大きくできそうね。」


「やってみましょう〜!」


「《古代錬成》」


 さらに身体が大きくなる。


「おお〜!」


 まだ大きくなる。


「おお……。」


 さらに大きく――。


「……。」


 三人は揃って上を見上げた。


 庭に巨大な龍核兵がそびえ立っている。


「……大きすぎません?」


「大きすぎます〜。」


「そうね。」


 ツバキもあっさり頷いた。


「戻しましょう。」


「《古代錬成》」


 今度は身体が縮んでいく。


 やがて、悠真と同じくらいの高さで止まった。


「これくらいがちょうどいいかしら。」


「戦うなら、このくらいですかね。」


「でも……。」


 フィルが龍核兵を上から下まで見る。


「なんか、不格好ですね〜。」


 土の塊を無理やり人型にしたような姿。


 太い胴体。


 短い首。


 ずんぐりした手足。


「確かに……。」


 悠真も頷く。


「もう少し格好よくできないんですか?」


「……。」


 ツバキの眉が、ぴくりと動いた。


「できると思うわ。」


「お?」


「やってみましょう。」


 ツバキが龍核兵へ触れる。


「《古代錬成》」


 土の身体が再び光に包まれた。


 余分な部分が削られ、形が整っていく。


 胴体は引き締まり。


 手足は長く。


 全身の輪郭も滑らかになっていく。


 やがて光が消えた。


「おお……。」


 悠真が思わず声を漏らす。


「格好いいです〜!」


 そこに立っていたのは、先ほどまでの不格好な土人形ではない。


 人間に近い均整の取れた体格。


 無駄のない、洗練された姿。


 まるで一人の戦士のようだった。


「これなら戦えそうだな。」


「じゃあ、武器も作ってみましょうか。」


 ツバキは地面へ手を触れる。


「《錬成》」


 土が盛り上がり、一振りの剣へ形を変えていく。


 龍核兵が、その剣を受け取った。


「でも、土の剣ですよね〜?」


「そのままならね。」


 ツバキが剣へ触れる。


「《古代錬成》」


 淡い光が剣を包む。


「物質の性質を一段階上へ。」


 光が消える。


 見た目はほとんど変わっていない。


 だが――。


 ツバキは完成した剣へ手を触れる。


 《物質認識》によって、その性質を確かめる。


「……成功ね。」


「硬度が一段階上がってるわ。」


 悠真は龍核兵を見つめた。


「……ちょっと試してみます?」


「模擬戦ですか〜?」


「ああ。」


「いいわよ。」


 ツバキが頷く。


 悠真は腰の剣を抜き構えた。


 悠真と龍核兵が向かい合う。


「じゃあ、軽くな。」


 龍核兵が剣を構えた。


「いくわよ。」


「ああ。」


 一歩。


 互いに踏み込む。


 そして――。


 ガキィィン!!


 二本の剣が激しくぶつかり合った。


 次の瞬間。


 パキンッ――。


「……。」


 何かが宙を舞った。


 カラン……。


 地面へ落ちる。


「……。」


「……。」


「……。」


 三人の視線が、ゆっくりと地面へ向く。


 そこには――。


 折れた剣先が転がっていた。


 悠真は、自分の右手を見る。


 握っている剣。


 その刀身が、途中から綺麗になくなっている。


「…………え?」


 フィルが折れた剣を見る。


「折れましたね〜。」


「……え?」


 悠真はもう一度見る。


 やっぱり折れている。


「俺の……剣……。」


「悠真さん。」


「……なに?」


 フィルが少し困ったように笑った。


「属性付与のしすぎです〜。」


「……え?」


「ウィンドに、アイスに、アースに、フレイ……。」


 指を折りながら数えていく。


「毎回いろんな属性を付与して戦ってましたからね〜。」


「剣にも限界がありますよ〜。」


「……。」


 ツバキも折れた剣を拾い上げ、状態を確認する。


「そうね。」


「かなり傷んでる。」


「悠真さんの戦い方に、もうこの剣が耐えられなくなっていたのね。」


「…………。」


 悠真の顔から血の気が引いていく。


「リシェルから……。」


「はい?」


「リシェルから預かった……大事な剣なのに……。」


 ガクッ。


 悠真はその場に膝をついた。


「悠真さん!?」


「崩れ落ちました〜!」


「どうしよう……。」


 折れた剣を見つめる。


「なんて説明すれば……。」


「剣は消耗品ですよ〜。」


「フィルには分からないんだよ……。」


「ひどいです〜!」


 ツバキは苦笑しながら、折れた剣を悠真へ差し出した。


「悠真さん。」


「……はい。」


「この剣を直すこともできるかもしれないけど……。」


 ツバキは龍核兵が持つ剣を見る。


「今の悠真さんの戦い方を考えると、同じことになると思うわ。」


「……。」


「属性を付与しても耐えられる、もっと頑丈な剣が必要ね。」


「そんな剣……ありますか?」


 ツバキは少し考えた。


「心当たりはあるわ。」


「え?」


「腕のいい鍛冶師がいるの。」


 それだけ言うと、ツバキは折れた剣を見つめた。



 その日の夕食。


 悠真たちは食卓を囲んでいた。


「ちっちゃいの、かわいかったよ〜!」


 スズが楽しそうに今日の出来事を話している。


「ココも一緒に遊んだの〜。」


「そうかい、そうかい。」


 カエデが笑いながら相槌を打つ。


 一方――。


「……。」


 悠真は少し離れた場所に置かれた、二つに折れた剣を見つめていた。


「悠真さん、まだ落ち込んでるんですか〜?」


「そりゃ落ち込むだろ……。」


「剣もいつかは壊れるものですよ〜。」


「リシェルから預かった大事な剣なんだよ……。」


「……それは落ち込みますね〜。」


「だろ?」


 そんな二人のやり取りを見ながら、ツバキが小さく笑う。


 そして、カエデへ顔を向けた。


「お母さん。」


「なんだい?」


「明日から、ゼノンのところへ行ってくるわ。」


「ゼノン?」


 その名前を聞いた瞬間――。


 カエデの眉がピクリと動いた。


「あの頑固ジジイのところかい!?」


「ええ。」


「まったく……。」


 カエデは呆れたように息を吐く。


「ま〜、腕はいいからねぇ。」


 そして何かを思い出したように、ぽんと手を打った。


「そうだ。」


「手土産に、家の酒でも持っていきな。」


「お酒?」


「あいつは酒に目がないからね。」


「分かったわ。」


 悠真は二人の会話を聞きながら首を傾げる。


「あの……。」


「ゼノンさんって?」


「ん?」


 カエデが悠真を見る。


「昔からの付き合いさ。」


「腕は確かなんですか?」


「ああ。」


 カエデはニヤリと笑った。


「頑固で偏屈だけど、鍛冶の腕だけは確かだよ。」


「……大丈夫かな。」


「大丈夫、大丈夫。」


 カエデは笑いながら手を振る。


「ま〜、あんたなら大丈夫だよ。」


「……?」


 その言葉の意味が分からず、悠真は首を傾げた。


 ツバキはそんな悠真を見て、小さく笑う。


「明日、出発しましょう。」


「……分かりました。」


 悠真はもう一度、折れた剣を見る。


 ゼノン――。


 頑固な鍛冶師。


 その名前を、悠真はこの日初めて知った。

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