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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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古代錬金術

 月読の街へ辿り着いた頃には、すっかり夜になっていた。


 長い石段を下り、そこからさらに歩き続けた悠真たちは、もうヘトヘトだった。


 ようやく見慣れた家が見えてくる。


「……やっと着いた。」


「もう歩けません〜。」


「二人とも、お疲れ様。」


 三人は重い足取りで家の前まで進んだ。


「ただいま。」


 ツバキが扉を開ける。


 すると――。


「おかえり〜!」


 家の中からスズが元気いっぱいに飛び出してきた。


 その後ろから、カエデも姿を現す。


「おかえり。」


 三人の姿を見るなり、カエデは呆れたように眉を上げた。


「ずいぶんと汚れて帰ってきたねぇ。」


 服は土と埃にまみれ、ところどころ傷んでいる。


「いろいろありまして……。」


 悠真が苦笑する。


「見れば分かるよ。」


 カエデは家の奥を指差した。


「話は後だ。夕飯の前に湯浴みをしてきな。」


「はい……。」


「賛成です〜……。」


「そうね。」


 三人には、逆らう気力すら残っていなかった。


◇


 湯浴みを済ませ、夕食を終えたあと。


 悠真たちは居間に集まっていた。


「それで?」


 カエデが湯飲みを置く。


「あの扉の先には、何があったんだい?」


「それが……。」


 悠真は何から話せばいいのか迷う。


「いろいろありすぎまして。」


「ゆっくりでいいさ。」


 三人は、扉の先で起きたことを順番に話していった。


 誰にも知られていなかった地下六階層以降。


 そこで遭遇した魔物たち。


 そして、地下九階層にいた神龍。


 神龍を蝕んでいた黒い邪気。


 さらに、その下。


 地下十階層に存在していた祠。


 そこに残されていた、一冊の古文書。


「神龍に祠、古文書ねぇ……。」


 カエデが腕を組む。


「古文書はかなり傷んでいて、ほとんど読めませんでした〜。」


 フィルが続ける。


「でも、いくつか読める言葉があったんです。」


「どんなものだい?」


「約千年前……古代種……封印……七つの祠……。」


「千年前……古代種……封印……。」


 カエデが一つ一つ確かめるように呟く。


「それから――」


 フィルは古文書に残されていた一文を思い出す。


「『祠は、鍵が揃いし時に目覚める』。」


「……鍵かい。」


 カエデはしばらく黙って考え込んだ。


 そして、悠真を見る。


「間違いなく、お前さんの夢渡りは関係しているだろうね。」


「やっぱり……そう思いますか?」


「ああ。」


 カエデは頷く。


「お前さんが神殿に入ったことで、今まで開かなかった場所への道が現れた。」


「それにツバキは、神龍から適合者と呼ばれたんだろ?」


「ええ。」


「……何かしら、繋がってるんだろうねぇ。」


「……。」


 悠真は古文書の言葉を思い返す。


 ――鍵が揃いし時。


 自分とツバキ。


 何か関係があるのだろうか。


 だが、まだ答えは分からない。


「お母さん。」


 ツバキが静かに口を開いた。


「それだけじゃないの。」


「ん?」


「古文書に……霊薬のことも書かれていたの。」


「何?」


 カエデの表情が変わった。


「霊薬かい?」


「ええ。」


 ツバキは頷く。


「でも、それだけ。」


「『霊薬は……』って。」


「その先も、その前も腐食していて読めなかった。」


 ツバキは視線を落とす。


「製法も、材料も……分からないまま。」


「……そうかい。」


 カエデはしばらく娘を見つめていた。


 そして――。


「諦めるのはまだ早いよ。」


「え?」


「七つの祠があるんだろ?」


 ツバキが顔を上げる。


「他の神殿も同じように調べれば、何か出てくるかもしれないじゃないか。」


「……。」


 ツバキの瞳に、再び光が戻る。


「そうね。」


 そして、ゆっくりと頷いた。


「私、他の神殿のことも調べてみるわ。」


「ああ。それがいい。」


 カエデは満足そうに頷くと、悠真へ顔を向けた。


「悠真。」


「はい?」


「ツバキも、お前さんの旅に連れて行ってもらえるか?」


 悠真はツバキを見る。


 ツバキも真っ直ぐ悠真を見つめた。


「お願いします。」


「僕は構いませんよ。」


 悠真は微笑んだ。


「もともと、この世界を見て回るのが目的ですから。」


「それにフィルは、もともと神殿の調査も目的でしたので。」


「はい〜!」


 フィルが元気よく手を上げる。


「神殿には本当に古代魔法があるって分かりましたからね〜!」


 その目が輝く。


「私も頑張りますよ〜!」


 そのとき――。


「フィル姉ちゃん!」


「はい?」


 スズがフィルの服を引っ張った。


「一緒に寝よ〜!」


「え?」


「早く〜!」


「ちょ、ちょっと待ってください〜!」


 スズはフィルの手を掴むと、そのまま部屋へ連れていく。


「おやすみなさーい!」


「まだ私、話してる途中です〜!」


 フィルの声が遠ざかっていった。


「……。」


 悠真が苦笑する。


「ずいぶん懐かれたな。」


 ツバキも小さく笑った。


「そうね。」


「さて。」


 カエデが立ち上がる。


「あんたたちも疲れただろうに。今日はもう休みな。」


「はい。」


「おやすみなさい。」


 長かった一日が、ようやく終わった。


◇


 翌朝。


 悠真が外へ出ると、庭にはすでにツバキの姿があった。


「おはようございます。」


「あら、おはよう。」


 ツバキの前には、土や石がいくつか並べられている。


「何してるんですか?」


「昨日授かった《古代錬成》。」


 ツバキが少し楽しそうに笑った。


「せっかくだから、試してみようと思って。」


「もうですか?」


「こういうのは、実際に試してみないと分からないでしょう?」


「それはそうですけど……。」


 そこへ――。


「おはようございます〜。」


 大きなあくびをしながら、フィルもやってきた。


「眠そうだな。」


「スズちゃんが、なかなか寝てくれなかったんです〜。」


「……お疲れ。」


「それで、何してるんですか?」


「古代錬成の検証よ。」


「……!」


 その一言で、フィルの眠そうな目が一瞬で開いた。


「見ます〜!」


「元気になったな……。」


◇


「まずは――《質量変化》ね。」


 ツバキは地面に転がっていた石に触れる。


「《古代錬成》」


 石が淡く光る。


「フィル。持ってみて。」


「はい〜。」


 フィルが何気なく石を持ち上げようとする。


「……ん?」


 動かない。


「んんんん〜!」


 両手で力いっぱい持ち上げようとするが、石はびくともしない。


「お、重いです〜!」


「見た目は全然変わってないのに……。」


 悠真も驚いて石を見る。


「じゃあ、今度は逆ね。」


 ツバキが再び石に触れる。


「《古代錬成》」


「どう?」


 フィルが恐る恐る持ち上げる。


「軽っ!」


 勢い余って、石を頭上まで持ち上げてしまった。


「すごいです〜!」


「質量そのものを変えられるってことか……。」


「そうみたいね。」


 ツバキ自身も興味深そうに石を見つめる。


「次は――《物質の昇華》。」


 別の石を手に取る。


「《古代錬成》」


 淡い光が石を包み込む。


 やがて光が消えた。


「……変わった?」


 悠真が覗き込む。


「見た目はあまり変わりませんね〜。」


「でも――」


 ツバキは石を軽く叩いて確かめる。


「硬度が上がってる。」


「物質そのものの性質を、一段階上へ引き上げる……。」


 ツバキは自分の手を見つめた。


「本当にできるのね。」


「次はいよいよアレですか〜?」


 フィルが待ちきれない様子で身を乗り出す。


「ええ。」


 ツバキはポーチから、土の龍核を取り出した。


「《龍核兵》。」


 フィルが身を乗り出す。


「いよいよですね〜!」


 ツバキは静かに龍核へ手を伸ばした。


「《古代錬成》」


 次の瞬間――。


 土の龍核が、淡い光を放ち始めた。

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