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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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古代錬金術

 月読の街へ辿り着いた頃には、すっかり夜になっていた。


 長い石段を下り、そこからさらに歩き続けた悠真たちは、もうヘトヘトだった。


 ようやく見慣れた家が見えてくる。


「……やっと着いた。」


「もう歩けません〜。」


「二人とも、お疲れ様。」


 三人は重い足取りで家の前まで進んだ。


「ただいま。」


 ツバキが扉を開ける。


 すると――。


「おかえり〜!」


 家の中からスズが元気いっぱいに飛び出してきた。


 その後ろから、カエデも姿を現す。


「おかえり。」


 三人の姿を見るなり、カエデは呆れたように眉を上げた。


「ずいぶんと汚れて帰ってきたねぇ。」


 服は土と埃にまみれ、ところどころ傷んでいる。


「いろいろありまして……。」


 悠真が苦笑する。


「見れば分かるよ。」


 カエデは家の奥を指差した。


「話は後だ。夕飯の前に湯浴みをしてきな。」


「はい……。」


「賛成です〜……。」


「そうね。」


 三人には、逆らう気力すら残っていなかった。



 湯浴みを済ませ、夕食を終えたあと。


 悠真たちは居間に集まっていた。


「それで?」


 カエデが湯飲みを置く。


「あの扉の先には、何があったんだい?」


「それが……。」


 悠真は何から話せばいいのか迷う。


「いろいろありすぎまして。」


「ゆっくりでいいさ。」


 三人は、扉の先で起きたことを順番に話していった。


 誰にも知られていなかった地下六階層以降。


 そこで遭遇した魔物たち。


 そして、地下九階層にいた神龍。


 神龍を蝕んでいた黒い邪気。


 さらに、その下。


 地下十階層に存在していた祠。


 そこに残されていた、一冊の古文書。


「神龍に祠、古文書ねぇ……。」


 カエデが腕を組む。


「古文書はかなり傷んでいて、ほとんど読めませんでした〜。」


 フィルが続ける。


「でも、いくつか読める言葉があったんです。」


「どんなものだい?」


「約千年前……古代種……封印……七つの祠……。」


「千年前……古代種……封印……。」


 カエデが一つ一つ確かめるように呟く。


「それから――」


 フィルは古文書に残されていた一文を思い出す。


「『祠は、鍵が揃いし時に目覚める』。」


「……鍵かい。」


 カエデはしばらく黙って考え込んだ。


 そして、悠真を見る。


「間違いなく、お前さんの夢渡りは関係しているだろうね。」


「やっぱり……そう思いますか?」


「ああ。」


 カエデは頷く。


「お前さんが神殿に入ったことで、今まで開かなかった場所への道が現れた。」


「それにツバキは、神龍から適合者と呼ばれたんだろ?」


「ええ。」


「……何かしら、繋がってるんだろうねぇ。」


「……。」


 悠真は古文書の言葉を思い返す。


 ――鍵が揃いし時。


 自分とツバキ。


 何か関係があるのだろうか。


 だが、まだ答えは分からない。


「お母さん。」


 ツバキが静かに口を開いた。


「それだけじゃないの。」


「ん?」


「古文書に……霊薬のことも書かれていたの。」


「何?」


 カエデの表情が変わった。


「霊薬かい?」


「ええ。」


 ツバキは頷く。


「でも、それだけ。」


「『霊薬は……』って。」


「その先も、その前も腐食していて読めなかった。」


 ツバキは視線を落とす。


「製法も、材料も……分からないまま。」


「……そうかい。」


 カエデはしばらく娘を見つめていた。


 そして――。


「諦めるのはまだ早いよ。」


「え?」


「七つの祠があるんだろ?」


 ツバキが顔を上げる。


「他の神殿も同じように調べれば、何か出てくるかもしれないじゃないか。」


「……。」


 ツバキの瞳に、再び光が戻る。


「そうね。」


 そして、ゆっくりと頷いた。


「私、他の神殿のことも調べてみるわ。」


「ああ。それがいい。」


 カエデは満足そうに頷くと、悠真へ顔を向けた。


「悠真。」


「はい?」


「ツバキも、お前さんの旅に連れて行ってもらえるか?」


 悠真はツバキを見る。


 ツバキも真っ直ぐ悠真を見つめた。


「お願いします。」


「僕は構いませんよ。」


 悠真は微笑んだ。


「もともと、この世界を見て回るのが目的ですから。」


「それにフィルは、もともと神殿の調査も目的でしたので。」


「はい〜!」


 フィルが元気よく手を上げる。


「神殿には本当に古代魔法があるって分かりましたからね〜!」


 その目が輝く。


「私も頑張りますよ〜!」


 そのとき――。


「フィル姉ちゃん!」


「はい?」


 スズがフィルの服を引っ張った。


「一緒に寝よ〜!」


「え?」


「早く〜!」


「ちょ、ちょっと待ってください〜!」


 スズはフィルの手を掴むと、そのまま部屋へ連れていく。


「おやすみなさーい!」


「まだ私、話してる途中です〜!」


 フィルの声が遠ざかっていった。


「……。」


 悠真が苦笑する。


「ずいぶん懐かれたな。」


 ツバキも小さく笑った。


「そうね。」


「さて。」


 カエデが立ち上がる。


「あんたたちも疲れただろうに。今日はもう休みな。」


「はい。」


「おやすみなさい。」


 長かった一日が、ようやく終わった。



 翌朝。


 悠真が外へ出ると、庭にはすでにツバキの姿があった。


「おはようございます。」


「あら、おはよう。」


 ツバキの前には、土や石がいくつか並べられている。


「何してるんですか?」


「昨日授かった《古代錬成》。」


 ツバキが少し楽しそうに笑った。


「せっかくだから、試してみようと思って。」


「もうですか?」


「こういうのは、実際に試してみないと分からないでしょう?」


「それはそうですけど……。」


 そこへ――。


「おはようございます〜。」


 大きなあくびをしながら、フィルもやってきた。


「眠そうだな。」


「スズちゃんが、なかなか寝てくれなかったんです〜。」


「……お疲れ。」


「それで、何してるんですか?」


「古代錬成の検証よ。」


「……!」


 その一言で、フィルの眠そうな目が一瞬で開いた。


「見ます〜!」


「元気になったな……。」



「まずは――《質量変化》ね。」


 ツバキは地面に転がっていた石に触れる。


「《古代錬成》」


 石が淡く光る。


「フィル。持ってみて。」


「はい〜。」


 フィルが何気なく石を持ち上げようとする。


「……ん?」


 動かない。


「んんんん〜!」


 両手で力いっぱい持ち上げようとするが、石はびくともしない。


「お、重いです〜!」


「見た目は全然変わってないのに……。」


 悠真も驚いて石を見る。


「じゃあ、今度は逆ね。」


 ツバキが再び石に触れる。


「《古代錬成》」


「どう?」


 フィルが恐る恐る持ち上げる。


「軽っ!」


 勢い余って、石を頭上まで持ち上げてしまった。


「すごいです〜!」


「質量そのものを変えられるってことか……。」


「そうみたいね。」


 ツバキ自身も興味深そうに石を見つめる。


「次は――《物質の昇華》。」


 別の石を手に取る。


「《古代錬成》」


 淡い光が石を包み込む。


 やがて光が消えた。


「……変わった?」


 悠真が覗き込む。


「見た目はあまり変わりませんね〜。」


「でも――」


 ツバキは石を軽く叩いて確かめる。


「硬度が上がってる。」


「物質そのものの性質を、一段階上へ引き上げる……。」


 ツバキは自分の手を見つめた。


「本当にできるのね。」


「次はいよいよアレですか〜?」


 フィルが待ちきれない様子で身を乗り出す。


「ええ。」


 ツバキはポーチから、土の龍核を取り出した。


「《龍核兵》。」


 フィルが身を乗り出す。


「いよいよですね〜!」


 ツバキは静かに龍核へ手を伸ばした。


「《古代錬成》」


 次の瞬間――。


 土の龍核が、淡い光を放ち始めた。

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