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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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薬草採取

 朝日が庭を照らし、月読の一日が始まった。


 朝食を終えた悠真とフィルは、冒険者ギルドへ向かっていた。


 ツバキはスズと一緒に留守番をするようだ。


「やっぱり、スズちゃんはツバキさんのことが大好きなんですね〜。」


 フィルが微笑みながら言った。


「朝から『ママと一緒がいい〜』って駄々をこねてましたよ〜。」


 悠真も笑う。


「普段は離れて暮らしてるんだからな。」


「少しでも一緒にいたいと思うのは、よく分かるよ。」


 その言葉に、フィルは優しく頷いた。



 冒険者ギルドへ到着すると、悠真たちは薬草採取の依頼を受けた。


 目的地は、街の外れにある岩山地帯だった。


 湿った空気が漂い、苔むした岩の周囲には、色鮮やかな薬草が一面に広がっている。


「すごいですね〜。」


「ああ。」


 悠真はしゃがみ込み、一株の薬草を手に取った。


(鑑定って、本当に便利だな。)


 薬草の名前も効能も、すぐに分かる。


 すると、フィルがひょいっと顔をのぞかせた。


「なんでそんなにたくさん見つけられるんですか〜?」


「私は、本を見ながら探してるのに〜。」


 悠真は笑った。


「俺には鑑定っていう心強い味方がいるからな。」


「むきー!」


 フィルは頬を膨らませる。


「悠真さんには負けませんよ〜!」



 そのときだった。


 悠真の耳に、聞き慣れた音が響く。



【クエスト発生】


薬草を乱獲する魔物を追い払え。


報酬:???



「フィル!」


「まだ薬草採取の途中ですよ〜。」


「違う。」


 悠真は真剣な表情で周囲を見回した。


「魔物が近くにいる。」


 フィルもすぐに杖を握る。


 二人は慎重に岩山を回り込んだ。


 そして、その先で見たものに驚いた。


「馬……?」


 そこには、大きな馬によく似た魔物がいた。


 緑色のたてがみを揺らしながら、夢中になって薬草を食べている。


 周囲の薬草は、ほとんどなくなっていた。


「ハーブホースですね〜。」


 フィルが呟く。


「知ってるのか?」


「はい〜。」


「でも、おかしいですね〜。」


「本来は、とても大人しい魔物なんですよ〜。」


 悠真は剣の柄から手を離した。


 そのときだった。


「……ん?」


 悠真は違和感に気づく。


 ハーブホースの腹が、異様に膨らんでいたのだ。


(まさか……。)


 悠真は小さく息をのんだ。


(お腹の中に、赤ちゃんがいるのか。)


 フィルも気づいたらしい。


「そういうことだったんですね〜。」



 フィルはゆっくりと前へ出た。


 そして、そっと杖を地面に置いた。


「大丈夫ですよ〜。」


「私たちは敵じゃありませんからね〜。」


 しかし、ハーブホースはさらに警戒を強める。


 前脚で地面を蹴り、大きく鳴いた。


 悠真は思わず身構えた。


「フィル。」


「大丈夫ですよ〜。」


 その瞬間だった。


 ハーブホースが勢いよく突進した。


「きゃっ!」


 悠真はとっさに手を前へ突き出した。


「魔力障壁!」


 半透明の壁が目の前に現れる。


 次の瞬間――。


 ドンッ!


 鈍い音が響き渡った。


 ハーブホースは障壁にぶつかり、その場に倒れ込んだ。


「大丈夫か?」


「私は平気です〜。」


 二人は慎重に近づく。


 フィルは優しく微笑んだ。


「ヒール。」


 淡い光がハーブホースを包み込む。


 やがて、ハーブホースはゆっくりと目を開けた。


「よかったです〜。」


 フィルは優しく頭を撫でる。


 すると、ハーブホースは警戒を解いたように鼻を鳴らした。



 二人は、ハーブホースを街から離れた場所へ案内した。


 そこに広がっていたのは、見渡す限りの薬草畑だった。


「すごい……。」


 悠真は思わず息をのんだ。


 風が吹き抜けるたび、薬草が波のように揺れている。


 まるで、緑色の海だった。


 ハーブホースは嬉しそうに駆け出していく。


 そして、一度だけ振り返った。


「お礼を言ってるみたいですね〜。」


「そうだな。」


 二人は微笑みながら、その後ろ姿を見送った。


 ⸻


【クエスト達成】


薬草を乱獲する魔物を追い払え。


報酬:《剛力》



(剛力……?)


(筋力を強化するスキルか。)




 帰り道。


「無事でよかったですね〜。」


「ああ。」


「赤ちゃんも元気だといいですね〜。」


「きっと大丈夫だよ。」


 夕日に染まる街道を歩きながら、二人は月読へ帰っていった。



 夜。


 いつものように、食卓には豪華な料理が並んでいた。


 悠真は昼間の出来事を話した。


「そういえば、ハーブホースって珍しい魔物なのか?」


 ツバキは静かに頷いた。


「ええ。月読の森にだけ生息する魔物よ。」


「薬草を食べていたけど、大丈夫なのか?」


「大丈夫よ。」


 ツバキは穏やかに微笑んだ。


「ハーブホースは薬草を食べるけれど、同時に薬草を育てる存在でもあるの。」


「育てる?」


「ええ。」


「体内で魔力と栄養を取り込み、その排出物が新たな薬草の養分になるのよ。」


「つまり、自然の循環ってことか。」


「そういうこと。」


 ツバキは静かに頷いた。


「私たちは薬草を育て、ハーブホースは森を育てる。」


「だから月読では、彼らを害獣ではなく、森の一員として扱っているの。」


 悠真は窓の外へ視線を向けた。


 月明かりが、静かに森を照らしている。


(なるほどな……。)


(自然の循環、そのものを守っているのか。)


 悠真は、月読という国の奥深さを改めて知るのだった。

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