↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/113

薬草採取

 朝日が庭を照らし、月読の一日が始まった。


 朝食を終えた悠真とフィルは、冒険者ギルドへ向かっていた。


 ツバキはスズと一緒に留守番をするようだ。


「やっぱり、スズちゃんはツバキさんのことが大好きなんですね〜。」


 フィルが微笑みながら言った。


「朝から『ママと一緒がいい〜』って駄々をこねてましたよ〜。」


 悠真も笑う。


「普段は離れて暮らしてるんだからな。」


「少しでも一緒にいたいと思うのは、よく分かるよ。」


 その言葉に、フィルは優しく頷いた。


◇


 冒険者ギルドへ到着すると、悠真たちは薬草採取の依頼を受けた。


 目的地は、街の外れにある岩山地帯だった。


 湿った空気が漂い、苔むした岩の周囲には、色鮮やかな薬草が一面に広がっている。


「すごいですね〜。」


「ああ。」


 悠真はしゃがみ込み、一株の薬草を手に取った。


(鑑定って、本当に便利だな。)


 薬草の名前も効能も、すぐに分かる。


 すると、フィルがひょいっと顔をのぞかせた。


「なんでそんなにたくさん見つけられるんですか〜?」


「私は、本を見ながら探してるのに〜。」


 悠真は笑った。


「俺には鑑定っていう心強い味方がいるからな。」


「むきー!」


 フィルは頬を膨らませる。


「悠真さんには負けませんよ〜!」


◇


 そのときだった。


 悠真の耳に、聞き慣れた音が響く。


⸻


【クエスト発生】


薬草を乱獲する魔物を追い払え。


報酬:???


⸻


「フィル!」


「まだ薬草採取の途中ですよ〜。」


「違う。」


 悠真は真剣な表情で周囲を見回した。


「魔物が近くにいる。」


 フィルもすぐに杖を握る。


 二人は慎重に岩山を回り込んだ。


 そして、その先で見たものに驚いた。


「馬……?」


 そこには、大きな馬によく似た魔物がいた。


 緑色のたてがみを揺らしながら、夢中になって薬草を食べている。


 周囲の薬草は、ほとんどなくなっていた。


「ハーブホースですね〜。」


 フィルが呟く。


「知ってるのか?」


「はい〜。」


「でも、おかしいですね〜。」


「本来は、とても大人しい魔物なんですよ〜。」


 悠真は剣の柄から手を離した。


 そのときだった。


「……ん?」


 悠真は違和感に気づく。


 ハーブホースの腹が、異様に膨らんでいたのだ。


(まさか……。)


 悠真は小さく息をのんだ。


(お腹の中に、赤ちゃんがいるのか。)


 フィルも気づいたらしい。


「そういうことだったんですね〜。」


◇


 フィルはゆっくりと前へ出た。


 そして、そっと杖を地面に置いた。


「大丈夫ですよ〜。」


「私たちは敵じゃありませんからね〜。」


 しかし、ハーブホースはさらに警戒を強める。


 前脚で地面を蹴り、大きく鳴いた。


 悠真は思わず身構えた。


「フィル。」


「大丈夫ですよ〜。」


 その瞬間だった。


 ハーブホースが勢いよく突進した。


「きゃっ!」


 悠真はとっさに手を前へ突き出した。


「魔力障壁!」


 半透明の壁が目の前に現れる。


 次の瞬間――。


 ドンッ!


 鈍い音が響き渡った。


 ハーブホースは障壁にぶつかり、その場に倒れ込んだ。


「大丈夫か?」


「私は平気です〜。」


 二人は慎重に近づく。


 フィルは優しく微笑んだ。


「ヒール。」


 淡い光がハーブホースを包み込む。


 やがて、ハーブホースはゆっくりと目を開けた。


「よかったです〜。」


 フィルは優しく頭を撫でる。


 すると、ハーブホースは警戒を解いたように鼻を鳴らした。


◇


 二人は、ハーブホースを街から離れた場所へ案内した。


 そこに広がっていたのは、見渡す限りの薬草畑だった。


「すごい……。」


 悠真は思わず息をのんだ。


 風が吹き抜けるたび、薬草が波のように揺れている。


 まるで、緑色の海だった。


 ハーブホースは嬉しそうに駆け出していく。


 そして、一度だけ振り返った。


「お礼を言ってるみたいですね〜。」


「そうだな。」


 二人は微笑みながら、その後ろ姿を見送った。


 ⸻


【クエスト達成】


薬草を乱獲する魔物を追い払え。


報酬:《剛力》


⸻


(剛力……?)


(筋力を強化するスキルか。)


⸻


◇


 帰り道。


「無事でよかったですね〜。」


「ああ。」


「赤ちゃんも元気だといいですね〜。」


「きっと大丈夫だよ。」


 夕日に染まる街道を歩きながら、二人は月読へ帰っていった。


◇


 夜。


 いつものように、食卓には豪華な料理が並んでいた。


 悠真は昼間の出来事を話した。


「そういえば、ハーブホースって珍しい魔物なのか?」


 ツバキは静かに頷いた。


「ええ。月読の森にだけ生息する魔物よ。」


「薬草を食べていたけど、大丈夫なのか?」


「大丈夫よ。」


 ツバキは穏やかに微笑んだ。


「ハーブホースは薬草を食べるけれど、同時に薬草を育てる存在でもあるの。」


「育てる?」


「ええ。」


「体内で魔力と栄養を取り込み、その排出物が新たな薬草の養分になるのよ。」


「つまり、自然の循環ってことか。」


「そういうこと。」


 ツバキは静かに頷いた。


「私たちは薬草を育て、ハーブホースは森を育てる。」


「だから月読では、彼らを害獣ではなく、森の一員として扱っているの。」


 悠真は窓の外へ視線を向けた。


 月明かりが、静かに森を照らしている。


(なるほどな……。)


(自然の循環、そのものを守っているのか。)


 悠真は、月読という国の奥深さを改めて知るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。