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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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家族

 悠真たちは、馬車がすれ違えるほどの大きな橋を渡っていた。


 橋の下には澄んだ川が流れ、その先には黒い瓦屋根が立ち並ぶ街並みが広がっている。


 どこか和の雰囲気を感じさせながらも、王都アスティアとはまったく異なる景色だった。


 建物には紫色の装飾が施され、あちこちに薬草が干されている。


 道行く人々の耳は長く尖り、紫色や金色の瞳が印象的だった。


 悠真は、和を感じる、でも不思議で綺麗な街に驚いていた。


「すごい。」


「すごいですね〜。」


 フィルが目を輝かせる。


「王都とは全然違います。」


「ええ。」


 ツバキは少し誇らしそうに微笑んだ。


「ここが、ダークエルフの国、首都、月読よ。」


 するとツバキが振り向いた。


「このまま、私の家へ向かいましょうか?」


「もちろんです。」


「もちろんですよ〜。」


 二人が頷く。


 馬車は街外れへ向かい、やがて大きな屋敷の前で止まった。


 門をくぐると、美しい庭園が広がっていた。


 色鮮やかな花々が咲き誇り、小さな橋の下では魚が泳いでいる。


 そして、池の中央からは澄み切った水が湧き出していた。


「地下水よ。」


 ツバキが静かに説明する。


「薬品を錬成するときに使っているの。」


「へえ……。」


 悠真は感心したように頷いた。


 目の前には、和と中が混ざり合ったような大きな家が建っていた。


 そのときだった。


「ママー!」


 元気いっぱいの声が響いた。


 五歳ほどの女の子が、勢いよく走ってくる。


「おかえりなさーい!」


「ただいま。」


 ツバキは優しく微笑んだ。


「元気にしてた?」


「うん!」


「おばあちゃんの言うことも聞いてたし、お手伝いもしたよ!」


「いい子にしていたのね。」


「うん!」


「スズ、えらい〜?」


「えらいえらい。」


 ツバキは優しく頭を撫でた。


 すると、スズが悠真を見上げた。


「……?」


 じっと見つめる。


「新しいパパ〜?」


「ぶふっ!」


 悠真は思わず吹き出した。


「ち、違います!」


「そうなの?」


 ツバキは苦笑した。


「ママのお友達よ。」


「中継都市から一緒に旅をしてきたの。」


「盗賊から助けてくれたのよ〜。」


 すると、フィルがひょいっと前へ出た。


「こんにちは〜。」


「私はフィルって言います。」


「よろしくね〜。」


「俺は悠真。」


「旅の途中で、お母さんに助けてもらったんだ。」


「でしょ〜?」


 スズは得意そうに胸を張った。


「私のママは強いんだから〜。」


「もう。」


 ツバキは微笑みながら頭を撫でた。


「こちらは、私の娘のスズよ。」


「スズ。」


「ちゃんと挨拶しなさい。」


 スズは背筋を伸ばした。


「スズって言います!」


「スズちゃんって言うんだね〜。」


 フィルがにっこりと笑った。


 すると、家の奥から一人の女性が姿を現した。


「おかえり。」


 ツバキをさらに落ち着かせたような雰囲気を持つ女性だった。


「お母さん。」


「ただいま。」


「今回はどうだったい?」


「いつもどおりよ。」


「そうかい。」


「ありがとうね。」


 ツバキは二人へ向き直った。


「こちらは母のカエデです。」


「はじめまして。」


 悠真とフィルも、それぞれ挨拶を交わした。


「立ち話も何だ。」


「中へ入りなさい。」


 カエデに促され、一行は屋敷へ入った。


 しばらく談笑したあと、話題は自然と夢渡りの話へ移った。


「そうかい。」


「あんたが夢渡りかい。」


「みたいですね。」


「何か知っていますか?」


 悠真が尋ねる。


 カエデは静かに首を横に振った。


「私も詳しくは知らないよ。」


「ただ、爺さんが昔、よく遺跡へ通っていたね。」


「遺跡ですか〜?」


「ああ、土の神殿だよ。」


 フィルが身を乗り出した。


「何か隠されているんですか〜?」


「さてね。」


「あの人は、あまり話さない人だったから。」


 悠真はフィルと顔を見合わせた。


「じゃあ、調べてみようか。」


「そうですね〜。」


 すると、カエデがツバキへ視線を向けた。


「ツバキ。」


「一緒に行ってやりな。」


「えっ!?」


 スズが声を上げた。


「もっと遊びたい〜!」


 フィルは笑顔で手を挙げた。


「じゃあ、スズちゃん。」


「私と遊ぼ〜。」


「いいよ〜!」


 二人は元気よく駆け出していった。


 それを見送りながら、悠真は苦笑した。


「カエデさん。」


「帰ってきたばかりですし、一日か二日はゆっくりしましょう。」


「僕も、この街を見て回りたいですし。」


「そうかい。」


 カエデは穏やかに微笑んだ。


「それなら、その間はここに泊まっていきな。」


「その方が都合もいいだろう。」


「ありがとうございます。」


「それから、ツバキさんもよろしくお願いします。」


「ええ。大丈夫よ。」


「私も、土の神殿の事は気になっていますから。」


 ツバキは微笑んだ。


 その日の夕食は、とても賑やかだった。


 食卓には見たこともない料理が並んでいた。


「これは……。」


「めちゃくちゃ美味しいです。」


 悠真は、目を輝かせながら口いっぱいに頬張った。


「フィル姉ちゃん、これも美味しいよ〜!」


「本当ですね〜!」


 カエデとツバキは顔を見合わせて笑った。


「どんどん食べな。」


「たくさんありますからね。」


 笑い声が家中に響き渡る。


  スズは楽しそうにフィルへ話しかけ、フィルも嬉しそうに笑っていた。


 ツバキとカエデも、そんな二人を優しい目で見つめている。


(いい場所だな……。)


 悠真は温かいお茶を口に運び、静かに微笑んだ。


 その夜、ツバキの家には、久しぶりに賑やかな時間が流れていた。


挿絵(By みてみん)

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