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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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月読(ツクヨミ)

 野営地には、ぱちぱちと薪のはぜる音が響いていた。


 フィルとツバキは野営の準備を終え、夕食を囲んでいた。


「悠真さんは、いつ戻ってくるんですかね〜。」


 フィルが空を見上げながら尋ねる。


 ツバキは小さく笑った。


「そのうち、ふっと戻ってくるんじゃないかしら〜。」


 その瞬間だった。


 馬車の方が、まばゆい光に包まれた。


「……!」


 フィルが目を丸くする。


 光が消えると、そこには見慣れた姿が立っていた。


「ただいま〜。」


 悠真は、まるで散歩から帰ってきたかのような表情で手を振った。


「悠真さん、おかえりなさい。」


 ツバキが微笑む。


 しかし、フィルは慌てて駆け寄った。


「悠真さん! ど、どういうことなんですか〜!?」


「急にいなくなってしまって、心配しましたよ〜!」


「ああ、ごめん、ごめん。」


 悠真は頭をかいた。


「説明してなかったんだけど、実は僕、違う世界から来たんだ。」


「今も、こっちの世界と向こうの世界を行き来してる。」


「詳しいことは、僕にもよく分からないんだけどね。」


 ツバキが静かにつぶやく。


「……夢渡り。」


 悠真は首をかしげた。


「夢渡り?」


「別の世界を行き来する存在のことよ。」


「祖父から聞いたことがあるわ。」


 フィルも頷く。


「私も古い本で読んだことがあります〜。」


「てっきり、おとぎ話だと思っていました〜。」


「そうなんだ。」


 悠真は少しだけ遠くを見つめた。


「僕も、急にこの世界へ来たんだ。」


「もしリシェルと出会っていなかったら、どうなっていたのか分からないな。」


「本当ですね〜。」


 フィルは大きく頷いた。


「だから悠真さんは、不思議な道具を持っているんですね〜。」


「この前のカレーも、そうなんですか〜?」


「そうだね。」


 ツバキが腕を組んだ。


「でも、どうして悠真さんは、そんな力を持つようになったのかしら。」


 三人はしばらく黙り込んだ。


 火の粉が夜空へ舞い上がる。


 答えは、誰にも分からなかった。


 やがて、ツバキが穏やかな声で言った。


「まあ、これも何かの縁ということね。」


「今日はもう休みましょう。」


「そうですね〜。」


 フィルが頷く。


 すると、悠真が立ち上がった。


「そういうことなら、今日はよく眠れるものを持ってきたんだ。」


 そう言って、アイテムボックスから取り出したのは、折りたたみ式のベッドだった。


「おお〜。」


 フィルが目を輝かせる。


「いいですね〜。」


 対照的に、ツバキは目を丸くしていた。


「えっ? 何ですか、それは?」


「これはね――」


 悠真が説明しようとした瞬間だった。


「悠真さんの不思議な道具です!」


 フィルが胸を張る。


「……。」


 悠真は苦笑した。


「そうなんですね〜。」


 ツバキは納得したように頷いた。


 夜空には、無数の星々が輝いていた。


 三人の夜は、静かに更けていく。


⸻


 翌朝。


 空には厚い雲が広がっていた。


「今日は、少し天気が悪そうですね〜。」


 フィルが空を見上げる。


 すると、ツバキが微笑んだ。


「なら、もう少しね。」


「私の故郷、月読は、いつも雲に包まれているの。」


「晴れる日の方が珍しいくらいよ。」


「そうなんだ〜。」


「そうなんですね〜。」


「ええ。」


「だからこそ、美しい場所なのよ。」


 馬車は峠道を進み続けた。


 そして、昼頃――。


 ついに目的地が見えてきた。


「……!」


 悠真は息をのんだ。


「うわぁ……。」


「すごいですね〜。」


「王都とは、まったく違います。」


 フィルも目を輝かせる。


「本物は、やっぱり違います〜。」


 ツバキは懐かしそうに微笑んだ。


「ようこそ。」


「ダークエルフの国――月読へ。」


 馬車はゆっくりと、首都へ向かって進み始めた。

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