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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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刺激的なスパイス

朝日が山々を照らし始める頃、悠真たちは野営の片付けをしていた。


 テントを畳む悠真の隣で、ツバキは慣れた手つきで朝食の準備を進めている。


「すみません。任せてしまって。」


 悠真が申し訳なさそうに言うと、ツバキは小さく笑った。


「気にしないでください。習慣ですから。」


「さすが、一児の母ですね。」


「ふふっ。そういうことです。」


 フィルは焼きたてのパンを頬張りながら、嬉しそうに笑った。


「ツバキさんの料理、おいしいです~。」


 穏やかな朝の時間が過ぎ、三人は山道を目指し草原を進み始めた。


 目指すのは、ダークエルフの国。


 険しい山を越えれば、ツバキの故郷へ続く道が見えてくるという。


 昼頃、一行は山の中腹へとたどり着いていた。


 その時だった。


 地面が大きく揺れた。


 ドドドドドッ――。


「何だ!?」


 悠真が剣を抜く。


 木々の間から現れたのは、巨大なイノシシのような魔物だった。


 全身を岩のような甲殻で覆い、鋭い牙を持っている。


____


〈クエスト発生〉


 脅威を取り除き高級食材を手に入れろ


 報酬:????


____


 (え?食材ー?!)


「ロックボアです。」


 ツバキが静かに告げた。


「中級魔物ですね。」


「中級!?」


「大丈夫ですよ。」


 そう言うと、ツバキは小さな瓶を二本取り出した。


「これは?」


「旅用に精製した薬です。」


「薬?」


「身体能力向上、魔力上昇の効果があります。」


「すごっ!?」


 悠真が目を丸くする。


 フィルも驚いていた。


「そんなものまで作れるんですか!?」


「ええ。」


 ツバキは微笑んだ。


「さあ、どうぞ。」


 二人は瓶の蓋を開け、一気に飲み干した。


「……甘いです~。」


 フィルがぽつりと言う。


 悠真は思わず吹き出した。


「そこなのか。」


「だって、大事なことですよ?」


 その瞬間だった。


 ロックボアが大きく咆哮した。


 ツバキは地面へ手をかざす。


「(土錬成)」


 ゴゴゴゴゴッ――。


 ロックボアの足元が泥のように柔らかくなり、動きが鈍る。


「今です!」


「はい!」


 フィルの風魔法が放たれる。


「ウィンドスラッシュ!」


 風の刃がロックボアを切り裂いた。


 魔物が大きくよろめく。


「え!?」


 フィルは驚いた。


 悠真は剣を構えた。


「アースエンチャント!」


 刀身へ土が集まり、剣がみるみる伸びていく。


 三メートルほどの巨大な刃が姿を現した。


「なっ!?」


 フィルが目を見開く。


 悠真自身も驚いていた。


「長い!?」


 しかし、不思議と重さは感じない。


 いや、正確には重い。


 だが、振れるのだ。


「いくぞ!」


 巨大な刃が振り下ろされる。


 轟音とともにロックボアは倒れ伏した。


「やりました!」


 フィルが飛び上がる。


 ツバキも穏やかに微笑んだ。


「お二人とも、お見事です。」


「いやいやいやいや!」


 悠真は慌てて首を振る。


「どう考えてもツバキさんのおかげでしょう!」


「悠真さん。」


「あの戦い方って?」


「え?」


 悠真は不思議そうに顔を傾ける。


「魔法を武器に付与するなんて聞いた事ないんですが?」


 悠真か答えようとした時。


「悠真さんは凄いんです。」


 フィルがすかさず答える。


「そして、悠真さんに魔法を教えたのは私です。」


 フィルは誇らしげに言う。


 その時だった。


 ドゴォォォォン!


 突然、一頭の巨大な影が飛び出した。


 しかも、先ほどのロックボアを吹き飛ばしながら突進してきたのである。


「ええっ!?」


「まだいたんですか!?」


 悠真とフィルが叫ぶ。


 しかし、ツバキだけは冷静だった。


「やはり来ましたか。」


 ツバキが静かにつぶやく。


「ロックボアクイーンです。」


「クイーン?」


「魔物はクイーンが群れのボスなのです。」


「そうなの!?」


「そういうものです。」


 悠真とフィルは顔を見合わせた。


「……勉強になります。」


「なりますね~。」


 クイーンはそのまま突進してきた。


「魔力障壁!」


バキィッ!


「うそだろ!?」


魔力の壁は、一瞬で砕け散った。


「悠真さん!」


悠真は剣を地面へ突き立てる。


ギギギギギッ――。


ロックボアクイーンの突進が止まる。


フィルは杖を構えた。


「ツバキさん! クイーンの動きを止めてください!」


「分かりました。」


ツバキは近くの木に手を触れた。


「(錬成)」


地面から無数の蔓が伸び、クイーンの四肢へ絡みついた。


「長くは持ちません!」


「大丈夫です!」


フィルは静かに目を閉じた。


「できました。」


「悠真さん、離れてください!」


悠真は大きく飛び退く。


フィルは杖を天へ掲げた。


「(アイスロック)」


 無数の氷の塊が宙へ浮かび上がる。


「(ウィンドウォール)」


 次の瞬間、暴風が吹き荒れた。


 氷の塊が竜巻に巻き込まれ、猛烈な勢いでクイーンへ襲いかかる。


「アイスバースト!」


 轟音が山々へ響き渡った。


 ツバキが目を見開く。


「多重詠唱……!?」


 激しい爆風が吹き抜ける。


 やがて、土煙が晴れた。


 そこには倒れたロックボアクイーンの姿があった。



「やりましたー!」


 フィルが飛び跳ねた。


「ツバキさんの薬のおかげですー!」


「ああ。」


 悠真も頷く。


「助かったよ。」


「こちらこそ。」


 ツバキは微笑んだ。


「お二人とも、お疲れさまでした。」


____


〈クエスト達成〉


 脅威を取り除き高級食材手に入れろ


 レベルアップ


 Lv.24 → Lv.28


 報酬:「体術」


____



 夕暮れ。


 三人は野営の準備を始めていた。


 ツバキは魔物を解体し、悠真はテントを設営する。


 フィルは火の番だ。


「わたしは、これくらいしかできませんから。」


「それと、味見係です!」


 胸を張るフィルに、悠真とツバキは笑った。


 やがて、悠真は小瓶を取り出した。


「悠真さん、それは何ですか?」


「おいしくなる魔法の粉かな。」


「魔法?」


「まあ、そんなところ。」


 悠真は笑いながら、魔物の肉へスパイスを振りかけていく。


「楽しみにしていてください。」


 香ばしい匂いが漂い始めた。


 すると、フィルがふらふらと近づいてくる。


「いい匂いですね~。」


「だろ?」


「ええ。とても。」


 ツバキも目を細めた。


 悠真は大きく頷く。


「完成!」


 そして、胸を張って宣言した。


「ロックボアクイーンの特製スパイス焼きだ!」


 三人は顔を見合わせる。


「いただきます。」


 ツバキは一口食べると、少し驚いた顔をした。


「これは……おいしいですね。」


「だろ?」


「ええ。」


 フィルも嬉しそうに頬張っていた。


「最高です~。」


 悠真は小さな容器を取り出した。


「それと、これをかけてみて。」


「何ですか?」


「魔法のソース。」


 悠真はステーキ用のガーリックソースを渡した。


 ツバキとフィルは顔を見合わせる。


 恐る恐る口へ運んだ。


 次の瞬間――。


「……。」


「……。」


 二人は言葉を失っていた。


「どうだ?」


「これは……。」


「反則ですー!」


 悠真は思わず笑った。


 そして、ツバキは静かに口を開いた。


「魔物は強くなればなるほど、おいしくなるんですよ。」


「本当ですか!?」


「ええ。」


「ちなみに、一番おいしいのは?」


「ドラゴンですね。」


 悠真の目が輝いた。


「決めた。」


「何をです?」


「いつかドラゴンを倒して、肉を食べる。」


「ええっ!?」


 フィルが目を丸くする。


「ドラゴンのお肉なんて、滅多に手に入りませんよ! 王族や貴族くらいしか食べられないんですから!」


「いいんだよ。」


 悠真は笑った。


「目標があったほうが、旅は楽しいだろう?」


 フィルとツバキは顔を見合わせる。


 そして、小さく笑った。


 山の夜は、今日も静かに更けていった。

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