錬成と魔道具
朝日が窓から差し込み、宿の部屋を優しく照らしていた。
悠真たちは身支度を整え、それぞれの旅支度を終えていた。
リシェルとミリアは、捕らえた盗賊たちを王都へ護送しなければならない。
悠真とフィル、そしてツバキは、そのままダークエルフの国へ向かうことになっていた。
「それじゃあ、ここでお別れですね。」
フィルが少し寂しそうに笑う。
ミリアは元気よく拳を握った。
「次に会う時は、もっと強くなっています!」
「ああ。分かった。」
悠真がそう答えると、ミリアは嬉しそうに笑った。
そして、リシェルが悠真へ視線を向ける。
「悠真。」
「ん?」
「約束だからな。」
「ああ。分かってるよ。」
その瞬間、フィルが身を乗り出した。
「約束って何ですか〜?」
「別にいいだろ。」
「怪しいですね〜。」
「怪しくない。」
悠真が苦笑すると、リシェルも小さく笑った。
「では、また会おう。」
「ああ。」
別れは、驚くほどあっさりしていた。
けれど、それでよかった。
また会えると、誰もが信じていたからだ。
こうして、悠真たちは新たな旅へと歩き出した。
⸻
昼頃、一行は街道沿いで休憩を取ることにした。
「さて、と。」
悠真はアイテムボックスへ手を伸ばした。
折りたたみのテーブル、椅子、調理器具。
せっかく集めたアウトドア用品をツバキに披露する絶好の機会だった。
だが、その直後だった。
「今日は、わたしがお礼を兼ねて料理を振る舞います。」
ツバキが穏やかに微笑む。
そして、静かにしゃがみ込み、そっと地面へ手をつけた。
「(錬成)」
次の瞬間だった。
土が盛り上がり、かまどが現れる。
さらに机と椅子、調理台まで次々と形を成していった。
「えっ。」
フィルが目を丸くする。
「すごい……。」
悠真も思わず呟いた。
「本当にすごいな。」
ツバキは首を横に振る。
「大したことではありませんよ。」
(俺のアウトドア用品の見せ場が……。)
悠真は静かにアイテムボックスを閉じた。
それを見たフィルが、くすりと笑う。
「悠真さん、残念でしたね。」
「……そうだな。」
「ふふっ。」
「って、何のことだよ。」
フィルは、いたずらっぽく笑った。
やがて、美味しそうな香りが辺りに広がった。
温かなスープ。
焼きたてのパン。
香辛料の効いた肉料理。
「いただきます。」
三人は穏やかな昼のひとときを過ごした。
⸻
夕方になると、一行は野営の準備を始めた。
すると、ツバキが小さな魔道具を取り出した。
「これは?」
悠真が尋ねる。
「結界の魔道具です。」
そう言って魔力を流し込むと、淡い光が辺りを包み込んだ。
「魔物避けですね。」
「へえ。」
すると、フィルが得意そうな顔で荷物を探り始めた。
「あっ、わたしも持っています!」
取り出したのは、見覚えのある魔道具だった。
ツバキは目を細める。
「懐かしいですね。」
「知っているんですか?」
「ええ。」
ツバキは優しく微笑んだ。
「昔、わたしが作った魔道具をアルマさんにお渡ししたのです。」
「えっ!?」
フィルは驚いた声を上げた。
「この魔道具、ツバキさんが作ったんですかー?」
「ええ。」
ツバキは優しく微笑んだ。
「アルマさんは長い間、一人で旅を続けていましたからね。」
悠真は思わず感心する。
「それはすごいな。」
「大したことではありませんよ。」
「いや、十分すごいと思うけどな。」
ツバキは少しだけ目を伏せ、穏やかに微笑んだ。
「ありがとうございます。」
すると今度は、フィルが誇らしげに胸を張った。
「でも、悠真さんは結界を使えるんですよ!」
「え?」
ツバキが目を瞬かせる。
「本当ですか?」
「ああ。まだ練習中だけどね。」
「それは驚きました。」
ツバキは感心したように微笑んだ。
そして、なぜかフィルは満足そうに頷いている。
夜空には、無数の星々が輝いていた。
三人の旅は、まだ始まったばかりだった。




