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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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褐色の錬金術師

 朝日が街を照らし始めた頃、悠真たちは宿屋の食堂に集まっていた。


 テーブルには焼きたてのパンと温かなスープが並んでいる。


 フィルが、にやにやと笑いながら口を開いた。


「何かありました〜?」


「何でもない。」


「何でもないです。」


 悠真とリシェルは同時に答えた。


 フィルは嬉しそうに笑う。


「あら、お揃いで〜。」


「違う。」


「違います。」


 再び声が重なった。


 ミリアは小さく咳払いをする。


「では、本題に入るであります。」


 そう言って、机の上へ地図を広げた。


「連合国方面で盗賊の目撃情報が増えているのであります。」


「まずは街道沿いを調べるであります。」


 悠真たちは頷き、宿屋をあとにした。



 街道を進み、森へ差しかかった頃だった。


 甲高い金属音が響いた。


 ガキンッ――。


 続いて怒号が聞こえてくる。


「囲め!」


「逃がすな!」


 悠真は剣の柄を握った。


「誰か、襲われてる。」


 リシェルが頷く。


「行きましょう。」


 一行は森の奥へ駆け出した。



 そこには、一人の女性が短剣を構えて立っていた。


 長い黒髪。


 褐色の肌。


 美しい和柄の衣装。


 そして、人よりも長く尖った耳。


 ダークエルフだ。


 盗賊たちに囲まれているにもかかわらず、その表情に焦りは見えなかった。


 盗賊の一人が叫ぶ。


「まずい! 騎士団だ!」


 女性は静かに地面へ手を触れた。


 次の瞬間、地面が大きく揺れる。


「(錬成)」


「なっ!?」


 盛り上がった土が盗賊の足を覆い、そのまま拘束した。


 リシェルが目を見開く。


「錬金術……?」


 女性は静かに微笑んだ。


「助かります。」



 リシェルはすぐに女性のもとへ駆け寄った。


「大丈夫ですか?」


「ええ。問題ありません。」


 悠真たちも剣を抜く。


「ミリア!」


「了解であります!」


 ミリアが素早く敵陣へ飛び込む。


 フィルは風魔法で敵の動きを乱した。


「ウィンド。」


 女性は近くの木へそっと手を当てる。


「(錬成)」


 枝が大きく伸び、盗賊たちの腕や足へ絡みついた。


「うわっ!」


「動けねぇ!」


 悠真も次々と盗賊を無力化していく。


 そして、最後に残ったのは頭領だけだった。


 リシェルの剣が鋭く閃く。


「くっ!」


 頭領が大きく体勢を崩した。


 その一瞬を、女性は見逃さなかった。


「(錬成)」


 盛り上がった土が頭領の足元を覆う。


「なっ!?」


 リシェルは静かに剣を突きつけた。


「終わりです。」


 頭領は力なく剣を落とした。



「ありがとうございました。」


 女性は深々と頭を下げた。


「わたしはツバキと申します。」


「俺は悠真。」


「私はリシェルです。」


「フィルです。」


「ミリアであります!」


 ツバキは穏やかに微笑んだ。



 午後になり、ミリアは騎士団を連れて戻ってきた。


 盗賊たちは騎士団へ引き渡され、一行は街へ戻ることになった。



 街の食堂。


 ツバキは改めて頭を下げた。


「皆さん、本当にありがとうございました。」

 

「気にしなくていいよ。」


 悠真が答えると、ツバキは優しく微笑んだ。


「わたしは連合国から故郷へ戻る途中だったのです。」


「故郷?」


「ええ。ダークエルフの国です。」


 悠真の目が輝く。


「行ってみたいな。」


 フィルも頷いた。


 悠真はツバキへ視線を向けた。


「よかったら、一緒に行きませんか?」


 ツバキは穏やかに微笑む。


「もちろんです。こちらこそ、よろしくお願いします。」


 そして、小さく首を傾げた。


「ですが、皆さんはどこかへ向かう予定があったのではありませんか?」


 悠真は笑った。


「連合国へ行く予定だったけど、何も決めてなくてね。」


「とりあえず連合国へ行って、それから考えるつもりだったんだ。」


「でも、これで最初に行きたい場所が決まったよ。」


「ダークエルフの国だ。」


 ツバキは少し驚いたような表情を浮かべた。


「わたしの故郷ですか?」


「ああ。」


 フィルも嬉しそうに頷く。


「それに、土の神殿もありますからね。」


 ツバキは静かに微笑んだ。


「たしかに、私の国には土の神殿があります。」


「それは、楽しみだ。」


「それでは、ご案内しますね。」


 その言葉を聞いたリシェルは、ほんの少しだけ寂しそうな表情を浮かべた。


 すると、ツバキが優しく笑う。


「安心してください。」


「え?」


「わたしは故郷で子供が待っているので、会いに帰るだけなんです。」


 リシェルは、ほっとしたように息を吐いた。


 その様子を見て、フィルとミリアは顔を見合わせる。


「……。」


「……。」


 リシェルは何事もなかったかのように立ち上がった。


「とりあえず、宿へ戻りましょう。」



「少しいいか?」


 夜になり、リシェルが悠真の部屋を訪れた。


「ああ。」


 リシェルは、いつものように微笑んだ。


「明日からは別々の行動ですね。」


「そうだな……。」


「……少し寂しいですね。」


 悠真は驚いた。


 リシェルが、そんな言葉を口にするとは思わなかったからだ。


「でも、約束しましたから。」


「ああ。」


「また会えます。」


「もちろんだ。」


 リシェルは小さく頷いた。


「では、目を閉じてください。」


「え?」


「いいから。」


 悠真が目を閉じる。


 次の瞬間。


 柔らかな感触が頬に触れた。


「……え?」


 目を開けたときには、リシェルは扉の前に立っていた。


「また会いましょう。」


「リシェル――」


 しかし、彼女は振り返ることなく部屋を出ていった。



 悠真は、そっと頬に触れた。


「……何だったんだ。」


 胸の鼓動が、少しだけ速い。


 それが何を意味するのか、悠真にはまだ分からなかった。


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