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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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褐色の錬金術師

 朝日が街を照らし始めた頃、悠真たちは宿屋の食堂に集まっていた。


 テーブルには焼きたてのパンと温かなスープが並んでいる。


 フィルが、にやにやと笑いながら口を開いた。


「何かありました〜?」


「何でもない。」


「何でもないです。」


 悠真とリシェルは同時に答えた。


 フィルは嬉しそうに笑う。


「あら、お揃いで〜。」


「違う。」


「違います。」


 再び声が重なった。


 ミリアは小さく咳払いをする。


「では、本題に入るであります。」


 そう言って、机の上へ地図を広げた。


「連合国方面で盗賊の目撃情報が増えているのであります。」


「まずは街道沿いを調べるであります。」


 悠真たちは頷き、宿屋をあとにした。


◇


 街道を進み、森へ差しかかった頃だった。


 甲高い金属音が響いた。


 ガキンッ――。


 続いて怒号が聞こえてくる。


「囲め!」


「逃がすな!」


 悠真は剣の柄を握った。


「誰か、襲われてる。」


 リシェルが頷く。


「行きましょう。」


 一行は森の奥へ駆け出した。


◇


 そこには、一人の女性が短剣を構えて立っていた。


 長い黒髪。


 褐色の肌。


 美しい和柄の衣装。


 そして、人よりも長く尖った耳。


 ダークエルフだ。


 盗賊たちに囲まれているにもかかわらず、その表情に焦りは見えなかった。


 盗賊の一人が叫ぶ。


「まずい! 騎士団だ!」


 女性は静かに地面へ手を触れた。


 次の瞬間、地面が大きく揺れる。


「(錬成)」


「なっ!?」


 盛り上がった土が盗賊の足を覆い、そのまま拘束した。


 リシェルが目を見開く。


「錬金術……?」


 女性は静かに微笑んだ。


「助かります。」


◇


 リシェルはすぐに女性のもとへ駆け寄った。


「大丈夫ですか?」


「ええ。問題ありません。」


 悠真たちも剣を抜く。


「ミリア!」


「了解であります!」


 ミリアが素早く敵陣へ飛び込む。


 フィルは風魔法で敵の動きを乱した。


「ウィンド。」


 女性は近くの木へそっと手を当てる。


「(錬成)」


 枝が大きく伸び、盗賊たちの腕や足へ絡みついた。


「うわっ!」


「動けねぇ!」


 悠真も次々と盗賊を無力化していく。


 そして、最後に残ったのは頭領だけだった。


 リシェルの剣が鋭く閃く。


「くっ!」


 頭領が大きく体勢を崩した。


 その一瞬を、女性は見逃さなかった。


「(錬成)」


 盛り上がった土が頭領の足元を覆う。


「なっ!?」


 リシェルは静かに剣を突きつけた。


「終わりです。」


 頭領は力なく剣を落とした。


◇


「ありがとうございました。」


 女性は深々と頭を下げた。


「わたしはツバキと申します。」


「俺は悠真。」


「私はリシェルです。」


「フィルです。」


「ミリアであります!」


 ツバキは穏やかに微笑んだ。


◇


 午後になり、ミリアは騎士団を連れて戻ってきた。


 盗賊たちは騎士団へ引き渡され、一行は街へ戻ることになった。


◇


 街の食堂。


 ツバキは改めて頭を下げた。


「皆さん、本当にありがとうございました。」

 

「気にしなくていいよ。」


 悠真が答えると、ツバキは優しく微笑んだ。


「わたしは連合国から故郷へ戻る途中だったのです。」


「故郷?」


「ええ。ダークエルフの国です。」


 悠真の目が輝く。


「行ってみたいな。」


 フィルも頷いた。


 悠真はツバキへ視線を向けた。


「よかったら、一緒に行きませんか?」


 ツバキは穏やかに微笑む。


「もちろんです。こちらこそ、よろしくお願いします。」


 そして、小さく首を傾げた。


「ですが、皆さんはどこかへ向かう予定があったのではありませんか?」


 悠真は笑った。


「連合国へ行く予定だったけど、何も決めてなくてね。」


「とりあえず連合国へ行って、それから考えるつもりだったんだ。」


「でも、これで最初に行きたい場所が決まったよ。」


「ダークエルフの国だ。」


 ツバキは少し驚いたような表情を浮かべた。


「わたしの故郷ですか?」


「ああ。」


 フィルも嬉しそうに頷く。


「それに、土の神殿もありますからね。」


 ツバキは静かに微笑んだ。


「たしかに、私の国には土の神殿があります。」


「それは、楽しみだ。」


「それでは、ご案内しますね。」


 その言葉を聞いたリシェルは、ほんの少しだけ寂しそうな表情を浮かべた。


 すると、ツバキが優しく笑う。


「安心してください。」


「え?」


「わたしは故郷で子供が待っているので、会いに帰るだけなんです。」


 リシェルは、ほっとしたように息を吐いた。


 その様子を見て、フィルとミリアは顔を見合わせる。


「……。」


「……。」


 リシェルは何事もなかったかのように立ち上がった。


「とりあえず、宿へ戻りましょう。」


◇


「少しいいか?」


 夜になり、リシェルが悠真の部屋を訪れた。


「ああ。」


 リシェルは、いつものように微笑んだ。


「明日からは別々の行動ですね。」


「そうだな……。」


「……少し寂しいですね。」


 悠真は驚いた。


 リシェルが、そんな言葉を口にするとは思わなかったからだ。


「でも、約束しましたから。」


「ああ。」


「また会えます。」


「もちろんだ。」


 リシェルは小さく頷いた。


「では、目を閉じてください。」


「え?」


「いいから。」


 悠真が目を閉じる。


 次の瞬間。


 柔らかな感触が頬に触れた。


「……え?」


 目を開けたときには、リシェルは扉の前に立っていた。


「また会いましょう。」


「リシェル――」


 しかし、彼女は振り返ることなく部屋を出ていった。


◇


 悠真は、そっと頬に触れた。


「……何だったんだ。」


 胸の鼓動が、少しだけ速い。


 それが何を意味するのか、悠真にはまだ分からなかった。


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