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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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妖精の友

第29話「妖精の友」


 柔らかな風が森を吹き抜けていく。


 精霊たちは嬉しそうに空を舞い、花々は美しく咲き誇っていた。


『ありがとうございました。』


『森を救ってくれて、ありがとうございます。』


 小さな精霊たちが悠真たちの周りを飛び回る。


 フィルは嬉しそうに笑った。


「元気になったみたいですね。」


「ああ。」


 リシェルも穏やかな表情を浮かべている。



『お礼をしたいのです。』


 そう言うと、精霊たちは木の実や果物を運び始めた。


「これは……。」


「昼食みたいですね。」


 フィルが目を輝かせる。


 大きな葉が皿の代わりになり、色鮮やかな果実が並べられていく。


『どうぞ。』


「いただきます。」


 三人は笑顔で手を合わせた。


「甘いですね。」


「本当だ。」


 リシェルも驚いたように目を見開く。


「初めて食べる味です。」


 その言葉に、精霊たちは嬉しそうに笑った。



 食事が終わると、一際大きな光が悠真の前へ現れた。


『あなたは、わたしたちの友です。』


 光の中から、小さな銀色の鈴が現れる。


『どうか受け取ってください。』


「これは?」


『妖精の友の証です。』


『世界中の妖精の森で、あなたを友として迎えてくれるでしょう。』


 悠真は鈴を受け取った。


 すると、鈴は優しい光を放つ。


「ありがとう。」


『こちらこそ。』



 妖精たちに別れを告げ、三人は再び旅を始めた。


 やがて、石造りの門が見えてくる。


「着きました。」


「次の中継地点か。」


 街の入口には、見慣れた紋章が掲げられていた。


「王都騎士団ですね。」


 リシェルが小さく頷く。


「どうやら先に到着していたようです。」


 すると、一人の女性がこちらへ駆け寄ってきた。


「リシェル隊長!」


 茶色のショートヘアを揺らしながら、少女は勢いよく敬礼する。


「ミリア。」


「ご無事で何よりであります!」


「ええ。」


 少女――ミリアは、ぱっと悠真へ視線を向けた。


「こちらの方が悠真さんでありますか!」


「え?」


「隊長からお話は聞いているであります!」


 リシェルが少し慌てた表情を見せる。


「ミリア。」


「おっと、失礼したであります。」


 今度はフィルへ顔を向ける。


「はじめましてであります!」


「はじめまして。」


「僕はミリアであります!」


「私はフィルです。」


「おおっ!」


「?」


「同じくらいの年頃であります!」


 フィルはくすりと笑った。


「そうですね。」



 夕方。


 四人は街の食堂へ集まっていた。


「盗賊の足取りは、まだつかめていないのであります。」


「そうですか。」


「ですが、目撃情報は増えているであります。」


 リシェルは真剣な表情で頷いた。


「油断はできませんね。」


 すると、ミリアが悠真を見つめた。


「ところで、その防具は少し心もとないであります。」


「そうか?」


「そうであります!」


 フィルも頷いた。


「私もそう思います。」


 悠真は苦笑した。



 食事を終えると、ミリアが突然立ち上がった。


「決めたであります!」


「何をですか?」


「隊長と悠真さんは、防具を見てきてください!」


「え?」


「私とフィルさんは街を見て回るであります!」


 フィルも笑顔で頷いた。


「そうしましょう。」


「ちょっと待ってくれ。」


「駄目であります。」


「駄目です。」


 二人は息ぴったりだった。



 防具店の中には、剣や鎧が並んでいた。


 リシェルは真剣な表情で棚を見つめている。


「こちらはどうでしょうか。」


「軽そうだな。」


「悠真には、こちらのほうが似合うと思います。」


「そうか?」


「はい。」


 リシェルは少しだけ微笑んだ。


「どうしてそう思ったんだ?」


「え?」


「いや、気になってな。」


リシェルは少し考え込んだ。


「動きやすいほうが、あなたらしいと思います。」


「よくお似合いですよ。」


「わかった。ありがとう。」



 宿へ向かう夜道。


 街灯の明かりが石畳を照らしていた。


「今日は楽しかったな。」


「ええ。」


 リシェルは優しく微笑む。


「ミリアも元気そうでした。」


「ああ。」


 少しだけ沈黙が流れる。


「……悠真。」


「ん?」


「また、妖精の森へ行きたいですか?」


 悠真は夜空を見上げた。


「妖精の森だけじゃない。」


「え?」


「この世界を旅して、いろいろな場所を見て回るつもりだよ。」


 リシェルは静かに耳を傾ける。


「森も、湖も、山も、海も、いろんな人たち。」


「そうですね。」


「それで、いいと思った場所があったら――」


 悠真は少しだけ笑った。


「リシェルにも見せたい。」


 リシェルは目を見開いた。


「わたしに、ですか?」


「ああ。」


「でも、わたしは騎士ですから。」


「休暇くらいあるんだろ?」


「ありますが……。」


「だったら、そのときに行こう。」


 リシェルはしばらく黙り込んだ。


「どうした?」


「……いえ。」


 そして、優しく微笑んだ。


「約束ですよ。」


「約束だ。」



 宿へ到着する。


「それでは、おやすみなさい。」


「ああ、おやすみ。」


 リシェルは部屋へ入ろうとして、ふと立ち止まった。


「悠真。」


「どうした?」


「……今日は、ありがとうございました。」


「俺は何もしてないぞ。」


「そんなことはありません。」


 リシェルは嬉しそうに微笑んだ。


「また、明日もよろしくお願いします。」


「ああ。」


 扉が静かに閉まる。


 その向こうで、リシェルはそっと胸に手を当てていた。


 そして、悠真は最後まで、その意味に気づかなかった。


挿絵(By みてみん)

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