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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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妖精の友


 柔らかな風が森を吹き抜けていく。


 精霊たちは嬉しそうに空を舞い、花々は美しく咲き誇っていた。


『ありがとうございました。』


『森を救ってくれて、ありがとうございます。』


 小さな精霊たちが悠真たちの周りを飛び回る。


 フィルは嬉しそうに笑った。


「元気になったみたいですね。」


「ああ。」


 リシェルも穏やかな表情を浮かべている。


◇


『お礼をしたいのです。』


 そう言うと、精霊たちは木の実や果物を運び始めた。


「これは……。」


「昼食みたいですね。」


 フィルが目を輝かせる。


 大きな葉が皿の代わりになり、色鮮やかな果実が並べられていく。


『どうぞ。』


「いただきます。」


 三人は笑顔で手を合わせた。


「甘いですね。」


「本当だ。」


 リシェルも驚いたように目を見開く。


「初めて食べる味です。」


 その言葉に、精霊たちは嬉しそうに笑った。


◇


 食事が終わると、一際大きな光が悠真の前へ現れた。


『あなたは、わたしたちの友です。』


 光の中から、小さな銀色の鈴が現れる。


『どうか受け取ってください。』


「これは?」


『妖精の友の証です。』


『世界中の妖精の森で、あなたを友として迎えてくれるでしょう。』


 悠真は鈴を受け取った。


 すると、鈴は優しい光を放つ。


「ありがとう。」


『こちらこそ。』


◇


 妖精たちに別れを告げ、三人は再び旅を始めた。


 やがて、石造りの門が見えてくる。


「着きました。」


「次の中継地点か。」


 街の入口には、見慣れた紋章が掲げられていた。


「王都騎士団ですね。」


 リシェルが小さく頷く。


「どうやら先に到着していたようです。」


 すると、一人の女性がこちらへ駆け寄ってきた。


「リシェル隊長!」


 茶色のショートヘアを揺らしながら、少女は勢いよく敬礼する。


「ミリア。」


「ご無事で何よりであります!」


「ええ。」


 少女――ミリアは、ぱっと悠真へ視線を向けた。


「こちらの方が悠真さんでありますか!」


「え?」


「隊長からお話は聞いているであります!」


 リシェルが少し慌てた表情を見せる。


「ミリア。」


「おっと、失礼したであります。」


 今度はフィルへ顔を向ける。


「はじめましてであります!」


「はじめまして。」


「僕はミリアであります!」


「私はフィルです。」


「おおっ!」


「?」


「同じくらいの年頃であります!」


 フィルはくすりと笑った。


「そうですね。」


◇


 夕方。


 四人は街の食堂へ集まっていた。


「盗賊の足取りは、まだつかめていないのであります。」


「そうですか。」


「ですが、目撃情報は増えているであります。」


 リシェルは真剣な表情で頷いた。


「油断はできませんね。」


 すると、ミリアが悠真を見つめた。


「ところで、その防具は少し心もとないであります。」


「そうか?」


「そうであります!」


 フィルも頷いた。


「私もそう思います。」


 悠真は苦笑した。


◇


 食事を終えると、ミリアが突然立ち上がった。


「決めたであります!」


「何をですか?」


「隊長と悠真さんは、防具を見てきてください!」


「え?」


「私とフィルさんは街を見て回るであります!」


 フィルも笑顔で頷いた。


「そうしましょう。」


「ちょっと待ってくれ。」


「駄目であります。」


「駄目です。」


 二人は息ぴったりだった。


◇


 防具店の中には、剣や鎧が並んでいた。


 リシェルは真剣な表情で棚を見つめている。


「こちらはどうでしょうか。」


「軽そうだな。」


「悠真には、こちらのほうが似合うと思います。」


「そうか?」


「はい。」


 リシェルは少しだけ微笑んだ。


「どうしてそう思ったんだ?」


「え?」


「いや、気になってな。」


リシェルは少し考え込んだ。


「動きやすいほうが、あなたらしいと思います。」


「よくお似合いですよ。」


「わかった。ありがとう。」


◇


 宿へ向かう夜道。


 街灯の明かりが石畳を照らしていた。


「今日は楽しかったな。」


「ええ。」


 リシェルは優しく微笑む。


「ミリアも元気そうでした。」


「ああ。」


 少しだけ沈黙が流れる。


「……悠真。」


「ん?」


「また、妖精の森へ行きたいですか?」


 悠真は夜空を見上げた。


「妖精の森だけじゃない。」


「え?」


「この世界を旅して、いろいろな場所を見て回るつもりだよ。」


 リシェルは静かに耳を傾ける。


「森も、湖も、山も、海も、いろんな人たち。」


「そうですね。」


「それで、いいと思った場所があったら――」


 悠真は少しだけ笑った。


「リシェルにも見せたい。」


 リシェルは目を見開いた。


「わたしに、ですか?」


「ああ。」


「でも、わたしは騎士ですから。」


「休暇くらいあるんだろ?」


「ありますが……。」


「だったら、そのときに行こう。」


 リシェルはしばらく黙り込んだ。


「どうした?」


「……いえ。」


 そして、優しく微笑んだ。


「約束ですよ。」


「約束だ。」


◇


 宿へ到着する。


「それでは、おやすみなさい。」


「ああ、おやすみ。」


 リシェルは部屋へ入ろうとして、ふと立ち止まった。


「悠真。」


「どうした?」


「……今日は、ありがとうございました。」


「俺は何もしてないぞ。」


「そんなことはありません。」


 リシェルは嬉しそうに微笑んだ。


「また、明日もよろしくお願いします。」


「ああ。」


 扉が静かに閉まる。


 その向こうで、リシェルはそっと胸に手を当てていた。


 そして、悠真は最後まで、その意味に気づかなかった。


挿絵(By みてみん)

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