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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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初めての野営

朝日が窓から差し込み、鳥たちのさえずりが聞こえてくる。


 悠真たちは村長の家で朝食を済ませ、旅支度を整えていた。


「もう出発されるのですか?」


 村長が少し寂しそうに尋ねる。


「はい。」


「お世話になりました。」


 リシェルが頭を下げると、フィルも慌てて続いた。


「ありがとうございました!」


 家の外へ出ると、多くの村人たちが集まっていた。


「また来てくださいね!」


「リシェル様、約束ですよ!」


 子どもたちが元気いっぱいに手を振る。


 リシェルも優しく微笑んだ。


「ええ。また来ます。」


 悠真たちは馬車へ乗り込み、再び連合国へ向けて出発した。



 広大な草原を馬車が進んでいく。


 空は青く、風は心地よく、旅日和だった。


 時折、小型の魔物が現れることもあったが、大きな問題にはならなかった。


「順調ですね。」


 フィルが笑顔を浮かべる。


「ああ。」


「そうですね。」


 リシェルも頷いた。


 そして、太陽が高く昇った頃、悠真は馬車を止めた。


「昼にしよう。」


「賛成です!」


「わたしもです。」


 三人は木陰へ移動した。


 悠真はアイテムボックスを開く。


 すると、次々と見慣れない道具が現れた。


 鍋。


 包丁。


 まな板。


 食器。


 そして、折りたたみ式の椅子と机。


 フィルが固まった。


「……何ですか、それらは。」


「ん?」


「それです!」


 悠真は首を傾げた。


「アウトドアグッズだよ。」


 フィルは真剣な顔になった。


「そんなわけ……。」


 しかし、何かを言いかけて、諦めたように首を振った。


「……もういいです。」


 リシェルは少し慣れた様子で笑っていた。


「相変わらず、不思議な道具ですね。」


「そうか?」


「そうですよ。」


 そう言いながらも、見慣れない材質の椅子を興味深そうに眺めていた。



 役割分担も決まった。


 悠真は料理。


 リシェルはホーンラビットの解体。


 フィルは火の管理だ。


「よし。」


 鍋の中で、香ばしい匂いが広がっていく。


「いい香りですね。」


「シチューだからな。」


 リシェルは感心したように頷いた。


「料理人になれそうですね。」


「それは困るな。」


「どうしてですか?」


「本業じゃないから。」


 三人は顔を見合わせて笑った。


 そして、穏やかな昼食の時間を過ごした。



 再び旅が始まった。


 夕方になる頃、一行は川へたどり着く。


「きれいですね。」


 フィルが嬉しそうに言った。


 透き通った水が、夕日に照らされて輝いている。


「少し水浴びをしませんか?」


「いいですね。」


 リシェルも頷いた。


 悠真は立ち上がる。


「じゃあ、俺は向こうへ行くよ。」


「え?」


「え?」


「いや、別々だろ?」


 二人は顔を見合わせた。


「……?」


「……?」


 悠真は首を傾げながら、上流へ向かって歩き出した。



 そのときだった。


「きゃあっ!」


 鋭い悲鳴が響く。


 悠真は剣を抜き、駆け出した。


「大丈夫か!」


 勢いよく飛び出した悠真は、その場で固まった。


 そこには、水生の魔物を倒し終えたリシェルとフィルの姿があった。


「終わりました。」


「終わりました!」


「……そうか。」


 沈黙が流れる。


 さらに沈黙が流れる。


 そして――。


「悠真。」


「何だ?」


「……後ろを向いてください。」


「分かった。」


 悠真は素直に後ろを向いた。



 その後、三人は無言で野営の準備を進めていた。


 悠真は気まずそうに頭をかいた。


「夕飯にするか。」


「そうですね。」


「そうしましょう。」


 悠真は鍋を取り出した。


 リシェルの瞳が輝く。


「今日は何を作るんですか?」


「カレー。」


「カレーです。」


「知ってるのか?」


「もちろんです。」


 フィルは首を傾げた。


「何ですか、それは?」


「食べれば分かる。」


 しばらくして、香辛料の香りが辺りに広がった。


「すごい香りです……。」


 フィルは目を丸くした。


 そして、一口。


「おいしいです!」


「だろ?」


「こんな料理、初めてです!」


 悠真は笑った。


 リシェルも嬉しそうに微笑んでいた。


 いつの間にか、昼間の気まずい空気は消えていた。



 食事を終えると、悠真は新しく手に入れたスキルを試すことにした。


「《結界》」


 淡い光が広がり、三人を包み込む。


「これは……。」


 リシェルが驚いた表情を浮かべる。


「新しい力ですか?」


「ああ。」


リシェルは周囲を見回した。


「騎士団でも、野営の際には結界の魔道具を使うことがあります。」


「魔道具?」


「はい。魔力を流し込むことで結界を展開するんです。」


すると、フィルが胸を張った。


「わたしも持っていますよ!」


フィルは、小さな水晶を取り出した。


「アルマさんにもらったんです。」


「へえ。」


「旅に出るなら必要じゃろうって言っていました。」


「なるほど。」


フィルは、にこにこしながら言った。


「でも、悠真さんは使わないみたいですね。」


「そうだな。」


「はいはい。」


フィルは肩をすくめた。


「もう驚きません。」


「そうか?」


「少しだけです。」


悠真は小さく笑った。



 そして、その夜。


 三人は同じテントの中で眠ることになった。


 静かな夜だった。


 川のせせらぎが聞こえる。


 風が優しく草原を揺らしている。


 けれど、誰もすぐには眠れなかった。


 悠真は天井を見つめる。


 リシェルは毛布を頭までかぶる。


 フィルはニヤニヤしていた。


「何も言いませんよ。」


「言っているようなものです。」


「そうですね。」


「言わないでください。」


 その夜、草原には三人の笑い声が響いていた。


 こうして、三人の初めての野営は静かに幕を閉じた。

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