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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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初めての野営

朝日が窓から差し込み、鳥たちのさえずりが聞こえてくる。


 悠真たちは村長の家で朝食を済ませ、旅支度を整えていた。


「もう出発されるのですか?」


 村長が少し寂しそうに尋ねる。


「はい。」


「お世話になりました。」


 リシェルが頭を下げると、フィルも慌てて続いた。


「ありがとうございました!」


 家の外へ出ると、多くの村人たちが集まっていた。


「また来てくださいね!」


「リシェル様、約束ですよ!」


 子どもたちが元気いっぱいに手を振る。


 リシェルも優しく微笑んだ。


「ええ。また来ます。」


 悠真たちは馬車へ乗り込み、再び連合国へ向けて出発した。


◇


 広大な草原を馬車が進んでいく。


 空は青く、風は心地よく、旅日和だった。


 時折、小型の魔物が現れることもあったが、大きな問題にはならなかった。


「順調ですね。」


 フィルが笑顔を浮かべる。


「ああ。」


「そうですね。」


 リシェルも頷いた。


 そして、太陽が高く昇った頃、悠真は馬車を止めた。


「昼にしよう。」


「賛成です!」


「わたしもです。」


 三人は木陰へ移動した。


 悠真はアイテムボックスを開く。


 すると、次々と見慣れない道具が現れた。


 鍋。


 包丁。


 まな板。


 食器。


 そして、折りたたみ式の椅子と机。


 フィルが固まった。


「……何ですか、それらは。」


「ん?」


「それです!」


 悠真は首を傾げた。


「アウトドアグッズだよ。」


 フィルは真剣な顔になった。


「そんなわけ……。」


 しかし、何かを言いかけて、諦めたように首を振った。


「……もういいです。」


 リシェルは少し慣れた様子で笑っていた。


「相変わらず、不思議な道具ですね。」


「そうか?」


「そうですよ。」


 そう言いながらも、見慣れない材質の椅子を興味深そうに眺めていた。


◇


 役割分担も決まった。


 悠真は料理。


 リシェルはホーンラビットの解体。


 フィルは火の管理だ。


「よし。」


 鍋の中で、香ばしい匂いが広がっていく。


「いい香りですね。」


「シチューだからな。」


 リシェルは感心したように頷いた。


「料理人になれそうですね。」


「それは困るな。」


「どうしてですか?」


「本業じゃないから。」


 三人は顔を見合わせて笑った。


 そして、穏やかな昼食の時間を過ごした。


◇


 再び旅が始まった。


 夕方になる頃、一行は川へたどり着く。


「きれいですね。」


 フィルが嬉しそうに言った。


 透き通った水が、夕日に照らされて輝いている。


「少し水浴びをしませんか?」


「いいですね。」


 リシェルも頷いた。


 悠真は立ち上がる。


「じゃあ、俺は向こうへ行くよ。」


「え?」


「え?」


「いや、別々だろ?」


 二人は顔を見合わせた。


「……?」


「……?」


 悠真は首を傾げながら、上流へ向かって歩き出した。


◇


 そのときだった。


「きゃあっ!」


 鋭い悲鳴が響く。


 悠真は剣を抜き、駆け出した。


「大丈夫か!」


 勢いよく飛び出した悠真は、その場で固まった。


 そこには、水生の魔物を倒し終えたリシェルとフィルの姿があった。


「終わりました。」


「終わりました!」


「……そうか。」


 沈黙が流れる。


 さらに沈黙が流れる。


 そして――。


「悠真。」


「何だ?」


「……後ろを向いてください。」


「分かった。」


 悠真は素直に後ろを向いた。


◇


 その後、三人は無言で野営の準備を進めていた。


 悠真は気まずそうに頭をかいた。


「夕飯にするか。」


「そうですね。」


「そうしましょう。」


 悠真は鍋を取り出した。


 リシェルの瞳が輝く。


「今日は何を作るんですか?」


「カレー。」


「カレーです。」


「知ってるのか?」


「もちろんです。」


 フィルは首を傾げた。


「何ですか、それは?」


「食べれば分かる。」


 しばらくして、香辛料の香りが辺りに広がった。


「すごい香りです……。」


 フィルは目を丸くした。


 そして、一口。


「おいしいです!」


「だろ?」


「こんな料理、初めてです!」


 悠真は笑った。


 リシェルも嬉しそうに微笑んでいた。


 いつの間にか、昼間の気まずい空気は消えていた。


◇


 食事を終えると、悠真は新しく手に入れたスキルを試すことにした。


「《結界》」


 淡い光が広がり、三人を包み込む。


「これは……。」


 リシェルが驚いた表情を浮かべる。


「新しい力ですか?」


「ああ。」


リシェルは周囲を見回した。


「騎士団でも、野営の際には結界の魔道具を使うことがあります。」


「魔道具?」


「はい。魔力を流し込むことで結界を展開するんです。」


すると、フィルが胸を張った。


「わたしも持っていますよ!」


フィルは、小さな水晶を取り出した。


「アルマさんにもらったんです。」


「へえ。」


「旅に出るなら必要じゃろうって言っていました。」


「なるほど。」


フィルは、にこにこしながら言った。


「でも、悠真さんは使わないみたいですね。」


「そうだな。」


「はいはい。」


フィルは肩をすくめた。


「もう驚きません。」


「そうか?」


「少しだけです。」


悠真は小さく笑った。


◇


 そして、その夜。


 三人は同じテントの中で眠ることになった。


 静かな夜だった。


 川のせせらぎが聞こえる。


 風が優しく草原を揺らしている。


 けれど、誰もすぐには眠れなかった。


 悠真は天井を見つめる。


 リシェルは毛布を頭までかぶる。


 フィルはニヤニヤしていた。


「何も言いませんよ。」


「言っているようなものです。」


「そうですね。」


「言わないでください。」


 その夜、草原には三人の笑い声が響いていた。


 こうして、三人の初めての野営は静かに幕を閉じた。

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