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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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旅のはじまり

朝日を浴びながら、馬車は街道を進んでいた。


 御者台にはフィルが座り、楽しそうに手綱を握っている。


「順調ですね!」


「ああ。」


「ええ。」


 王都を出てから、まだ数時間ほどしか経っていない。


 けれど、悠真には景色がまったく違って見えた。


 街道の両側には広大な草原が広がり、遠くには深い森が見える。


 そして、その先には大きな湖が輝いていた。


「きれいだな。」


「この湖は、昔から旅人の休憩場所として知られているんです。」


 リシェルが穏やかに微笑んだ。


 湖のほとりでは、子どもたちが元気いっぱいに遊んでいた。


「リシェル様!」


「また来てくれたんだ!」


 リシェルは優しく笑う。


「みんな、気をつけて遊ぶんだよ。」


「はーい!」


「分かりましたー!」


 子どもたちは元気よく返事をした。


 悠真は少し驚いた表情を浮かべる。


「ずいぶん慕われているんだな。」


「そうでしょうか。」


「そうだよ。」


 フィルも笑った。


「リシェルさんは有名人ですから。」


 リシェルは少し照れくさそうに笑った。


◇


 そのときだった。


「きゃあっ!」


 鋭い悲鳴が響いた。


 悠真とリシェルの表情が変わる。


「フィル!」


「はい!」


 フィルは素早く馬車を止めた。


 悠真とリシェルは、すぐに声のした方向へ駆け出した。


 すると、一人の少女が必死に逃げている姿が見えた。


 その後ろには、一頭の大きなボアがいる。


 その瞬間――。


⸻


【緊急クエスト発生】


村娘を救え。


報酬:???


⸻


「危ない!」


 リシェルは一気に距離を詰め、少女を抱きかかえた。


 ボアは勢いよく突進してくる。


 悠真は静かに剣を抜いた。


「悪いな。」


 一閃。


 鋭い音が響く。


 次の瞬間、ボアは地面へ倒れ込んだ。


 静寂が訪れる。


「もう大丈夫だ。」


 悠真が声をかける。


 リシェルも優しく微笑んだ。


「怪我はありませんか?」


 少女は涙目のまま頷いた。


「は、はい……。」


「どうして、こんな場所にいたんですか?」


「木の実を採りに来たんです。」


 リシェルは倒れたボアへ視線を向けた。


「この時期は繁殖期なんです。」


「繁殖期?」


「ええ。普段は、ここまで気が荒い魔物ではないのですが……。」


「運悪く遭遇したってわけか。」


「そういうことですね。」


◇


 そこへフィルが駆け寄ってきた。


「大丈夫でしたか?」


「ああ。」


「問題ありません。」


 フィルは倒れたボアを見つめた。


「少し大きいですね。」


「そうだな。」


「夕飯の食材が手に入りましたね。」


 悠真とリシェルは顔を見合わせた。


 そして、同時に笑う。


「確かに。」


「そうですね。」


 少女は不思議そうに首を傾げていた。


◇


 三人は少女と一緒に木の実を集め、そのまま村まで送り届けた。


 日が沈む頃には、村中がお祭りのような賑わいに包まれていた。


 広場の中央では、大きな焚き火が燃えている。


 そして、その上では巨大なボアが豪快に焼かれていた。


「すごいですね……。」


 フィルが目を輝かせる。


 悠真たちも、ようやく一息ついていた。


 その瞬間だった。


⸻


【緊急クエスト達成】


村娘を救え。


報酬:《結界》


【新たなスキルを獲得しました】


《結界》


半径十メートル以内に結界を展開します。


悪意を持つ存在の侵入を防ぎます。


ただし、自身よりも強力な存在の侵入を防ぐことはできません。


その場合でも、侵入を察知することは可能です。


⸻


(結界か……。)


 悠真は小さく息をついた。


「どうかしましたか?」


 リシェルが尋ねる。


「いや。」


 悠真は小さく笑った。


 子どもたちも楽しそうに走り回っていた。


「リシェル様!」


「お姉ちゃん!」


 子どもたちが笑顔で駆け寄る。


 リシェルは優しく微笑んだ。


「みんな、元気そうですね。」


 やがて、昼間に助けた少女と、その両親が近づいてきた。


「本当にありがとうございました。」


「ありがとうございました。」


 リシェルは静かに首を横に振る。


「無事で何よりです。」


 すると、フィルが嬉しそうに笑った。


「おかげで、美味しいものにもありつけました。」


「フィル。」


「本当のことですよ?」


 悠真は思わず笑った。


 リシェルも小さく笑う。


 穏やかな時間が流れていた。


◇


 その夜、三人は村長の家に泊まることになった。


 フィルは布団へ潜り込むと、隣にいるリシェルを見つめた。


「初めてですね。」


「何がですか?」


「こうして仲間と一緒に旅をするのは。」


「そうですね。」


 フィルは嬉しそうに笑った。


「友達と一緒にお泊まりするのも初めてなんです。」


 リシェルは優しく微笑んだ。


「そうだったんですね。」


「はい。」


 そして、フィルはニヤニヤしながら口を開いた。


「そういえば――。」


「はい?」


「悠真さんのどこが好きなんですか?」


 リシェルが固まった。


「えっ?」


「いつから好きなんですか?」


「なっ……。」


 リシェルの顔が真っ赤になる。


「わ、わたしは寝ます!」


「はいはい。」


 フィルは笑った。


「分かりましたよ。」


 リシェルは毛布を頭までかぶった。


◇


 一方、その頃。


 悠真は窓の外を見つめていた。


 王都を出て、初めての夜。


 これから待っている景色。


 まだ見ぬ仲間たち。


 楽しいこともあるだろう。


 大変なこともあるだろう。


 けれど――。


「楽しみだな。」


 悠真は静かに目を閉じた。


 こうして、三人の旅の最初の一日が終わった。

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