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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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旅のはじまり

朝日を浴びながら、馬車は街道を進んでいた。


 御者台にはフィルが座り、楽しそうに手綱を握っている。


「順調ですね!」


「ああ。」


「ええ。」


 王都を出てから、まだ数時間ほどしか経っていない。


 けれど、悠真には景色がまったく違って見えた。


 街道の両側には広大な草原が広がり、遠くには深い森が見える。


 そして、その先には大きな湖が輝いていた。


「きれいだな。」


「この湖は、昔から旅人の休憩場所として知られているんです。」


 リシェルが穏やかに微笑んだ。


 湖のほとりでは、子どもたちが元気いっぱいに遊んでいた。


「リシェル様!」


「また来てくれたんだ!」


 リシェルは優しく笑う。


「みんな、気をつけて遊ぶんだよ。」


「はーい!」


「分かりましたー!」


 子どもたちは元気よく返事をした。


 悠真は少し驚いた表情を浮かべる。


「ずいぶん慕われているんだな。」


「そうでしょうか。」


「そうだよ。」


 フィルも笑った。


「リシェルさんは有名人ですから。」


 リシェルは少し照れくさそうに笑った。



 そのときだった。


「きゃあっ!」


 鋭い悲鳴が響いた。


 悠真とリシェルの表情が変わる。


「フィル!」


「はい!」


 フィルは素早く馬車を止めた。


 悠真とリシェルは、すぐに声のした方向へ駆け出した。


 すると、一人の少女が必死に逃げている姿が見えた。


 その後ろには、一頭の大きなボアがいる。


 その瞬間――。



【緊急クエスト発生】


村娘を救え。


報酬:???



「危ない!」


 リシェルは一気に距離を詰め、少女を抱きかかえた。


 ボアは勢いよく突進してくる。


 悠真は静かに剣を抜いた。


「悪いな。」


 一閃。


 鋭い音が響く。


 次の瞬間、ボアは地面へ倒れ込んだ。


 静寂が訪れる。


「もう大丈夫だ。」


 悠真が声をかける。


 リシェルも優しく微笑んだ。


「怪我はありませんか?」


 少女は涙目のまま頷いた。


「は、はい……。」


「どうして、こんな場所にいたんですか?」


「木の実を採りに来たんです。」


 リシェルは倒れたボアへ視線を向けた。


「この時期は繁殖期なんです。」


「繁殖期?」


「ええ。普段は、ここまで気が荒い魔物ではないのですが……。」


「運悪く遭遇したってわけか。」


「そういうことですね。」



 そこへフィルが駆け寄ってきた。


「大丈夫でしたか?」


「ああ。」


「問題ありません。」


 フィルは倒れたボアを見つめた。


「少し大きいですね。」


「そうだな。」


「夕飯の食材が手に入りましたね。」


 悠真とリシェルは顔を見合わせた。


 そして、同時に笑う。


「確かに。」


「そうですね。」


 少女は不思議そうに首を傾げていた。



 三人は少女と一緒に木の実を集め、そのまま村まで送り届けた。


 日が沈む頃には、村中がお祭りのような賑わいに包まれていた。


 広場の中央では、大きな焚き火が燃えている。


 そして、その上では巨大なボアが豪快に焼かれていた。


「すごいですね……。」


 フィルが目を輝かせる。


 悠真たちも、ようやく一息ついていた。


 その瞬間だった。



【緊急クエスト達成】


村娘を救え。


報酬:《結界》


【新たなスキルを獲得しました】


《結界》


半径十メートル以内に結界を展開します。


悪意を持つ存在の侵入を防ぎます。


ただし、自身よりも強力な存在の侵入を防ぐことはできません。


その場合でも、侵入を察知することは可能です。



(結界か……。)


 悠真は小さく息をついた。


「どうかしましたか?」


 リシェルが尋ねる。


「いや。」


 悠真は小さく笑った。


 子どもたちも楽しそうに走り回っていた。


「リシェル様!」


「お姉ちゃん!」


 子どもたちが笑顔で駆け寄る。


 リシェルは優しく微笑んだ。


「みんな、元気そうですね。」


 やがて、昼間に助けた少女と、その両親が近づいてきた。


「本当にありがとうございました。」


「ありがとうございました。」


 リシェルは静かに首を横に振る。


「無事で何よりです。」


 すると、フィルが嬉しそうに笑った。


「おかげで、美味しいものにもありつけました。」


「フィル。」


「本当のことですよ?」


 悠真は思わず笑った。


 リシェルも小さく笑う。


 穏やかな時間が流れていた。



 その夜、三人は村長の家に泊まることになった。


 フィルは布団へ潜り込むと、隣にいるリシェルを見つめた。


「初めてですね。」


「何がですか?」


「こうして仲間と一緒に旅をするのは。」


「そうですね。」


 フィルは嬉しそうに笑った。


「友達と一緒にお泊まりするのも初めてなんです。」


 リシェルは優しく微笑んだ。


「そうだったんですね。」


「はい。」


 そして、フィルはニヤニヤしながら口を開いた。


「そういえば――。」


「はい?」


「悠真さんのどこが好きなんですか?」


 リシェルが固まった。


「えっ?」


「いつから好きなんですか?」


「なっ……。」


 リシェルの顔が真っ赤になる。


「わ、わたしは寝ます!」


「はいはい。」


 フィルは笑った。


「分かりましたよ。」


 リシェルは毛布を頭までかぶった。



 一方、その頃。


 悠真は窓の外を見つめていた。


 王都を出て、初めての夜。


 これから待っている景色。


 まだ見ぬ仲間たち。


 楽しいこともあるだろう。


 大変なこともあるだろう。


 けれど――。


「楽しみだな。」


 悠真は静かに目を閉じた。


 こうして、三人の旅の最初の一日が終わった。

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