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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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旅立ちの朝

柔らかな朝日が部屋を照らしていた。


 悠真はゆっくりと目を覚ます。


 居間へ向かうと、リシェルがいつものように朝食の準備をしていた。


「おはよう。」


「おはようございます。」


 焼きたてのパンの香りが部屋いっぱいに広がる。


 いつもと変わらない朝。


 けれど、今日は少しだけ違っていた。


 二人とも、旅支度を終えていたからだ。


「忘れ物はないか?」


「大丈夫です。」


「そうか。」


「悠真こそ、大丈夫ですか?」


「たぶんな。」


「たぶん、ですか?」


「アイテムボックスがあるからな。」


 リシェルは小さく笑った。


「それは反則です。」


 二人は顔を見合わせて笑う。


 そして、静かに家を出た。


 しかし、王都の門へ向かう途中、リシェルは足を止めた。


「どうした?」


「騎士団本部へ寄ります。」


「報告か?」


「はい。」


 リシェルは小さく頷いた。


「出発前のあいさつと、任務の最終確認です。」


◇


 王国騎士団本部。


 重厚な扉の前で、リシェルは静かに息をついた。


 そして、ゆっくりと扉を開く。


「失礼します。」


 執務机に向かっていた女性が顔を上げた。


 長い金色の髪。


 凛とした瞳。


 鋭い眼差しの奥に、優しさを宿した女性だった。


「おや、来たね。」


「はい。」


「出発前のご報告に参りました。」


「ああ。最終確認だね。」


 リシェルは頷いた。


「連合国へ続く交易路で発生している盗賊事件の調査。その件について、予定どおり出発します。」


「分かった。」


 女性は満足そうに頷いた。


 そして、悠真へ視線を向ける。


「そちらが例の冒険者かい?」


「例の?」


 悠真は首を傾げた。


「団長!」


 リシェルが慌てて声を上げる。


 女性は楽しそうに笑った。


「おや、違ったかい?」


「ち、違います!」


「なるほど。」


「団長!」


 悠真は状況が飲み込めず、首を傾げた。


 すると、リシェルは小さく咳払いをした。


「紹介します。」


「ん?」


「こちらは王国騎士団、セレスティア団長です。」


 悠真は驚いた表情を浮かべた。


「騎士団長だったのか。」


「はい。」


 リシェルは優しく微笑んだ。


「わたしの憧れの人です。」


「憧れ?」


「幼い頃、団長の剣を見たことがあるんです。」


 その瞳は、どこか懐かしそうだった。


「とても強くて、とても格好よくて……。」


「それで騎士になろうと思ったのか。」


「はい。」


 セレスティアは苦笑した。


「少し美化されすぎている気もするけれどね。」


「そんなことはありません。」


「まったく。」


 セレスティアは肩をすくめた。


「昔から真面目なんだよ、この子は。」


 そして、ふっと笑みを浮かべた。


「なるほどね。」


「何がですか?」


「だから、この任務を受けたわけか。」


「違います!」


「そうかい?」


「そうです!」


「おやおや。」


 リシェルの耳が真っ赤になった。


「団長……。」


 セレスティアは楽しそうに笑った。


「さて、本題に入ろうか。」


 その表情が、騎士団長のものへと変わる。


「連合国へ続く交易路で、不審な動きが確認されている件だ。」


「盗賊ですかね?」


「おそらくね。」


 セレスティアは机の上に地図を広げた。


「最近になって被害が急増している。」


「分かりました。」


「必ず帰ってくるんだよ。」


「もちろんです。」


「それから、応援が必要であれば、すぐに連絡をよこすように。」


「はい。」


「無理は禁物だよ。」


「承知しました。」


 そして、セレスティアは悠真へ視線を向けた。


「彼女を頼む。」


「分かりました。」


「よろしい。」


 そして――。


「剣の腕は一流なんだがね。」


 リシェルが嫌な予感を覚える。


「恋は苦手らしい。」


「だ、団長っ!」


 セレスティアの笑い声が、部屋いっぱいに響き渡った。


◇


 二人が騎士団本部を出ると、巨大な城門が見えてきた。


 その前には、一台の馬車が止まっていた。


「おはようございます!」


 満面の笑みを浮かべるフィルが、元気よく手を振っている。


「フィル。」


「おはよう。」


 悠真は馬車を見上げた。


「……これ、どうしたんだ?」


「アルマさんが譲ってくれたんです。」


「譲った?」


「旅に出るなら必要じゃろうって。」


「それだけじゃありません。」


 フィルは胸を張った。


「ちゃんと扱い方も教わりました!」


「馬車を扱えるのか?」


「はい!」


 すると、リシェルも頷いた。


「問題ありません。」


「リシェルも乗れるのか?」


「騎士団では乗馬の訓練もありますから。」


「なるほど。」


 悠真は思わず笑った。


「みんな準備がいいな。」


「悠真だけです。」


「否定できないな。」


 三人は顔を見合わせて笑った。


 そして、悠真は王都を振り返る。


 初めて訪れた街。


 初めてできた仲間。


 そして、大切な場所。


「行こうか。」


「はい!」


「ええ。」


 巨大な城門がゆっくりと開いていく。


 朝日が街道を照らし、その先には、まだ見ぬ世界が広がっていた。


 馬車がゆっくりと動き出す。


 風が吹く。


 旅立ちを祝福するかのように。


 こうして悠真たちは、最初の目的地である連合国へ向かった。

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