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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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旅立ちの朝

柔らかな朝日が部屋を照らしていた。


 悠真はゆっくりと目を覚ます。


 居間へ向かうと、リシェルがいつものように朝食の準備をしていた。


「おはよう。」


「おはようございます。」


 焼きたてのパンの香りが部屋いっぱいに広がる。


 いつもと変わらない朝。


 けれど、今日は少しだけ違っていた。


 二人とも、旅支度を終えていたからだ。


「忘れ物はないか?」


「大丈夫です。」


「そうか。」


「悠真こそ、大丈夫ですか?」


「たぶんな。」


「たぶん、ですか?」


「アイテムボックスがあるからな。」


 リシェルは小さく笑った。


「それは反則です。」


 二人は顔を見合わせて笑う。


 そして、静かに家を出た。


 しかし、王都の門へ向かう途中、リシェルは足を止めた。


「どうした?」


「騎士団本部へ寄ります。」


「報告か?」


「はい。」


 リシェルは小さく頷いた。


「出発前のあいさつと、任務の最終確認です。」



 王国騎士団本部。


 重厚な扉の前で、リシェルは静かに息をついた。


 そして、ゆっくりと扉を開く。


「失礼します。」


 執務机に向かっていた女性が顔を上げた。


 長い金色の髪。


 凛とした瞳。


 鋭い眼差しの奥に、優しさを宿した女性だった。


「おや、来たね。」


「はい。」


「出発前のご報告に参りました。」


「ああ。最終確認だね。」


 リシェルは頷いた。


「連合国へ続く交易路で発生している盗賊事件の調査。その件について、予定どおり出発します。」


「分かった。」


 女性は満足そうに頷いた。


 そして、悠真へ視線を向ける。


「そちらが例の冒険者かい?」


「例の?」


 悠真は首を傾げた。


「団長!」


 リシェルが慌てて声を上げる。


 女性は楽しそうに笑った。


「おや、違ったかい?」


「ち、違います!」


「なるほど。」


「団長!」


 悠真は状況が飲み込めず、首を傾げた。


 すると、リシェルは小さく咳払いをした。


「紹介します。」


「ん?」


「こちらは王国騎士団、セレスティア団長です。」


 悠真は驚いた表情を浮かべた。


「騎士団長だったのか。」


「はい。」


 リシェルは優しく微笑んだ。


「わたしの憧れの人です。」


「憧れ?」


「幼い頃、団長の剣を見たことがあるんです。」


 その瞳は、どこか懐かしそうだった。


「とても強くて、とても格好よくて……。」


「それで騎士になろうと思ったのか。」


「はい。」


 セレスティアは苦笑した。


「少し美化されすぎている気もするけれどね。」


「そんなことはありません。」


「まったく。」


 セレスティアは肩をすくめた。


「昔から真面目なんだよ、この子は。」


 そして、ふっと笑みを浮かべた。


「なるほどね。」


「何がですか?」


「だから、この任務を受けたわけか。」


「違います!」


「そうかい?」


「そうです!」


「おやおや。」


 リシェルの耳が真っ赤になった。


「団長……。」


 セレスティアは楽しそうに笑った。


「さて、本題に入ろうか。」


 その表情が、騎士団長のものへと変わる。


「連合国へ続く交易路で、不審な動きが確認されている件だ。」


「盗賊ですかね?」


「おそらくね。」


 セレスティアは机の上に地図を広げた。


「最近になって被害が急増している。」


「分かりました。」


「必ず帰ってくるんだよ。」


「もちろんです。」


「それから、応援が必要であれば、すぐに連絡をよこすように。」


「はい。」


「無理は禁物だよ。」


「承知しました。」


 そして、セレスティアは悠真へ視線を向けた。


「彼女を頼む。」


「分かりました。」


「よろしい。」


 そして――。


「剣の腕は一流なんだがね。」


 リシェルが嫌な予感を覚える。


「恋は苦手らしい。」


「だ、団長っ!」


 セレスティアの笑い声が、部屋いっぱいに響き渡った。



 二人が騎士団本部を出ると、巨大な城門が見えてきた。


 その前には、一台の馬車が止まっていた。


「おはようございます!」


 満面の笑みを浮かべるフィルが、元気よく手を振っている。


「フィル。」


「おはよう。」


 悠真は馬車を見上げた。


「……これ、どうしたんだ?」


「アルマさんが譲ってくれたんです。」


「譲った?」


「旅に出るなら必要じゃろうって。」


「それだけじゃありません。」


 フィルは胸を張った。


「ちゃんと扱い方も教わりました!」


「馬車を扱えるのか?」


「はい!」


 すると、リシェルも頷いた。


「問題ありません。」


「リシェルも乗れるのか?」


「騎士団では乗馬の訓練もありますから。」


「なるほど。」


 悠真は思わず笑った。


「みんな準備がいいな。」


「悠真だけです。」


「否定できないな。」


 三人は顔を見合わせて笑った。


 そして、悠真は王都を振り返る。


 初めて訪れた街。


 初めてできた仲間。


 そして、大切な場所。


「行こうか。」


「はい!」


「ええ。」


 巨大な城門がゆっくりと開いていく。


 朝日が街道を照らし、その先には、まだ見ぬ世界が広がっていた。


 馬車がゆっくりと動き出す。


 風が吹く。


 旅立ちを祝福するかのように。


 こうして悠真たちは、最初の目的地である連合国へ向かった。

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