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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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王都誕生祭

朝


朝日が差し込む部屋で、悠真はゆっくりと目を覚ます。


居間へ向かうと、リシェルがいつものように朝食の準備をしていた。


「おはよう。」


「おはようございます。」


いつもと同じ朝。


いつもと同じ会話。


けれど、どこか少しだけ違っていた。


二人とも、それに気づかないふりをしていた。


沈黙を破るように、リシェルが明るく微笑む。


「そういえば、今日は王都誕生祭なんです。」


「祭り?」


「はい。年に一度のお祭りですよ。」


「へえ。」


「屋台もたくさん出ていますから、街を回ってみるといいと思います。」


悠真は少し考えたあと、笑った。


「それなら、一緒に行かないか?」


リシェルは目を瞬かせる。


「昼間は巡回任務があります。」


「そうか。」


「ですが――。」


少しだけ嬉しそうに微笑んだ。


「夕方からでしたら。」


「じゃあ、決まりだな。」


「はい。」


⸻


昼


悠真は一人で祭りを見て回っていた。


ホーンラビットの串焼き。


光る果実の果実水。


スライムゼリー。


悠真にとっては見た事の無いものばかりだった。


旅に必要な道具を探しながら、露店をのぞいていく。


保存食。


ロープ。


毛布。


水袋。


調味料。


火打ち石。


さまざまな品物が並んでいた。


すると、聞き慣れた声が聞こえてきた。


「悠真さん!」


振り返ると、両手いっぱいに荷物を抱えたフィルが立っていた。


「フィル?」


「こんにちは!」


悠真は思わず笑った。


「何をしてるんだ?」


「旅の準備です!」


「ずいぶん買ったな。」


「必要だと思ったんです。」


そう言ってフィルは少し困ったように笑った。


「荷物がすごいことになりそうです。」


悠真は笑った。


「俺にはアイテムボックスがあるから大丈夫だ。」


「ずるいです!」


「フィルの分も入るから大丈夫だ。」


「えっ?」


「どうせ一緒に旅をするんだろ?」


フィルは嬉しそうに笑った。


「ありがとうございます。」


⸻


夕方


巡回任務を終えたリシェルが姿を現した。


悠真は思わず言葉を失った。


白を基調とした上品な服。


銀色の髪飾り。


夜空のように深い青色の宝石。


まるで、おとぎ話に登場する姫君のようだった。


「どうかしましたか?」


「いや……。」


悠真は慌てて視線をそらした。


「よく似合ってると思ってな。」


リシェルは目を丸くした。


そして、少しだけ頬を赤く染めた。


「ありがとうございます。」


その様子を見ていたフィルは、小さく笑った。


「私は明日からの旅の準備をしますね。」


「え?」


「今日は、お二人で楽しんできてください。」


そう言い残し、フィルは人混みの中へ消えていった。


⸻


夜


二人は祭りを楽しんだ。


音楽隊の演奏。


大道芸人の芸。


屋台の明かり。


王都は、いつも以上の賑わいを見せていた。


そして最後に、リシェルは悠真を城壁の上へ案内した。


「ここです。」


眼下には、美しい王都の夜景が広がっていた。


その瞬間――。


無数の光が夜空へ舞い上がった。


火の魔法。


光の魔法。


魔法師団が生み出した幻想的な光景が、夜空を鮮やかに彩る。


「きれいですね。」


「ああ。」


悠真は、夜空を見上げた。


旅に出る。


そう決めたはずなのに、この景色を見ていると、不思議と足が止まりそうになる。


リシェルは小さく微笑んだ。


「どちらへ向かうのですか?」


「とりあえず、連合国かな。」


「連合国ですか。」


「いろいろな種族が集まる国なんだろ?」


「ええ。」


その瞬間、リシェルは騎士団の報告書を思い出した。


連合国へ続く交易路。


最近、盗賊が出没しているという報告。


そして――。


ふわりと、柔らかな感触が背中に伝わった。


「リシェル?」


悠真が振り返ろうとする。


「駄目です。」


服の裾が、そっとつかまれる。


「今は、このままで。」


悠真は何も言わなかった。


小さな震えが、背中越しに伝わってきたからだ。


やがて、リシェルは静かに離れた。


そして、いつもの笑顔を浮かべる。


「明日は騎士団の任務があります。」


「任務?」


「連合国へ続く交易路で盗賊が出没しているのです。」


「そうなのか。」


「ですから、次の街までは同行します。」


「そうか。」


「はい。」


リシェルは優しく微笑んだ。


「まだ、お別れではありません。」


悠真も笑った。


「ああ。」


けれど、その笑顔の奥で、悠真は別のことを考えていた。


(どうしたんだろうな……。)


胸の奥が、少しだけ落ち着かなかった。


(俺は、リシェルのことを――。)


そこまで考え、悠真は小さく首を振った。


(いや、何を考えてるんだ。)


夜風が静かに吹き抜ける。


魔法の光が、いつまでも王都の空を照らしていた。

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