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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第3章「旅編」

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決意

柔らかな光が部屋を包み込んだ。


次の瞬間、悠真の姿が現れる。


「……朝か。」


見慣れた部屋を見回したところで、奥の扉が開いた。


「悠真?」


リシェルが驚いた表情で立ち尽くす。


「おはよう。」


「あ……。」


リシェルは目を瞬かせた。


突然現れた悠真に驚いたのだろう。


けれど、その表情はすぐに柔らかな笑顔へと変わった。


「おはようございます。」


そして、小さく息をつく。


どこか安心したような顔だった。


「どうかしたか?」


「いえ。」


リシェルは微笑む。


「なんでもありません。」



朝食の準備を始める。


悠真はアイテムボックスから小さな道具を取り出した。


「ん?」


リシェルが首を傾げる。


「なんだ、それは?」


悠真は何も答えず、野菜を手に取った。


シャッ、シャッ、シャッ。


軽快な音とともに、皮が次々とむかれていく。


リシェルは目を丸くした。


「……。」


悠真は無言だった。


「包丁が要らないじゃないか。」


悠真は黙ったまま、最後の皮をむき終える。


そして、一言だけ口にした。


「欲しい?」


「ほしいです!」


即答だった。


悠真は思わず吹き出した。


「やっぱりな。」


そう言って、アイテムボックスからもう一本取り出した。


「えっ?」


「予備。」


「用意していたのですか?」


「まあな。」


リシェルは嬉しそうにそれを受け取った。


「ありがとうございます。」


「どういたしまして。」


朝日が差し込む部屋に、穏やかな笑い声が響いた。



朝食を終えると、リシェルは白銀の鎧を身につけた。


「それでは、行ってきます。」


「ああ。いってらっしゃい。」


「はい。」


リシェルは嬉しそうに微笑んだ。


そのまま扉へ向かい、ふと振り返る。


「帰ったら、使い方を教えてください。」


「ピーラーか?」


「はい。」


「分かった。」


「約束ですよ。」


そう言って、リシェルは騎士団の任務へ向かった。



悠真は一人、王都の街を歩いていた。


旅に出る。


そう決めた。


けれど、何を準備すればいいのかが分からない。


「とりあえず、ギルドに行くか。」


冒険者ギルドへ入ると、依頼を受けていない冒険者たちが酒場で談笑していた。


悠真は旅について話を聞いて回る。


保存食。


水袋。


予備の武器。


寝袋。


地図。


思っていた以上に必要なものは多かった。


「旅って大変なんだな……。」


「おっ、新人か?」


「そんなところだ。」


そんな話をしているうちに、扉が開いた。


「こんにちは!」


フィルだった。


「おかえり。」


「ただいま戻りました!」


フィルは笑顔で椅子に腰を下ろした。


「何をしているんですか?」


「旅について調べてる。」


「旅?」


「ああ。」


悠真は頷いた。


「王都を出ようと思う。」


フィルの目が輝いた。



二人は魔導書店を訪れた。


「おやおや。」


アルマが目を細める。


「今日はどうしたんじゃ?」


フィルは悠真の話を伝えた。


すると、アルマは懐かしそうに笑った。


「旅かい。」


「ワシも昔は冒険者だったんじゃ。」


「遺跡を調べていたんですか?」


「そうじゃ。」


アルマは静かに頷く。


「古代遺跡を一人で巡っておった。」


「ですが、限界を感じてのう。」


「仲間もおらんかったし、年も取った。」


「それで引退したんじゃ。」


「そのあと、家庭教師になったんですか?」


「そうじゃな。」


「だが、クビになった。」


「そして、店を始めたというわけじゃ。」


そう言って、アルマは店の奥へと消えた。


しばらくして、大きな鞄を抱えて戻ってくる。


「これは……。」


「ワシが使っていた道具じゃ。」


フィルは目を見開いた。


「私に?」


「そうじゃ。」


アルマは優しく微笑む。


「ワシが見られなかった景色を見ておくれ。」


そして、二人を真っ直ぐ見つめた。


「約束しな。」


「約束ですか?」


「必ず協力し合うんじゃ。」


悠真とフィルは顔を見合わせた。


そして、同時に頷いた。


フィルは、ふと首を傾げた。


「あの……。」


「なんじゃ?」


「どうして、こんなに私によくしてくれるんですか?」


アルマは少しだけ目を見開いた。


そして、優しく笑った。


「そうじゃな。」


少しだけ間を置く。


「血縁者だからじゃよ。」


「えっ……?」


フィルは言葉を失った。


「まあ、遠い遠い縁じゃがの。」


アルマは照れ隠しをするように笑った。



店を出ると、夕日が王都を赤く染めていた。


悠真は頭をかいた。


「順番が逆になったな。」


「え?」


「一緒に旅に出てくれないか?」


フィルは目を丸くした。


そして――。


満面の笑みを浮かべた。


「はい!」



夜。


リシェルの家。


悠真は昼間の出来事を話していた。


旅のこと。


フィルのこと。


アルマのこと。


そして――。


「リシェル。」


「はい。」


「一緒に来てくれないか?」


部屋に静寂が流れた。


リシェルは俯いた。


「……。」


長い沈黙。


やがて、小さく首を横に振った。


「行けません。」


「どうしてだ?」


「私は騎士です。」


その声は、とても穏やかだった。


「この国を守らなければなりません。」


「そうか。」


「はい。」


リシェルは笑顔を作った。


「ですから、お断りします。」


そう言って、自分の部屋へ入っていった。


扉が静かに閉まる。


「……行きたかった。」


ぽつりと声が漏れた。


悠真と一緒に旅をしたい。


もっと話をしたい。


もっと隣にいたい。


けれど、それは許されない。


頬を涙が伝う。


「私は……。」


自分でも分からなかった。


けれど、一つだけ分かることがある。


悠真は、自分にとって、とても大切な存在だった。


それだけは、はっきりと分かった。


でも、この気持ちが何なのかは、まだ分からない。


リシェルはそっと涙を拭った。


そして、窓の外に広がる王都の夜景を見つめた。


挿絵(By みてみん)

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