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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第2章「王都編」

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この世界と古代遺跡

朝日が窓から差し込み、柔らかな光が部屋を照らしていた。


 悠真はソファからゆっくりと体を起こした。


「そういえば……。」


 ふと、そんな言葉が口をつく。


「どうしたんですか?」


 朝食を並べていたリシェルが、不思議そうに首を傾げた。


「俺、この国のことを何も知らないなって思ってさ。」


 王都へ来てから、もう何日も経っている。


 だが、知っているのはギルドや街の一部だけだった。


 リシェルは小さく笑う。


「たしかに、そうですね。」


 そして、少し考え込んだ。


「でしたら、王立図書館へ行きませんか?」


「図書館?」


「はい。今日は騎士団の仕事もお休みですので、ご案内します。」


「いいな。」


 悠真は頷いた。


「せっかくだし、この世界のことをもっと知りたい。」



 王立図書館は、王城の近くに建てられていた。


 白い石造りの巨大な建物で、何本もの柱が天井を支えている。


「すごいな……。」


「王都でも、とくに歴史の長い建物なんですよ。」


 二人が中へ入ると、そこには見慣れた姿があった。


「あっ!」


 金色の髪が揺れる。


「おはようございます!」


「フィル?」


「また勉強か?」


「はい!」


 フィルは胸を張った。


「魔法は毎日の積み重ねですから!」



 三人は大きな机を囲み、分厚い本を開いた。


 そこには、この世界の地図が描かれていた。


「これが、この大陸です。」


 リシェルが地図を指差す。


「七つの国が存在しています。」


「七つか。」


「はい。」


 人間の国。


 エルフの国。


 ドワーフの国。


 獣人の国。


 ダークエルフの国。


 精霊の国。


 そして――。


「連合国です。」


「連合国?」


「さまざまな種族が集まって暮らしている国です。」


「各国との交易も行っています。」


「なるほど。」


「旅人や冒険者も多く集まる場所ですね。」


 悠真は地図を見つめた。


 見たこともない土地ばかりだった。


 そこには、自分の知らない景色が広がっている。



 次に、フィルが古びた本を取り出した。


「こちらも見てください。」


 開かれたページには、七つの印が描かれていた。


「これは?」


「古代遺跡です。」


「古代遺跡?」


「はい。」


 フィルは真剣な表情になった。


「千年ほど前に造られたと言われています。」


「今では、すべてダンジョンになっています。」


「全部か?」


「はい。」


 火の神殿。


 水の神殿。


 風の神殿。


 土の神殿。


 木の神殿。


 光の神殿。


 闇の神殿。


 悠真は思わず息をのんだ。


「なんだか、すごそうだな。」


「すごいですよ!」


 フィルが勢いよく身を乗り出した。


「私の家には、古くから言い伝えが残っているんです。」


「言い伝え?」


「古代遺跡の最深部には古文書が眠っていて、それを読んだ者は古代魔法を使えるようになる、と。」


「古代魔法か。」


「はい!」


 フィルの瞳が輝いていた。


「私は、それを見つけたいんです。」



 悠真は首を傾げた。


「どうして、そこまで魔法を極めたいんだ?」


 フィルは少し驚いた顔を見せ、それから静かに微笑んだ。


「私の家は、代々魔法使いの家系なんです。」


 かつては、高い地位を持つ貴族だった。


 しかし、時代の流れとともに衰退し、今では位の低い貴族となっていた。


「魔法学校では、よく貧乏貴族だって言われました。」


 それでも、フィルは諦めなかった。


 誰よりも勉強し、誰よりも努力した。


 そして、首席で卒業した。


「でも、学校だけでは限界がありました。」


「だから冒険者になったんです。」


「家を復興させたいのか?」


「はい。」


 フィルは真っ直ぐに頷く。


「それに――。」


「もっとたくさんの人を助けたいんです。」



「そういえば……。」


 リシェルが懐かしそうに微笑んだ。


「あのお婆さんには、昔お世話になったことがあります。」


「えっ?」


 フィルが目を丸くする。


「あの方は、とても優秀な魔法使いでした。」


「その時に、少し古代遺跡の話しを聞いた事があります。」


 王族の家庭教師を務めていたほどの人物だった。


 しかし、リシェルには魔法の適性がなかった。


「結局、私は剣の道を選びました。」


「その後、あの方は町外れで魔導書店を始めたんです。」


 リシェルは少し寂しそうに笑った。


「私は、ずっと自分のせいだと思っていました。」


「そんなことありません!」


 フィルは慌てて首を横に振った。


「それに……。」


「ん?」


「やっぱり、お姫様だったのですね。」


「えっ?」


リシェルは驚いたように目を瞬かせた。


「あのお婆さんが、ときどき話してくれたんです。」


「白銀の髪をした、とても優しいお姫様がいた、と。」


「まさか、本当にリシェルさんだったなんて思いませんでした。」


リシェルは、ふっと微笑んだ。


「そうですか。」


「あの後も、お店に通っていたんですね。」


「はい。」


「魔法のことも、本のことも、たくさん教えてもらいました。」


「そうでしたか。」


「あの方も、きっと喜びますね。」


フィルは、にっこりと笑った。


「はい!」


 リシェルはフィルを見つめた。


「もしかしたら、あなたとは親族なのかもしれませんね。」


「えっ!?」


「そんな気がします。」


 だが、不思議な縁であることだけは確かだった。



 夕暮れ。


 三人は図書館を後にした。


 フィルは明日の朝も図書館へ来ると言い、その場で別れた。


 悠真とリシェルは、ゆっくりと家へ戻った。



「旅をしてみたいな。」


 夕食の後、悠真はぽつりとつぶやいた。


「旅ですか?」


「ああ。」


「この世界には、俺の知らないものがたくさんある。」


「いろいろな国を見てみたい。」


「いろいろな人と出会ってみたい。」


「この世界を、もっと知りたいんだ。」


 リシェルは優しく微笑んだ。


「それは、とても素敵なことだと思います。」


「だろ?」


「はい。」


 だが、その笑顔は少しだけ寂しそうだった。


(でも……。)


(私は騎士です。)


(悠真と一緒に旅へ出ることはできません。)


 なぜだろう。


 胸の奥が、少しだけ苦しかった。


 その時だった。


 ゴォォォォン――。


 鐘の音が響く。


「えっ……?」


 悠真は立ち上がった。


「どうしたんですか?」


「いや……。」


 次の瞬間、まばゆい光が悠真を包み込んだ。


「悠真!」


 リシェルは思わず手を伸ばす。


 しかし、その指先が届くことはなかった。


 光が消える。


 そこには、もう誰もいなかった。


「また……消えてしまいましたね。」


 静かな部屋の中で、リシェルは悠真が座っていた場所を見つめていた。


 そして、小さく微笑む。


「次は、いつ会えるのでしょうか。」


 その答えを知る者は、誰もいなかった。

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