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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第2章「王都編」

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王都周辺の異変

朝日が王都を照らしていた。


 悠真はいつものように冒険者ギルドへ向かい、入口でフィルと合流した。


「おはようございます!」


「おはよう。」


「今日はどんな依頼にしますか?」


「そうだな……。」


 悠真は依頼書の並ぶ掲示板へ視線を向けた。


 採取依頼、護衛依頼、討伐依頼――。


 その中に、一枚の依頼書を見つける。


「王都周辺の調査か。」


「これにしよう。」


 フィルも頷いた。


「よさそうですね。」


 その瞬間だった。



【クエスト発生】


王都周辺の異変を調べろ。


報酬:???



(またか……。)


 悠真は心の中で苦笑した。


 すると、その背後から聞き慣れた声が響く。


「悠真。」


「リシェル?」


 振り返ると、白銀の鎧を身にまとったリシェルが立っていた。


「どうしたんだ?」


「いえ、その……。」


 リシェルは少しだけ視線を泳がせた。


 本当は、自分でも分からなかった。


 朝から、どうにも落ち着かなかった。


 気づけば、ここへ来ていたのだ。


 そして、何気なく依頼書へ視線を向ける。


『王都周辺の調査』


(……あ。)


 次の瞬間、リシェルは真顔になった。


「騎士団の任務と調査地域が重なっています。」


「そうなのか?」


「はい。」


 ほんの数秒前に思いついたとは思えないほど、堂々とした口調だった。


「ですので、私も同行します。」


「そういうことなら助かるよ。」


「はい。」


 フィルも嬉しそうに笑った。


「よろしくお願いします!」



 三人は王都の外へ出た。


 森へ入ると、すぐに気配察知が反応する。


「来る。」


「え?」


 次の瞬間、草むらからウルフが飛び出した。


「ガルルルルッ!」


「フィル!」


「はい!」


 フィルは杖を構える。


「――ウィンド!」


 風の刃が放たれ、ウルフを吹き飛ばした。


「すごいな。」


「まだまだです!」


 そこへ、別の一匹が飛びかかる。


「はっ!」


 リシェルの剣が銀色の軌跡を描く。


 一撃だった。


「さすがだな。」


「当然です。」


 そう言いながらも、リシェルは少し嬉しそうだった。



 しかし、異変はすぐに現れた。


「多いですね。」


 フィルが眉をひそめる。


「ああ。」


 悠真も頷いた。


「ウルフの数が多すぎる。」


「こんなことは珍しいんですか?」


「ええ。」


 リシェルの表情が険しくなる。


「少なくとも、私は聞いたことがありません。」


 その時だった。


 ドォォンッ!


 森の奥から大きな音が響いた。


 三人は顔を見合わせる。


「行こう。」



 そこにいたのは、巨大な蜥蜴だった。


 全身を岩のような鱗で覆われた魔物。


「アースリザード……。」


 リシェルが小さく息をのむ。


「知ってるのか?」


「はい。」


「ですが、本来なら王都の近くには現れません。」


 アースリザードは大きく咆哮した。


「グルルルルルッ!」


「来ます!」



 リシェルが斬り込む。


「はっ!」


 しかし――。


 キィン!


 剣は硬い鱗に弾かれた。


「硬い……!」


 フィルも杖を構える。


「――ウィンド!」


 風の刃が飛ぶ。


 鱗がわずかに削れた。


「効いてる!」


 だが、決定打にはならない。


(どうする……。)


 悠真は剣を握り直した。


 そして、ふと思い出す。


(剣と魔法なら……。)


「――フレイ。」


 炎が剣へ吸い込まれていく。


 赤い炎が刃を包み込んだ。


「なっ……!?」


 リシェルが目を見開く。


「悠真、なんだそれは……!」


「昨日、試してみたんだ。」


「昨日……?」


「夕食の時に話していただろ?」


 リシェルは固まった。


(聞いていたはずです……。)


(でも、その時の私は……。)


「フィル、本当か?」


「は、はい!」


 フィルは勢いよく頷いた。


「私も見ました!」


「しかも――。」


 フィルは興奮したように続ける。


「そんな使い方、見たことも聞いたこともありません!」



「行くぞ!」


「はい!」


「ええ!」


 悠真とリシェルが左右へ分かれる。


 炎をまとった剣が鱗を砕く。


 白銀の剣が傷口を広げる。


 そして――。


「フィル!」


「はい!」


 フィルは杖を握り締めた。


「――フレイ!」


杖の先に生まれた小さな炎が、一直線に飛んでいく。


それは傷口へ吸い込まれるように命中した。


次の瞬間――。


ドォォォンッ!


アースリザードが大きく咆哮する。


そして、その巨体はゆっくりと地面へ崩れ落ちた。


「や、やりました……。」


フィルは驚いたように目を見開いた。


「やったな。」


「はい!」


リシェルも優しく微笑んだ。


「お見事でした。」


フィルは少し照れくさそうに笑った。



 夕方。


 三人はギルドへ戻った。


「アースリザードですって!?」


 受付嬢が声を上げる。


「本当に倒したんですか!?」


「ああ。」


 悠真はアイテムボックスを開いた。


 巨大な魔物が姿を現す。


「なっ!?」


「本物だ!」


「どうして王都の近くに……!?」


 ギルド中が騒然となった。


 すると、一人の男が姿を現した。


「騒がしいな。」


 白髪交じりの大男だった。


 鋭い眼光が三人を見つめる。


「詳しい話を聞かせてもらおう。」



 別室。


 三人は事情を説明した。


「なるほど。」


 ギルドマスターは腕を組む。


「妙だな。」


「何か知っているんですか?」


 リシェルが尋ねる。


「いや、まだ分からん。」


 ギルドマスターは首を振った。


「だが、異変が起きていることだけは確かだ。」


 そして、悠真へ視線を向けた。


「神崎悠真。」


「はい。」


「FランクからDランクへ昇格だ。」


「えっ?」


「フィル。」


「は、はい!」


「お前もDランクだ。」


「ほ、本当ですか!?」


 フィルは飛び上がって喜んだ。


「リシェルは?」


「私は騎士団ですので。」


「そうか。」


 ギルドマスターは苦笑した。


 その時だった。



【クエスト達成】


王都周辺の異変を調べろ。


【報酬】


《魔力操作》を獲得しました。


レベルアップ


Lv.12 → Lv.20



悠真の目の前に、淡い光が浮かび上がった。


「……またか。」


慣れたはずなのに、やはり不思議な感覚だった。


レベルが上がったことは分かる。


だが、それだけだ。


剣がどれほど速く振れるようになったのか。


魔力がどれほど増えたのか。


そんなことは何ひとつ分からない。


分かるのは、身体の奥から少しだけ力が湧き上がってくることだけだった。


「魔力操作……?」


悠真は、浮かび上がった文字を見つめた。


魔力を扱う技術なのだろうか。


詳しいことは分からない。


だが、不思議と嫌な気はしなかった。


まるで誰かが、


「次の段階へ進む準備が整いました。」


そう告げているような気がしたからだった。



「疲れましたね。」


「そうだな。」


「少し休んでいきませんか?」


 リシェルが指さした先には、王都の公共浴場があった。



「生き返る……。」


 悠真は湯船に浸かりながら、そのまま眠っていた。



 一方、女湯では――。


「……。」


「……。」


 リシェルとフィルが向かい合っていた。


リシェル(おおきい……。)


フィル(きれいですね……。)


 二人はそれぞれ、まったく違うことを考えていた。


 もちろん、そのことを本人たちは知らない。

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