↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
111/112

庭先ではじめての。

 昼食を終えた悠真たちは、館の前に広がる庭へと出ていた。


 少しして、スズが土の龍核兵を抱きかかえながら、こちらへ駆け寄ってくる。


「スズちゃん、何して遊ぼうか〜」


 フィルが尋ねると、スズは少し考えてから悠真を見上げた。


「ん〜、悠真お兄ちゃん、何か無い〜?」


「そうだね……鬼ごっこは?」


「鬼ごっこ? って何〜?」


 聞いたことのない遊びらしく、スズが首を傾げる。


「一人が鬼ってのになって、みんなを捕まえる遊びだよ。捕まえたら、次はその人が鬼になるんだ」


「わかった〜。それなら、まずは悠真お兄ちゃんが鬼?」


「そうだね。僕から鬼をやるよ。十数えるから、みんな逃げてね。捕まった人は、また十数えてから捕まえに行くんだ」


「それじゃ〜、逃げろ〜!」


 フィルが勢いよく駆け出す。


「わ〜!」


 スズも楽しそうにその後を追った。


「え? 私もですよね!?」


 突然始まった鬼ごっこに、ミリアが戸惑った声を上げる。


「もちろんです〜!」


 フィルの返事を聞き、ミリアも慌てて走り出した。


 悠真はその場で十を数え終えると、逃げていく三人を見渡した。


 最初の標的は――フィル。


「悠真さん。私は捕まりませんよ〜! 逃げのフィルと呼ばれたこの私を……」


「誰だよそれ。はい、捕まえた〜」


「……今、瞬歩使いました〜?」


「使ってません」


「この、偉大な魔術師を捕まえるとは……」


 納得のいかない表情を浮かべながら、フィルはその場で十を数え始めた。


 そして次に狙いを定めたのは、スズだった。


「スズちゃん。逃げられませんよ〜」


「きゃ〜! こっち来ないで〜!」


 笑い声を上げながら、スズが庭を駆け回る。


「誰か。助けて〜!」


「ちょっと、あまりその言葉を大きい声で叫ばないで下さい〜!」


「へへ〜。今のうちに、逃げろ〜!」


「あ〜、ズルいです〜!」


 スズはフィルが慌てている隙に、さらに遠くへと逃げていく。


 フィルは足を止めると、今度はミリアへと向き直った。


「それなら、ミリアちゃんいきますよ〜!」


「私は普段から鍛えてますから」


「……ミリアちゃん。本気ですね? 私も覚悟を決めました〜。いきます!」


 フィルが勢いよく手を伸ばす。


 しかし――


 スカッ。


「ぬぬぬぬ〜。待て〜!」


 フィルは必死になってミリアを追いかける。


 だが、ミリアは身軽な動きでフィルの手をかわし、方向を変えては逃げていく。


「はぁ、はぁ……ミリアちゃん、すばしっこいですね〜。悠真さん覚悟〜!」


 今度は悠真へと標的を変える。


「って、全然追いつきませんよ〜!」


「フィルお姉ちゃん、こっちだよ〜!」


 少し離れた場所から、スズが楽しそうに手を振っている。


「待て〜!」


 再びスズを追いかけるが、あと少しのところでするりと逃げられる。


 悠真を追っても届かない。


 ミリアには軽々とかわされる。


 スズにまで振り回され、フィルの体力は次第に限界へと近づいていた。


「はぁ……はぁ……こうなったら……」


 フィルが立ち止まり、杖を構える。


「《アイスフィールド》!」


「え?」


 次の瞬間、庭一面が一気に凍りついた。


 突然足元が滑り、悠真たちは転ばないよう必死に踏ん張る。


 その中を――フィルだけが風魔法を使って滑るように移動してきた。


「はい。捕まえた〜!」


「フィルちゃん、ずるいですよ。風魔法を使って自分だけ移動してくるなんて」


 捕まったミリアが呆れたように言う。


「へへ〜ん。勝負に勝てばいいんです」


「フィルお姉ちゃん、これじゃ〜鬼ごっこ出来ないよ〜」


「あ……はい。ごめんなさい〜」


 凍りついた庭を見回しながら、フィルが申し訳なさそうに肩を落とす。


 その様子を見ていた悠真は、ふと思いついた。


「はは。せっかくなら、フィル。氷の坂道作ってくれる? そこをみんなで滑るんだ」


「賛成〜! それなら、土の龍核兵ちゃんも一緒に遊べる〜!」


 鬼ごっこが始まってから、足の遅い土の龍核兵は参加することができず、庭の端にちょこんと立っていた。


 スズはそんな龍核兵のもとへ駆け寄ると、嬉しそうに抱き上げる。


「分かりました〜。《アイスウォール》!」


 フィルが魔法を発動すると、庭に大きな氷の坂道が出来上がった。


「私が一番に滑る〜!」


 スズは土の龍核兵を抱えたまま、氷の坂道を勢いよく滑り出した。


「きゃ〜! 楽しい〜!」


 滑り終えたスズはすぐに振り返る。


「フィルお姉ちゃんとミリアお姉ちゃんも一緒に滑ろ〜!」


「わかりました〜。ミリアちゃんもいきますよ〜」


「わかりました」


 先ほどまで戸惑っていたミリアも、今ではすっかり遊びの輪に加わっていた。


 それからしばらく、悠真たちはスズと一緒に氷の滑り台で遊び続けた。


 そんな時間を過ごしていると――


「悠真様。少しよろしいでしょうか」


 声をかけられ振り返ると、庭へ入ってきたルクスがこちらへ歩いてくるところだった。


「はい。どうしました?」


「先程、使いの者がこちらに来まして。この街のご領主様が、悠真様にお会いになりたいとのことです」


「え? 領主? 何で?」


 突然の話に、悠真は首を傾げる。


「私にも理由までは分かりません。ただ、この後こちらへ馬車と使いの者が参りますので、悠真様にはその者と一緒に、ご領主様のもとへ向かっていただきたいと思います」


「僕、一人ですか?」


「はい。そのように伺っております」


「……わかりました。服装はこのままで大丈夫ですか?」


 悠真は自分の服装を確認する。


 領主に会うとなれば、さすがにこのままでいいのか少し不安になる。


「はい。この街のご領主様はとても良いお方ですので、大丈夫ですよ」


「そうですか」


 ルクスがそう言うのであれば問題ないのだろう。


 悠真はフィルたちの方へ振り返った。


「フィル。そういうことだから、後はお願い」


「わかりました〜。スズちゃん、悠真お兄ちゃんはこれからお出掛けするから、私たちと遊ぼうね〜」


「うん!」


 スズは元気よく返事をすると、悠真へ向かって手を振った。


「お兄ちゃん、いってらっしゃい」


「うん。ごめんね。また帰ってきたら遊ぼうね」


「うん!」


 スズの隣では、土の龍核兵も悠真を見上げながらちょこんと立っている。


 その後、悠真はルクスと共に館の中へ戻った。


 しばらくすると、領主の館から迎えの馬車と使いの者がやって来る。


 悠真は使いの者に案内されるまま馬車へ乗り込んだ。


 扉が閉まり、ゆっくりと馬車が走り出す。


 窓の外に流れていくメソヴェリアの街並みを眺めながら、悠真は先程のルクスの言葉を思い返していた。


(領主か……。いったい何の用だろう?)


 理由も分からないまま、悠真を乗せた馬車は領主の館へと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。