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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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領主。

悠真は使いの者とともに、馬車で領主の館へ向かっていた。


「すみません。どういった要件で呼ばれたんですか?」


向かいに座る使いの者へ尋ねる。


「私は領主様から、悠真様をお呼びしてきてくれと頼まれただけですので、詳しいことまでは分かりません」


「そうですか……」


「ただ、悪いことではありませんので、ご安心ください」


使いの者はそう言って、窓の外へ目を向ける。


「そろそろ到着いたします」


「分かりました」


しばらくすると馬車の速度が落ち、そのままゆっくりと停車した。


悠真が馬車を降りると、目の前には大きな館が建っていた。


使いの者に案内され、館の中へ入っていく。


廊下を進み、一つの部屋の前で足を止めた。


コンコン。


「失礼します。悠真様をお連れしました」


「入ってくれ」


中から低く響く声が返ってくる。


扉が開き、悠真は部屋へと入った。


まず目に入ったのは、執務机の上に山のように積み上げられた書類だった。


その向こうに座っている男は、一目で身分の高さが分かる立派な服を身につけている。


だが、その雰囲気は堅苦しいというより、どこか豪快そうな印象を受けた。


男は書類を一枚ずつ確認しながら、何かを書き込んでいる。


「お〜、よく来てくれたな〜」


顔を上げた男が、悠真を見る。


「もう少しで区切りがつくから、座って待っていてくれ」


「はい」


悠真は勧められた椅子へ腰を下ろした。


しばらく待っていると、男は最後の書類に目を通し、ペンを置いた。


そして立ち上がると、悠真の方へ歩いてくる。


「待たせたな。俺はこの街の領主を任されている、ヴィンセントだ。よろしく」


「悠真と言います。一応、冒険者をやっています」


「あ〜、話は聞いてる。神殿のことも、古代種のことも、封印のこともな」


「え?」


「その時のために備えなきゃいけないことは、もう王都から通達が来ている」


「そうだったんですね」


「ああ。騎士団や魔法師団の増員、強化、それから街の防衛も、これから進めていくつもりだ」


ヴィンセントは続ける。


「今日も悠真の仲間が魔法師団の訓練に付き合ってくれたと、報告を受けている」


(フィルのことか)


悠真は昼間の話を思い出した。


「それと――」


ヴィンセントが悠真へ向き直る。


「今回、川の氾濫から街を救ってくれたこと。それから、流された橋を一瞬で錬成してくれたことも礼を言う。ありがとう」


「いえ。僕らは、たまたまその場に居合わせただけなので」


「ははは! そうか!」


ヴィンセントは豪快に笑った。


「それから、あの館は好きに使ってくれ」


「え?」


「また旅に出るとは思うが、あの館はもうお前たちの物だ」


「ええ!? 本当ですか?!」


「ああ。こっちで買い取って、報酬として渡すことに決まったからな。王都からもそう言われている」


ヴィンセントは笑みを浮かべる。


「ここを拠点にして、旅を続けてくれ」


「ありがとうございます」


悠真は素直に頭を下げた。


「それと、今日はこのあと時間はあるか?」


「はい。大丈夫です」


「なら、夕食を一緒にと思ってな」


「分かりました」


「そうか。それなら、まだ仕事が残っているから、別室で待っていてくれ」


ヴィンセントは近くに控えていた使いの者へ声をかける。


「おい。悠真を案内してくれ」


「かしこまりました」


使いの者が悠真へ向き直った。


「悠真様、こちらになります」


「はい」


悠真はその後について部屋を出た。


案内されたのは、先ほどの執務室とは離れた場所にある客間だった。


中へ入ると、広々とした部屋の奥に浴室まで備えられている。


そして、室内には着替えも用意されていた。


「悠真様。湯浴みをされてから、こちらにお着替えください」


「はい。分かりました」


悠真は浴室で湯浴みを済ませると、用意されていた服へ着替えた。


普段着慣れない服に少し落ち着かなさを感じながらも、部屋に用意されていた紅茶を飲み、時間が過ぎるのを待つ。


しばらくすると――。


コンコン。


扉を叩く音が聞こえた。


「はい」


「失礼します」


扉が開く。


そこには、綺麗な服に身を包んだ一人の女性が立っていた。


「私は領主の娘、リリスと申します」


女性は悠真へ丁寧に頭を下げる。


「お父様から、悠真様をご案内するよう言われて参りました」


「はい。よろしくお願いします」


「こちらへどうぞ」


悠真はリリスに案内され、部屋を出た。


廊下を歩いていると、隣を歩いていたリリスが悠真へ話しかける。


「悠真様は、街を救っていただいた英雄だと聞いております。そのような方と、こうしてお話しできることを私はとても嬉しく思います」


「え? いや、僕一人ではなくて、みんなの力で解決できたので」


その答えを聞いたリリスが、少し驚いたように悠真を見る。


「悠真様は謙虚なのですね。パーティーでは、メンバーの功績も普通はリーダーのお手柄になると聞いておりますけど……悠真様は、そんなことはないのですね」


「はい。やっぱり、みんなの力があってできることの方が大きいですから」


「……そうなのですね」


二人はそのまま廊下を歩いていく。


悠真はふと気になり、リリスへ尋ねた。


「リリスさんは、どうして僕の案内を?」


すると、リリスが足を少し緩めた。


「リリス、とお呼びください。それと、私には普段の喋り方で構いませんので」


「え? でも……」


「お願いします」


「わ、分かりました。では……リリスは、どうして僕の案内を?」


リリスは少しだけ頬を赤らめる。


「それは……私が悠真さんに、少しでも早くお会いしたかったからです」


「え?」


「お父様にお願いして、少しでもこうしてお話しできたらと思いまして」


リリスは照れたような表情を浮かべながら話している。


悠真はその様子を不思議そうに見た。


「でも、なんで?」


「お父様から、悠真さんのことはいろいろ聞いていました。そんな英雄みたいな方と一度お会いして、お話ししてみたかったんです」


そしてリリスは、悠真を見つめる。


「そしたら……とても素敵な方だったので」


「え……?」


悠真はどう返せばいいのか分からず、戸惑ったままリリスを見る。


「……ダメだったでしょうか?」


リリスが少し不安そうに悠真を見る。


「いや、僕も話ができて良かったです」


「良かった」


リリスは安心したように微笑んだ。


「では、こちらになります」


案内された部屋へ入ると、そこはとても広い食堂だった。


中央には長いテーブルが置かれ、その両側には椅子がずらりと並んでいる。


その奥の方には、四人分の皿や食器が並べられていた。


悠真は案内された椅子に腰を下ろす。


すると、リリスもその隣の椅子へ座った。


それからしばらくして、扉が開く。


入ってきたのは領主のヴィンセントと、その隣にはリリスによく似た綺麗な女性がいた。


悠真は二人の姿を見ると、椅子から立ち上がった。


「待たせたな」


ヴィンセントが声をかける。


「いえ。リリスさんが話し相手になってくれたので」


「そうか。紹介しよう」


ヴィンセントは隣に立つ女性へ目を向けた。


「隣にいるのが、俺の妻のリアーナだ」


リアーナが悠真へ丁寧に頭を下げる。


「妻のリアーナと申します。リリスの母でございます」


「悠真です。よろしくお願いします」


挨拶を終えると、ヴィンセントがリリスへ顔を向けた。


「リリス。悠真はどうだった?」


「はい、お父様」


リリスは嬉しそうに答える。


「悠真様は、想像していたより素敵な方でした」


「あら。それは良かったですね、リリス」


「はい、お母様。お父様にも頼んで良かったです」


「そうか。それなら良かった。はははは〜!」


ヴィンセントが豪快に笑う。


悠真は三人の会話を、不思議そうな顔で聞いていた。


「まあ、座ってくれ」


「はい」


悠真が再び椅子へ腰を下ろす。


ヴィンセントも席につくと、控えていた使用人へ声をかけた。


「おい。夕食を用意してくれ」


「かしこまりました」


豪華な料理が次々とテーブルへ運ばれてきた。


肉料理や魚料理、色鮮やかな野菜を使った料理など、どれも手の込んだものばかりだった。


悠真たちは料理を楽しみながら、これまでの冒険や、悠真が暮らしている現世について話していた。


ヴィンセントは悠真の冒険の話に豪快に笑い、リアーナやリリスも興味深そうに耳を傾けている。


そうして夕食も終わりに近づいた頃――。


「お父様。私、もう少し悠真様とお話ししたいです」


リリスがヴィンセントへ声をかけた。


すると、リアーナが微笑む。


「そうね。どうせなら、泊まっていってもらったらどうかしら? ねぇ、あなた?」


「そうだな。それがいいな」


ヴィンセントも頷いた。


「本当ですか?」


リリスの表情がぱっと明るくなる。


そのやり取りを見ていた悠真は、何かを察したように口を開いた。


「いや、僕はそろそろ帰ります。みんなも待ってると思いますから」


「そうか? まあ、無理に引き留めるわけにもいかないからな〜」


ヴィンセントは近くに控えていた使用人へ声をかける。


「館まで馬車で送るとしよう。おい、頼めるか?」


「かしこまりました」


「……残念です。もう少し一緒にいたかったです」


リリスが少し寂しそうに悠真を見る。


「リリス。あまり悠真さんを困らせてはいけませんよ」


リアーナが優しく声をかける。


「はい、お母様」


リリスは返事をすると、もう一度悠真へ顔を向けた。


「悠真さん。また来て、お話ししてくれますか?」


「はい。時間があれば、また来ますよ」


「本当ですか?」


リリスは嬉しそうに微笑む。


「あまり待たせたら、私が伺ってしまうかもしれませんからね」


「はははは! だいぶ悠真のことが気に入ったみたいだな〜」


「お父様! そういうことは言わないでください。恥ずかしいです」


リリスは顔を赤らめながらヴィンセントを見る。


「では、今日はご馳走様でした」


悠真は席を立ち、三人へ頭を下げた。


「ああ。こちらこそ、長く引き留めてしまって悪かったな」


「悠真さん」


リリスが悠真を見つめる。


「約束ですよ?」


「はい。それでは、失礼します」


悠真はもう一度頭を下げると、使用人に案内されて食堂をあとにした。


館の外には、すでに馬車が用意されていた。


悠真が乗り込むと、馬車はゆっくりと走り出す。


そして悠真は、自分たちの館へと帰っていった。


挿絵(By みてみん)

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