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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第2章「王都編」

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休日の湖

カーテンの隙間から差し込む朝日が、神崎悠真の瞼を優しく照らした。


 ゆっくりと目を開くと、見慣れた自室の天井が目に入る。


「……朝か。」


 昨夜の出来事が頭をよぎる。


 夢の中で訪れた王都。


 初めての依頼。


 ウルフとの戦い。


 そして、リシェルの家で別れた直後、現実へ戻ってきたこと。


 夢だったとは思えないほど鮮明な記憶。


 悠真は枕元へ視線を向ける。


 そこには、一枚のカードが静かに置かれていた。


 王都冒険者ギルドカード。


 昨夜見たものと何一つ変わらない。


 恐る恐る手に取る。


 冷たい感触。


 表面に刻まれた自分の名前。


 夢の中だけのはずだった証が、確かに現実に存在している。


「……本当に持ち帰ってきたのか。」


 思わず苦笑する。


 何度見ても現実味がない。


 だが、今日は考えても答えは出ない。


「今日は休みなんだから、楽しもう。」


 カードを机の引き出しへしまい、悠真は身支度を始めた。


 今日は久しぶりに、富士五湖へSUPをしに行く約束をしている。


 相手は幼馴染の陽菜だ。


 恋人ではない。


 だからこそ、何でも気軽に話せる大切な友人だった。


◇


 待ち合わせ場所の駐車場では、すでに陽菜が手を振っていた。


「おはよう、悠真!」


「おはよう。待たせた?」


「ううん。私も今来たところ。」


 そう言って笑う陽菜は、車からSUPボードを降ろし始める。


「今日は最高の天気だね!」


「風もほとんどないし、絶好のSUP日和だな。」


「でしょ? だから早く来たかったんだ。」


 二人は笑い合いながら湖畔へ向かった。


 朝の湖は静かだった。


 水面には富士山が映り込み、まるで鏡のように澄んでいる。


「やっぱり、この景色は何度見ても飽きないな。」


「うん。仕事の疲れも吹っ飛ぶよね。」


 ボードを水面へ浮かべ、それぞれゆっくりと漕ぎ始める。


 パドルが水を切る音だけが、静かな湖に響いた。


◇


 湖の中央付近まで来ると、陽菜が笑いながら声を掛ける。


「悠真、なんか今日うまくない?」


「そうか?」


「全然グラついてないじゃん。」


 言われてみればそうだった。


 以前なら少し体勢を崩していた場面でも、今日は自然と身体が反応する。


 体幹が安定している。


 視線もぶれない。


(身体強化……。)


 夢世界で得たスキルが頭をよぎる。


 偶然だろうか。


 それとも、本当に現実へ影響しているのか。


 考えても答えは出ない。


「最近、仕事で鍛えられてるからかな。」


 適当に笑ってごまかす。


「ふーん? じゃあ私も組立工になろうかな。」


「それはおすすめしない。」


「即答なんだ。」


 二人は顔を見合わせて笑った。


◇


 穏やかな時間が流れる。


 湖面には小さな波紋が広がるだけ。


 風もない。


 鳥の鳴き声だけが遠くから聞こえてくる。


 その時だった。


 ――ゆらり。


 視界の先で、空気がわずかに揺らいだ。


 まるで真夏の陽炎のように、景色が歪む。


「……?」


 悠真は思わずパドルを止めた。


 揺らぎは一秒にも満たない。


 瞬きをした次の瞬間には、何事もなかったかのように消えていた。


「どうしたの?」


 陽菜が不思議そうに尋ねる。


「いや……。」


 悠真は目を細め、もう一度その場所を見る。


 青空。


 静かな湖。


 揺れる木々。


 どこにも異常はない。


「気のせい、かな。」


「疲れてるんじゃない?」


「そうかもな。」


 そう答えたものの、胸の奥に小さな違和感が残る。


 あれは見間違いだったのか。


 それとも――。


 悠真はもう一度だけ、何もない空を見上げた。


 そこには、いつもと変わらない夏の青空が広がっていた。


挿絵(By みてみん)

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