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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第2章「王都編」

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休日の湖

カーテンの隙間から差し込む朝日が、神崎悠真の瞼を優しく照らした。


 ゆっくりと目を開くと、見慣れた自室の天井が目に入る。


「……朝か。」


 昨夜の出来事が頭をよぎる。


 夢の中で訪れた王都。


 初めての依頼。


 ウルフとの戦い。


 そして、リシェルの家で別れた直後、現実へ戻ってきたこと。


 夢だったとは思えないほど鮮明な記憶。


 悠真は枕元へ視線を向ける。


 そこには、一枚のカードが静かに置かれていた。


 王都冒険者ギルドカード。


 昨夜見たものと何一つ変わらない。


 恐る恐る手に取る。


 冷たい感触。


 表面に刻まれた自分の名前。


 夢の中だけのはずだった証が、確かに現実に存在している。


「……本当に持ち帰ってきたのか。」


 思わず苦笑する。


 何度見ても現実味がない。


 だが、今日は考えても答えは出ない。


「今日は休みなんだから、楽しもう。」


 カードを机の引き出しへしまい、悠真は身支度を始めた。


 今日は久しぶりに、富士五湖へSUPをしに行く約束をしている。


 相手は幼馴染の陽菜だ。


 恋人ではない。


 だからこそ、何でも気軽に話せる大切な友人だった。



 待ち合わせ場所の駐車場では、すでに陽菜が手を振っていた。


「おはよう、悠真!」


「おはよう。待たせた?」


「ううん。私も今来たところ。」


 そう言って笑う陽菜は、車からSUPボードを降ろし始める。


「今日は最高の天気だね!」


「風もほとんどないし、絶好のSUP日和だな。」


「でしょ? だから早く来たかったんだ。」


 二人は笑い合いながら湖畔へ向かった。


 朝の湖は静かだった。


 水面には富士山が映り込み、まるで鏡のように澄んでいる。


「やっぱり、この景色は何度見ても飽きないな。」


「うん。仕事の疲れも吹っ飛ぶよね。」


 ボードを水面へ浮かべ、それぞれゆっくりと漕ぎ始める。


 パドルが水を切る音だけが、静かな湖に響いた。



 湖の中央付近まで来ると、陽菜が笑いながら声を掛ける。


「悠真、なんか今日うまくない?」


「そうか?」


「全然グラついてないじゃん。」


 言われてみればそうだった。


 以前なら少し体勢を崩していた場面でも、今日は自然と身体が反応する。


 体幹が安定している。


 視線もぶれない。


(身体強化……。)


 夢世界で得たスキルが頭をよぎる。


 偶然だろうか。


 それとも、本当に現実へ影響しているのか。


 考えても答えは出ない。


「最近、仕事で鍛えられてるからかな。」


 適当に笑ってごまかす。


「ふーん? じゃあ私も組立工になろうかな。」


「それはおすすめしない。」


「即答なんだ。」


 二人は顔を見合わせて笑った。



 穏やかな時間が流れる。


 湖面には小さな波紋が広がるだけ。


 風もない。


 鳥の鳴き声だけが遠くから聞こえてくる。


 その時だった。


 ――ゆらり。


 視界の先で、空気がわずかに揺らいだ。


 まるで真夏の陽炎のように、景色が歪む。


「……?」


 悠真は思わずパドルを止めた。


 揺らぎは一秒にも満たない。


 瞬きをした次の瞬間には、何事もなかったかのように消えていた。


「どうしたの?」


 陽菜が不思議そうに尋ねる。


「いや……。」


 悠真は目を細め、もう一度その場所を見る。


 青空。


 静かな湖。


 揺れる木々。


 どこにも異常はない。


「気のせい、かな。」


「疲れてるんじゃない?」


「そうかもな。」


 そう答えたものの、胸の奥に小さな違和感が残る。


 あれは見間違いだったのか。


 それとも――。


 悠真はもう一度だけ、何もない空を見上げた。


 そこには、いつもと変わらない夏の青空が広がっていた。


挿絵(By みてみん)

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