もう一手間
目的の丘まで辿り着くと、悠真たちは野営の準備を始めた。
フィルとゼノンにテントの設営を任せ、悠真とツバキは夕食の準備を始める。
「さて、何を作るの?」
「とりあえず、釜を錬成してもらえますか? ドームタイプでお願いします。」
「わかったわ。」
ツバキが釜を錬成している間に、悠真は《アイテムBOX》から米と二種類の肉を取り出した。
それを見たツバキが、すぐに察する。
「これ、またこのお肉を刻んで混ぜればいいのね?」
「はい。あと、卵と刻んだ玉ねぎを入れて、捏ねてもらっていいですか?」
「ええ。」
「僕はお米を炊いちゃいます。それと、作り置きしてあるこれも温めないと。」
悠真とツバキは、それぞれの作業に取りかかった。
「どうかしら?」
ツバキが、捏ね終えた肉を悠真に見せる。
「はい。大丈夫です。」
ツバキは捏ねた肉を一つずつ形を整えていき、それを悠真が順番に焼いていく。
表面に焼き色がついたところで、ツバキが不思議そうに覗き込んだ。
「これだと、まだ中まで焼けていないけど、大丈夫かしら?」
「はい。あとで窯に入れて、じっくり火を通すので大丈夫です。」
悠真は焼き上がった肉を取り出す。
「そしたら、炊けたご飯に刻んだニンニクとベーコンを混ぜて、炒めてもらっていいですか?」
「え? ご飯を炒めるの?」
「はい。炒め終わったら、この器に一人分ずつ盛っていってもらえますか?」
「ええ。わかったわ。」
ツバキは言われた通り、刻んだニンニクとベーコンをご飯に加えて炒めていく。
香ばしい匂いが辺りに広がり始めた。
出来上がったガーリックライスを器に盛り、その上に先ほど焼いた肉をのせていく。
さらに悠真は、作り置きしてあったものを温め、その上からたっぷりとかけた。
漂ってきた香りに、ツバキが反応する。
「このスパイスの効いた匂い……。そのまま食べないの?」
「はい。今回はもう一手間入れます。」
悠真は錬成された窯へ視線を向けた。
「そろそろ、窯に火を入れてもらえますか?」
「ええ。」
ツバキが窯の準備をする間に、悠真は肉の上にかけたものへ卵を落としていく。
そして最後に――。
その上から、チーズをたっぷりとのせていった。
「うん。予熱はこのくらいかな。」
悠真は窯の中を確認する。
「あとは、これを十分くらい焼いていきましょう。」
「これを焼くの?」
「はい。香ばしさが増して、すごく美味しくなりますから。」
「楽しみね。」
料理を窯へ入れてしばらくすると、野営の支度を終えたフィルとゼノンが近づいてきた。
「ん〜。いい匂いです〜。」
フィルが鼻をひくひくと動かす。
「ん? カレーじゃないですか〜!?」
すぐに匂いの正体に気づき、辺りを見回した。
「あれ? でも、この鍋にカレーがあるのに……何を焼いてるんですか?」
「出来てからのお楽しみだよ。」
悠真は《アイテムBOX》から何かを取り出す。
「とりあえず、出来上がるまでみんなでこれでも食べていようか?」
「エビせんじゃねーか! 悠真、エール出してくれ!」
「わかりました。ご飯が出来るまで、エビせんつまんで待っててください。」
「はいです〜。」
四人はエビせんをつまみながら、料理が焼き上がるのを待った。
しばらくして――。
悠真は窯から熱々の器を取り出した。
表面のチーズにはこんがりと焼き色がつき、香ばしい匂いが辺りに広がる。
「うん。いい感じ。」
「悠真さん、出来ましたか〜? 早く食べましょう〜。」
「わかったよ。」
悠真は出来上がった料理を三人の前に並べた。
「はい! 今日はフィルのために一手間かけた、ハンバーグカレードリアです!」
「おかわり分も焼いてるから、いっぱい食べて。」
「やったです〜! いただきます〜。」
フィルは早速スプーンですくい、口へ運ぶ。
「ん〜! 熱っ!?」
慌てながらも、そのまま頬を緩ませる。
「でも、美味しいです〜!」
「ほんと。香ばしさが増して美味しいわ。」
ツバキも嬉しそうに頷いた。
「はいです〜。中の卵がとろ〜んってしてるのが、たまりません〜。」
「うむ。このハンバーグも肉汁たっぷりで美味いな。」
「エールにも合いますか?」
「もちろんだ!」
「それなら、こっちのお酒もどうですか?」
悠真は《アイテムBOX》から、現世で買ってきたハイボールを取り出し、ゼノンへ渡した。
ゼノンは一口飲むと、目を見開く。
「ん! これはまた一段と! 甘さがあって、カレーのスパイスにちょうど合うな!」
「私ももらっていいかしら?」
「はい。フィルは――」
悠真がフィルを見る。
すでに二皿目のカレードリアを夢中で食べていた。
「……うん。大丈夫そうだね。」
「うん。このお酒はまた美味しいわね。」
「だろ〜? 悠真が出してくれる物は、何でも美味いな〜。」
「はは。まあ、僕っていうより、現世の技術ならではの賜物ですかね。」
「そんなことないでふよ〜。はふはふ……。」
フィルは熱々のドリアを頬張りながら答える。
そして、ごくんと飲み込んだ。
「悠真さんのおかげで、私たちは美味しい物を食べれてますから〜。」
「そうよ。悠真さんのおかげですよ。」
二人に言われ、悠真は少し照れながら答えた。
「そうですか? ありがとうございます。」
「こちらこそ、いろいろありがとうございます。」
フィルはにっこりと笑う。
「そして! これからも、美味しい物をいっぱい食べさせて下さい〜。」
「結局、そこかよ。」
悠真の言葉に、みんなが笑う。
今夜の夕食も、悠真たちは賑やかに過ごした。




