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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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笑顔の向こう

 屋台でパスタを食べ終えた悠真とフィルは、宿へと戻っていた。


「悠真さんって、いつも何かしてますね〜?」


「ん〜、なんでだろうね。そういう星の下に生まれたのかな?」


「何言ってるんですか〜。」


「はは。」


 そんな話をしながら宿へ戻ると、悠真はそのままゼノンの部屋へ顔を出した。


「ゼノンさん。どうですか?」


「お〜、ちょうどいいところに来たな。魔道コンロが出来たから見てくれ。」


「え? 出来たんですか?」


「おう。」


 部屋の中にはツバキもいた。


「ええ。夢中になっていたら、出来上がってしまったわ。私が部品を錬成して、ゼノンが組み立てながら調整していたのよ。」


「ちゃんと火力も調整出来るぞ。それに、この魔石に魔力を注いでやれば、いくらでも使える。」


「本当ですか? すごいです。カセットコンロはガスがなくなると終わってしまうので、毎回ガスボンベのガスを復元してたんですよ。」


「それも、たいして変わらね〜けどな。」


「ですよね〜。」


 フィルが笑いながら、持っていた包みを差し出した。


「それと、これどうぞ〜。悠真さんが何故か屋台の横で作ったパスタです。どうせ、何も食べてないんじゃないですか〜?」


「おお、助かるわい。確かに夢中になって、何も食べていなかったな〜。」


「ええ。でも悠真さん、またですか?」


 ツバキに言われ、悠真は苦笑する。


「はい。またやりました。」


「悠真さんは、どれだけ街おこしすれば気が済むんですかね〜?」


「はは……。」


 部屋に笑い声が響く。


 こうして、慌ただしかった一日は静かに暮れていった。


◇◇◇


 日も昇り、支度を終えた悠真たちは宿を後にした。


 馬車に荷物を積み、出発の準備をしていると、どこからともなく街の人々が集まり始める。


 その中から、ギルドの職員が前へ出た。


「本当にありがとうございました。みなさんのおかげで、この街は救われました。また、この街に寄ってくださいね。」


「次に来る頃には、いろんな麺料理を用意しとくよ!」


 昨日の屋台のおばちゃんも、人混みの中から声を上げる。


「楽しみです〜。」


 フィルが嬉しそうに答えた。


 悠真は集まった人々を見渡す。


「それでは、みなさん。また。」


「ありがとう〜!」


「また寄ってくれよ〜!」


 次々と声が飛んでくる。


 悠真が手綱を握り、馬車を進めようとした――その時だった。


「フィル! 待って!」


「え?」


 呼び止められたフィルが振り返る。


 人混みをかき分け、一人の若い女性が駆けてきた。


「どうしたの?」


 悠真が尋ねると、フィルは少しだけ表情を曇らせた。


「魔法学校の時のクラスメートです……。」


 そして、小さな声で続ける。


「その……あまり私のことを……。」


「あ……。」


 悠真は思い出した。


 フィルが学生だった頃、決していい思い出ばかりではなかったことを。


 女性はフィルの前まで来ると、息を整え、深く頭を下げた。


「ごめんなさい。あなたのこと、学生の時にいろいろ言ってしまって……。」


「……。」


「でも、主席で卒業して……本当はすごいと思っていたの。ずっと謝りたかったの……。」


 女性はもう一度、頭を下げる。


「本当にごめんなさい。」


 そして顔を上げると、フィルをまっすぐ見つめた。


「それと……この街を救ってくれて、ありがとう。」


 フィルはしばらく何も言わなかった。


 やがて――。


「……もう、いいです。」


「え?」


「そんな昔のことは忘れました〜。」


 いつものように、フィルが笑う。


「だから、これからは仲良くしてください〜。」


「いいの……?」


 悠真も思わずフィルを見る。


「いいのか?」


「はいです〜。次にこの街に来たら、美味しいものを教えてくださいね。」


「うん! わかった。次に来た時は、いっぱいご馳走する!」


「楽しみです〜。」


 悠真はフィルの笑顔を確認すると、ゆっくりと馬車を走らせた。


 街が少しずつ遠ざかっていく。


「フィル。偉かったですよ。」


 ツバキが優しく声をかける。


「はい……。私は偉大な魔術師なので、ちっちゃいことは気にしません……。」


「フィル。偉かったよ。」


「うむ。たいしたもんだ。」


 悠真とゼノンの言葉に、フィルは何も答えなかった。


「……。」


 俯いたフィルの頬を、一筋の涙が伝う。


 悠真は何も言わなかった。


 ただ、フィルが落ち着くまで静かに馬車を走らせた。


 しばらくして――。


「ふ〜……。みなさん、ありがとうございました。」


 いつもの声が聞こえ、悠真は少しだけ振り返る。


「うん。それなら、美味しいもの作らないとかな?」


「はいです〜。美味しいもの、いっぱい食べたいです〜。」


「それなら、今日は早めに野営の準備をしようか。」


 するとツバキが、進行方向を見ながら言った。


「しばらく進むと、ちょうど見晴らしのいい丘があります。そこで野営しましょう。」


「わかりました。」


 悠真は頷き、馬車をそのまま街道の先へと走らせていった。

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