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夢世界レベルアップ ~眠るたび異世界、目覚めるたび最強~  作者: 大雄山
第4章「遺跡編」

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雨上がりの果て

 悠真は、フィルが呼んできてくれたツバキと合流した。


 その隣にはゼノンもいる。


 どうやら心配して、一緒に来てくれたようだ。


「悠真さん。どうしますか? ただ壁を作るには、範囲が広すぎて……」


「そうですね……」


 悠真は増水した川と、その先にある街を見比べる。


 壁で止めるだけでは、いずれ限界が来る。


 なら――。


「街と川の間に、大きな池を造ることはできますか?」


「池を?」


「はい。川の水をそちらへ逃がして、勢いを弱めます」


 ツバキは街と川の間に広がる土地へ視線を向けた。


「ええ。広さはどのくらい?」


「出来る限り大きくです」


「出来る限り……」


 ツバキが少し考え込む。


「あとは、魔力が持つかしら」


「私の魔力を使ってください〜」


 フィルがすぐに手を挙げた。


「俺のも使え」


 ゼノンも続く。


 ツバキは二人を見て、静かに頷いた。


「分かったわ。悠真さん、お願いします」


「はい。みなさん、お願いします」


 悠真たちは街と川の間まで移動した。


 ツバキはすぐにしゃがみ込み、地面へ手を触れる。


「《古代錬成》」


 地面が淡い光に包まれた。


 ゴゴゴゴゴ――!


 大地が大きく窪み、削り取られた土がその周囲へと盛り上がっていく。


 一度に錬成できる範囲は、十メートル四方ほどらしい。


 ツバキは場所を移動しながら、何度も錬成を繰り返していった。


 掘り下げられた土地は池となり、その土はそのまま外周を囲う壁へと変わっていく。


 どれくらい続けただろう。


 すでに五百メートルほどには達している。


「悠真さん……そろそろ魔力が……」


「はい。ゼノンさん、お願いします」


「おう」


 悠真は片方の手でゼノンに、もう片方の手でツバキに触れた。


「《魔力吸収》」


 ゼノンから魔力を吸収する。


 そして――。


「《魔力譲渡》」


 吸収した魔力を、そのままツバキへと流していく。


「……もういいわ」


 ツバキが再び立ち上がる。


「ゼノンの方が魔力量が多いみたいね」


「おう! まだまだいけるぞ〜!」


 そのときだった。


「悠真さん!」


 川を見ていたフィルが声を上げる。


「勢いが強いのが上流から来ます〜!」


 悠真が上流を見る。


 膨れ上がった濁流が、激しい音を立てながらこちらへ迫っていた。


「フィル! 《アイスウォール》で、なるべく大きな壁を作ってくれ!」


「はいです〜!」


「ツバキさんは、そのまま続けてください!」


「分かったわ!」


 フィルが川へ向かって杖を構える。


「《アイスウォール》!」


 ズズズズズ――!


 川のそばに巨大な氷の壁が築かれていく。


 直後――。


 ザバーンッ!!


 上流から押し寄せた濁流が、凄まじい勢いで氷壁へ激突した。


「悠真さん! 壁が! 押されます〜!」


 氷壁が軋み、少しずつ押されていく。


「任せろ!」


 ゼノンが前へ出た。


「《炎神武装》!」


 ゼノンから神炎が噴き上がる。


 炎は大きく膨れ上がり、ゼノンの背後に巨大な上半身の姿を形作った。


「ふんっ!」


 ゼノンが両腕を氷壁に向かって突き出す。


 その動きに同調するように、《炎神武装》の巨大な両腕が氷壁を押さえ込んだ。


 轟音を立てる濁流。


 それでも氷壁は、その場に踏みとどまる。


「よし! なんとか持ちそうだ!」


 悠真はツバキを振り返った。


「ツバキさん! 時間はあまりありません! 急ぎましょう!」


「分かったわ!」


 ツバキは何度も魔力を補充しながら、錬成を繰り返していく。


 そして最後に、川と掘り下げた土地をつなげた。


 その瞬間――。


 ゴオオオオオッ!!


 行き場を失っていた大量の水が、一気に新しく造られた場所へ流れ込んでいく。


 みるみるうちに水が溜まり、巨大な水面が広がっていった。


 悠真も、その光景を見渡した。


 全長は一キロほどあるだろうか。


「……池っていうより、湖だな」


 大量の水を受け止めたことで、川の勢いも少しずつ弱まっていく。


 ひとまず――。


 街へ押し寄せようとしていた濁流は、抑えられたようだった。


 湖が完成する頃には、降り続いていた雨も少しずつ弱まり始めていた。


 やがて雨粒はまばらになり、厚い雲の隙間からわずかに明るい空が覗く。


「疲れました〜……」


 フィルがその場にへたり込む。


「お疲れ。ツバキさんも、お疲れさまでした」


 悠真は目の前に広がる水面を見渡した。


「本当に、こんな広い湖が出来るとは思いませんでした」


「ホントだわい」


 ゼノンも腕を組みながら、出来上がった湖を眺めている。


「さすがに疲れたわね。私もここまで出来るとは思わなかったわ」


 ツバキも小さく息を吐いた。


「私も魔力がすっからかんです〜……」


 フィルが力なく杖にもたれかかる。


 すると、街の方から大勢の人たちがやって来た。


 その中には、先ほどのギルド職員の姿もある。


「えーっ!? 何ですか、この湖はー!?」


 初めてその光景を目にした職員が、思わず声を上げた。


「俺は見てたが、凄かったぞ!」


「本当に、あなたたちのおかげで助かったよ」


「水が迫ってきた時は、もうダメかと思ったけどなぁ」


「ああ。いきなり氷の壁が現れて、それを炎の人みたいなのが支えてたもんな!」


 集まった人々が興奮した様子で次々に話し始める。


 ギルド職員はそんな人々の間を抜け、悠真たちの前までやって来た。


 そして、深く頭を下げる。


「ありがとうございました。おかげで街は助かりました」


「いえ。無事でよかったです」


 悠真がそう答えると、周囲から再び感謝の声が上がった。


 こうして悠真たちは、大勢の街の人たちに囲まれながら宿へと戻っていった。


挿絵(By みてみん)

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