第46話 先輩達の卒業
「王宮魔導開発院・特別嘱託研究員」を拝命した僕たちの生活は、めちゃくちゃ忙しくなった。まさに地獄。
王宮の役人から手渡された予定表は、分単位でびっしりと埋め尽くされていました。
「再編の円環」プロジェクト。
このプロジェクトは王太子エドワード殿下が統括する事になった。
そしてこの国家事業には、ルヴィア様の兄上たち、つまり王室の精鋭たちが各専門部署から続々と出向してきた。
王宮魔術師長補佐は三男テオドール様、
騎士団副隊長次男ライオネル様、
経理部副官三女クロエ様、
素材管理課主任四男バルタザール様、
そして魔導具師長補佐五男ジョシュア様。
王国の屋台骨を支える面々が、僕たちの理論を形にするために集結したのです。
「このプロジェクトは、一千六百年守り続けてきた『楔』を、次代の繁栄へと繋ぐための希望である。君たちの手で、王国の新たな歴史を拓くがよい」
国王陛下直々のそのお言葉は、とてつもなく重い期待としてのしかかった。
陛下はこの事業を、単なる環境改善ではなく、王国の未来を次世代に託すためと考えておられたのです。
夏季休暇が終わっても、この「狂乱」は終わらない、むしろ本番はそこからだった。
「勉学は学生の本分である」というもっともな(恨めしい)理論の元、僕たちは無理やり学園に通う。物理的に無理だろうと思っても「やるべき事をやらないとね」と王太子殿下ににこやかに送り出された。
放課後と休日はすべて王宮の特設工房へ直行。深夜まで設計図を睨み、早朝に寄宿舎へ戻る生活。
そうなると当然
「メイル君! 君は授業を寝に来ているのかね!?」
「フラン君、もしこれ以上成績が下がるようなら、プロジェクトから外して貰わないと、と王宮に報告するよ!」
怒られる。
教授たちの怒号と脅しに「ひーひー」言いながら、僕たちはペンを握りしめ、あるいは寝ぼけてエルに担がれてベットに放り込まれ(エルの体力はどうかしている)、なんとか食らいついた。
そうして、季節は僕たちの疲労を置き去りにして、猛スピードで駆け抜けていく。
「……とうとう、この日が来たね」
そして季節は巡り、学園に別れの時期が訪れました。
王立学園の卒業式。
銀糸の刺繍が施された豪奢な魔導師礼服を纏ったヴィクター先輩と、王族の正装である白銀の式典服に身を包んだルヴィア様が、晴れやかな顔で卒業式の後僕達の前に立っていました。
「「ルヴィア様、ヴィクター先輩ご卒業おめでとうございます」」
二年前、僕とエルがこの学園に足を踏み入れた時、僕たちを導いてくれた「先輩」たちが、学園から旅立って行くのだ。
「エバーとエルはジジーアスに来るのは当分先だね」
残念とルヴィア様は笑う。
「再編の円環」プロジェクトは、まだ年単位の時間を要する道半ばだ。
ジジーアスに帰るのはまだまだ先になりそうだ。
「やっとプロジェクトの方に集中出来るぞ」
ヴィクター先輩はめちゃくちゃ喜んでいる。
「君達もあと1年頑張りたまえ」
他人事だと思ってヴィクター先輩はにやにやしてる。
兎にも角にもおめでとうだ!




