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エバー・メイルの領地改革  作者: 小兎


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第34話 キノババ閉鎖の布告


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## 勅令:東辺境「キノババ」閉鎖の布告


 我らグランド王国の安寧を脅かす者に対し、王の名の下に此処に宣言する。


 今般、東辺境伯領キノババにおいて、隣国ダッファーデン王国より差し向けられた間者による、卑劣極まりなき諜報行為が白日の下に晒された。


 これら不当なる潜入工作により、我が国は少なからぬ忠勇なる人員を喪い、さらに国政を揺るがす政治工作、及び我が国が長き年月を懸けて培った魔導技術情報の奪取という、断じて看過し得ぬ主権侵害を蒙るに至った。


 これら一連の敵対行為は、我が国との信義を根底から覆すものであり、最早言語道断の沙汰である。

 よって、グランド王国国王は、王国の独立と民の安全を断固として守護せんがため、東の窓口たる「キノババ」の恒久的閉鎖を此処に断行する。


 これより先、少なくとも三十年の長きに亘り、我が国がダッファーデンとの国交を再開することは、決してあるまじ。


 現在、国内に留まるダッファーデン王国籍を有する者は、直ちに所持品を纏め、我が国より退去せよ。猶予は、グランド王国歴五月三十日の刻限までとする。


 当該期日を以てキノババの鋼鉄の門は完全に封鎖され、以後の越境、及び不法なる滞在は、一切の容赦なく「王国の敵」として処断するものとする。

 我が国の誇りと、霊脈の巡るこの大地を侵す者は、誰一人として許さぬ。


 グランド王国歴 五月吉日

グランド王国国王 アルバート・ラ・フォン・グランド

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国王アルバートによる「キノババ封鎖」の勅令は、グランド王国歴1603年の初夏、国中を激震させた。大陸との唯一の接点が断たれるという事態に、王国内の主要な組織は対照的な反応を見せていた。


冒険者ギルド:帰化の奔流

意外にも、冒険者ギルドはこの決定を概ね好意的に受け止めた。この機会にグランド王国へ正式に帰化し、腰を据える他国籍の冒険者が続出したのだ。

理由は単純だ。グランド王国の魔素濃度の高さは、他国では見られない高品質かつ希少な魔獣素材をもたらす。何より、「魔獣を狩る者」への国家的なバックアップが非常に手厚いことが決め手となった。辺境伯騎士団との連携や、魔導具による安全確保の提供は、大陸の他国では到底望めない「命の保証」だ。


商業ギルド:激しい反発と混乱

対照的に、商業ギルドは混乱の極みにあった。

グランド王国の素材は大陸全土で「最高級品」として取引されており、王都に居を構える商館の約四分の一は、これらを輸出するために滞在していた他国の商館だったからだ。

「貿易の利益を捨てる気か」という反発は激しく、特にダッファーデンをはじめとする他国籍の商館は、三十年の国交断絶を前に、莫大な在庫を抱えたままの撤退を余儀なくされた。



「……結局、利を追う者たちが去り、この地と命を共にする者たちが残る。そういうことなんだね」


僕は新聞の号外を片手に、少しずつ変わり始めた王都の活気を見つめていた。輸出に回らなくなった高品質な素材が国内に滞留し始めれば、魔導具の研究にはむしろ追い風になるかもしれない。


「おいエバー、そんなことより今は論文だろ。商売の話は大人たちに任せとけって」


エルの言う通りだ。国が門を閉ざそうとしている今、僕たちが「内側」からこの国をどう支えていくかなのだ。




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