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エバー・メイルの領地改革  作者: 小兎


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第2話 学園生活 の始まり

グランド王立学園に入学して一ヶ月。


僕とエルはすっかり行動を共にするようになっていた。


寮の部屋は隣同士。


学園の授業体系も、自然と一緒にいる時間が長くなる作りになっている。


学園は一学年一クラス。


朝と帰りの連絡事項伝達、基礎学科、実習訓練は全員共通で受ける。


その後、各自の専攻学科ごとに教室へ移動する仕組みだ。


魔法学科十名。


戦術学科十名。


合わせて一学年二十名。


王国中から優秀な人材だけを集めているだけあって、少数精鋭という言葉がよく似合う。


在学期間は三年。


卒業後は中央官僚、王立騎士団、あるいは各領地へ戻って働くことになる。


僕の場合は最初から進路が決まっていた。


ジジーアス辺境伯領魔法部隊所属。


現在は出向扱いで学園に通っている。


いわゆる紐付き組というやつだ。


卒業したら辺境へ戻る。


それは最初から決まっている。


対してエルは違う。


討伐ギルド推薦で入学しているため、卒業後の進路は本人次第だ。


騎士団へ入ってもいい。


官僚になってもいい。


どこかの貴族に仕えてもいい。


ある意味では自由な立場だった。


羨ましいかと言われると――。


「うーん?」


正直よく分からない。


僕は魔法が研究できればそれで満足だ。


出世したいとも思わない。


偉くなりたいとも思わない。


権力にも興味がない。


領では割と好き勝手研究させてもらっていたし、不自由も感じていなかった。


だから出世欲や栄達心で動く人たちの気持ちは、いまいち理解できないのである。


そんな僕たちだが、学園生活には一つ問題があった。


実習授業だ。


実習では二人以上でパーティを組み、魔獣討伐を行う。


当然、学園側としては四~五人程度の班を想定しているのだろう。


だが。


僕とエルのパーティには二人しかいない。


ずっとだ。


理由はいくつかある。


まず一つ。


僕とエルが庶民だから。


貴族の子弟たちは将来の人脈作りも兼ねてパーティを組む。


当然、後ろ盾のない庶民は優先順位が低い。


二つ目。


僕が紐付き組だから。


卒業後に辺境へ戻ることが決まっている僕を引き込んでも、自派閥の戦力にはならない。


そして三つ目。


エルの見た目だ。


金髪碧眼。


貴族みたいな外見。


なのに出自がよく分からない。


結果として、


「面倒事に巻き込まれたくない」


という理由で距離を置かれている。


本人に言わせれば理不尽極まりない話だろう。


まあ、僕たちは別に困っていない。


辺境で実戦経験を積んできた。


魔獣討伐にも慣れている。


二人でも十分やっていける。


むしろ足並みを揃える必要がなくて楽なくらいだ。


ただ――。


「連絡事項くらいは回してほしいよね」


「それな」


教室の後ろでエルと顔を見合わせる。


現在進行形で困っていた。


今日の実習。


いつもは王都近郊の森で行われるはずだった。


ところが。


「本日の実習は南辺境領アッサママで実施する」


教官の一言で教室がざわつく。


僕とエルは顔を見合わせた。


聞いてない。


全く聞いていない。


「教官」


僕は手を挙げた。


「なんだ?」


「その話、聞いていないのですが」


教官は少しだけ眉を上げた。


「昨日の夜、転移陣に空きが出た」


「はい」


「そのため急遽変更になった。寮へ通達済みだ」


僕とエルは無言で周囲を見回した。


すると。


何人かがサッと視線を逸らした。


何人かは露骨に顔を背けた。


なるほど。


知っていたらしい。


教えてくれなかっただけで。


「……」


「……」


僕とエルは無言で顔を見合わせる。


まあいい。


今さら怒っても仕方ない。


「教官」


今度はエルが尋ねた。


「場所はどちらになりますか?」


「南辺境領アッサママだ」


「分かりました」


返事をすると、僕たちは少し後ろへ下がった。


辺境出身者同士の作戦会議である。


「アッサママってCランクの森だったよな?」


エルが確認する。


「うん」


僕は頷いた。


頭の中で地図と魔獣情報を思い浮かべる。


「平均気温は二十度前後」


「ふむ」


「主な魔獣はトレント系、ディア系、ベア系かな」


「じゃあ装備はいつもので十分か」


「そうだね」


僕は荷物を確認する。


「一応、虫系の忌避剤も持ってきてるよ」


「助かる」


エルが素直に頷いた。


そしてふと尋ねてくる。


「Cランク帯の討伐経験ってあるか?」


「サンダーディアくらいかな」


するとエルが妙な顔をした。


「それBランクじゃねぇ?」


「そうなんだけど」


「そうなんだけど?」


「肉が美味しいんだよ」


エルが呆れた顔になった。


「また食い物か」


「大事だよ?」


「まあ大事だけど」


「北じゃ見つけたら取り合いになるし」


「Bランク魔獣取り合うって怖ぇよ」


エルが本気で引いていた。


でも本当に美味しいのだ。


仕方ない。


「エルは?」


「オウルベアならある」


「C+だね」


「じゃあ大丈夫だな」


互いに討伐経験は十分。


問題はない。


「アッサママにも美味しい獲物いるといいよね」


僕が言うと、


「お前本当に食うことしか考えてねぇな」


とエルが笑った。


「近場の森なんてセンチピードばっかりじゃん」


「あれは素材になるだろ」


「防具とか錬金術素材とかね」


「高値で売れるし」


「でも食べられない」


「それはそうだ」


二人して頷いた。


そんな話をしているうちに集合の号令がかかる。


教官の指示で全員立ち上がった。


向かう先は学園中央部。


転移塔。


王宮、王立騎士団本部、そして学園を繋ぐ大型転移陣が設置された特別な施設だ。


僕たちは塔の内部へ入り、巨大な転移陣の描かれた部屋へ移動する。


青白い光が床一面に広がっていた。


何度見ても見事な術式だ。


思わず見入っていると、


「おい」


エルに肩を叩かれた。


「また魔法陣見てる」


「だって綺麗なんだもん」


「魔法馬鹿め」


否定できなかった。


やがて教官の合図が響く。


転移陣が起動する。


足元から光が溢れた。


視界が白く染まり――


次の瞬間。


僕たちは南辺境領アッサママへと転移した。

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