第27話 2年生になりました
二年生、新学期。
王都の春風が吹き抜ける中、僕たちの学園生活は「専門性」という新たなステップへと踏み出した。
二年生からは選択授業が大幅に増える。
僕は、各地での経験からその重要性を痛感した『魔法陣学』と『魔導具造形学科』を選択。
エルは、「効率よく体を動かしたい」と、あいつには一番似合わない理論重視の『身体操作系魔法の論理と実戦』を選んだ。
これらの授業は二、三年生合同。一学年上の先輩たちと肩を並べて学ぶことになる。
僕が『魔導具造形学科』の工房へ足を踏み入れると、そこは火花の散る音と油の匂い、そして異様な熱気に包まれていた。
「……おやぁ!? 君、その手に持っているのは『キョウオジンの溶岩塩』を触媒にした発熱回路じゃないか! 素晴らしい、実に変態的で素晴らしいよ!」
声をかけてきたのは、瓶の底のような分厚い眼鏡をかけた三年生の「ヴィクター先輩」だ。
自他共に認める魔導具オタクで、僕が「北の低温環境でも作動する魔導コンパス」の構想を話すと、よだれを垂らしそうな勢いで食いついてきた。
「いい、最高だ! 私の理論と君の実戦データを合わせれば、世界を変えるガジェットが作れるぞ!」
意気投合した僕たちは、初日から工房の隅で怪しい設計図を広げて盛り上がってしまった。
一方、エルの方はというと……。
「……くっ、この数式、どうなってんだ。俺の筋肉にどう流せばいいのかさっぱり分からねぇ……」
実戦では無双するエルも、身体操作の「論理」の前ではただの迷子だ。そんな彼に、隣の席から消え入りそうな、でも一生懸命な声が聞こえてきた。
「あ、あの……! そこは、魔力の流速を……えっと、2倍、じゃなくて1.5倍……あわわ、ごめんなさい、ええと……」
見上げると、そこにはエルよりも頭二つ分は小さい、小柄な三年生の女子先輩がいた。彼女がミレイユ先輩だ。
「……あ、あの、私が教えるなんて、お、おこがましいんですけど……でも、そのままの流速だと、エルさんの立派な筋肉が、その、オーバーヒートしちゃう気がして……ひゃっ、睨まないでくださいぃ!」
「睨んでねぇよ、困ってるだけだ。……あの、ちっちゃい先輩。頼む、教えてくれ」
「ふぇ……は、はい! 頑張りますぅ……!」
エルが頭をかきながら教えを乞うと、ミレイユ先輩は顔を真っ赤にして、一生懸命に教科書を広げてくれた。
理論派の彼女は、あわあわしながらも説明し始めると専門用語が止まらなくなるタイプらしい。
「エバー、俺、この先輩に教わってると、なんか自分が凄く悪いことしてる気分になるんだけど……でも、説明はめちゃくちゃ分かりやすいわ」
「ミレイユ先輩を泣かせないように頑張ってね、エル」
新しい仲間、新しい知識。
中々楽しみだ。




