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閑話・ミヤコ君とピエトロドレッシング

ちと長め。


秘密の県民ショーというテレビ番組を見てて、ピエトロドレッシングの話題に衝撃を受けたので書いてみた閑話。

ナスと挽き肉の辛みスパゲッティが好きです。

セブンのコンビニパスタにも採用された最強パスタですの。

タラコもうまうま。

みんな食べてー。

ピエトロ度烈震はゆめタウンによく売ってある。

 それは黒江家での昼下がりの一幕。


「父さんが無駄に野菜送ってくる」


 ぶうっと頬を膨らませてユカリが言う。

 そのユカリの目の前には、五箱ものトマト。

 規格外品なのか、大きさも形もまちまちだ。


「美味しいのはいいけど水っ腹になるんだよ!」


 むきーっとわざとらしく怒って見せるユカリに、ツバキとコハナがうんうんと頷く。


「数が多すぎる。加減して、って言っても聞いてくれない」


「分かります。トマトばっかりは辛いです。せめてナスもほしい」


「ピーマンとかパプリカもあったら完璧なんですけどね」


 加熱調理に向いた野菜がもっとほしいと言う二人に、ユカリが足元に置いていた箱を持ち上げる。


「ズッキーニはあるんだよ」


 中にはちょっと収穫時期を見誤ったズッキーニ。


「ズッキーニかあ、ナスの代わりにするには癖が」


 コハナが箱の中を見て眉根を寄せる。


 そんな様子を音に聞きながら、ミヤコはさらにリビングの入り口に積み上がっている箱の中身を覗き見る。

 中身はねじ曲がったキュウリと摘果メロン。


「あ、そっちはビール漬けにする用だよ」


ビール漬けと聞いてミヤコはちょっと口をへの字に曲げる。

ミヤコにとってビール漬けはまだ大人の味た。


そんなミヤコの横にミクがちょこちょこと歩み寄ってくると、何を思ったか箱にズボッと手を入れ、一本の熟れていない、卵サイズのを抜き取った。

そしてそのままガブリと噛りつく。


突然のミクの奇行にミヤコはギョッと目を見開く。


「あ、ミクちゃん青いのはだめだって。お漬物にしてあげるからぺってしてペ」


ミクがメロンを齧ったことに気がついたツバキが、飛ぶようにミクに取り付くと、その手からメロンを奪い取る。

コハナもミクへと駆け寄り、手にした布巾を渡して口の中の物を吐き出させようとする。

熟れていないメロンは未加工だと味わい以前に口の中が痛くなることがあるからだ。

ミクは一瞬猫のフレーメン反応のような顔をするが、またも段ボールに手をいれると、今度はキュウリを取り出し、コハナへと掲げて見せる。


「ああ、うーん、まあそれならいいよ」


「いいよ」


相手の言葉の反復しかできないミクだが、その評定は雄弁で、コハナにキュウリを齧る許可をもらうと、とても嬉しそうに笑い頬を染めた。


「うん、よし、じゃあ今日のお昼ご飯はサラダスパゲティにしましょうか」


ミクが野菜やマメ、芋などの植物が好物なこともあり、ここまで野菜を求めるのなら、早速もらった野菜を使ってしまおうと決める。


 今日のお昼ご飯はサラダスパゲティ、そう宣言するコハナに、黒江家のリビングにいる者たちはだれも反対をしなかった。


 異能持ちの人間は一般人の四、五倍は食べるので、それに伴う野菜の調理も膨大になりがち。

 だからこそ身内から規格外野菜を貰えるのはありがたい事のはずなのだが、規格外野菜という事は、それだけで単純に調理の手間がかかると言う事だ。


「帯化してる!」


 ミヤコは異様に肥大化し、まるで腎臓のような形になった掌からこぼれるサイズのトマトを掲げる。

 その目はキラキラと輝き、珍しい物を見た喜びに満ち満ちていた。

 図鑑でしか見たことの無かった、植物の奇形。

 不気味や不安を煽る形であるはずのそれも、図鑑大好きなミヤコからしてみれば、一度は見てみたい面白現象だ。


「ああ、そういうの好きなんだな」


 異様に曲がっていっそ輪っかになりそうなキュウリをスライサーに当てながら、野菜の下準備を手伝うアセビが笑う。


「ふふ、面白い形の野菜はいいよね」


 そう言ってサツキが掲げたのは、まるで天狗の鼻のように小さな突起が付いたナス。

 ほんじつのちゅうしょくをサラダスパゲッティにすると決めてツカサに連絡したところ、追加で持って来られた規格外野菜だ。


「父さんがまだまだあるから取に来たら幾らでも渡すってさ」


 放置放任、それなのに愛情は重いという謎のムーブをかます、コミュ障な父の精いっぱいの愛情の一端。

 それが食べきれないほどの野菜である。

 ツカサとユカリとアセビの実両親は、以前から三人が食うに困らないのだったら何をするでも構わない。食べていけなくなった時だけは頼りなさいと言っていたので、有言実行ではあるのだろう。


「玉ねぎは規格外じゃなくって、一緒にやってる人が作ったやつの保存したやつだってさ。サラダ玉ねぎじゃないから、生で食べるなら水にしっかり晒した方がいいらしいよ」


 玉ねぎの皮を剝きながらツカサが父から聞かされた注意事項を口にする。

 量が量なので今日黒江家にいる全員での下準備だ。

 キッチンでツバキ、コハナ、ツツジが作業をし、ダイニングでミヤコとミクへの料理指導をかねて、ツカサ、アセビ、ユカリが野菜を切っている。


「大丈夫、今日はナスとズッキーニと一緒に油通しして盛るから」


 ツツジがキッチンからそう声をかける。


「あ、そうなの? おっけーおっけー、じゃあ櫛切りにしとくねー」


「しとくねー」


 気軽に返事を返すツカサ。ついでに追従して元気よく玉ねぎを掲げるミク。

 ツカサとツツジ、二人の間には何かしらのわだかまりがあるようには見えない。

 最初の頃に比べて随分と黒江家の三兄弟とツカサとの確執は薄くなったようだと、ミヤコはピーラーでナスを虎柄に剥きながら思う。


 今までツカサは黒江家にあまり帰ってこない生活をしていたらしく、三兄弟と顔を合わせてもこんな風に一緒に食事を作ることも摂るという事もほとんどなかったらしい。

 ミヤコのために、という名目でしょっちゅう黒江家に来るようになったツカサとユカリは、その分加速度的に兄弟間のわだかまりを解いているように見えた。


 良い事だと思うので、ミヤコはちょっと楽しくなりつつナスを剥く。

 剥きすぎてペンシルストライプのようなナスになってしまったのは御愛嬌だ。


 ナス、ズッキーニ、玉ねぎを油通しし、トマト、キュウリはスライス。

 千切ったレタスと水菜はしっかりと水を切り、お好みでトッピングできるように小口に切った分葱と、イタリアンパセリとバジルと紫蘇をそれぞれ千切りにした薬味も用意する。

 こちらのハーブ類はミクの渾身の栽培だ。

 牛のひき肉を醤油と酒と砂糖で甘辛いすき焼き風の味付けにした物を用意する。

 シーチキンをマヨネーズで和えたものや、茹で玉子もある。


「うんうん、いい感じ」


 そうして用意した具材を、ドンとてダイニングテーブルに並べて、氷水で締めたパスタをそれぞれが座った席の前に並べる。

 コハナはおかわり用の麺のサーブ係なので一緒のテーブルにはつかないが、先に食べ終わったらツツジかツバキが今度はサーブ係を変わる予定らしい。


 ミヤコは目の前の素パスタを前にちょっと首を傾げる。

 サラダスパゲッティと聞いていたが、この後の味付けはどうするのだろうか?


「じゃあ、食べようか」


 そう言ってキッチンからお盆にドレッシングを乗せて来たユカリ。

 お盆の上にはミヤコの記憶に朧に残る見覚えのあるドレッシング。


「あ……知ってる」


 ミヤコは驚いて目を見開く。

 それは七年前に両親がまだ生きている頃、野菜を食べるのを嫌がったミヤコのために、母が探してきた酸っぱくないドレッシング。

 ドレッシングの酸味は野菜の青臭さを押さえるには必須だが、味覚の鋭敏な幼子にはどうしても酸味が強すぎるきらいがある。

 ミヤコも例にもれず酸味の強いドレッシングを受け付けず、サラダが嫌いな子供だった。

 だが、この母が探してきてくれたオレンジ色のキャップの付いたドレッシングは、ミヤコでも問題なく食べられたのだ。


「あ、知ってる? ピエトロドレッシング。九州ローカルのパスタ屋さんのドレッシングだよ」


「パスタ屋さん?」


 ツカサがニコニコと笑いながら説明する。

 九州は福岡発のパスタレストラン、ピエトロの売り出している非加熱ドレッシング。

 風味豊かで酸味が抑えられた、食べやすい一品。

 オレンジのキャップの和風ドレッシングが最も知られているのだろうが、他にも、梅やうま塩、玉ねぎやゴマも用意されていた。


「好きな野菜を盛り付けて、好きなドレッシングかけて食べてね」


とのことなので、ミヤコはさっそくレタスとトマトとナスをパスタに乗せ、たっぷりと和風ドレッシングをかけた。

 懐かしい味に少し鼻の奥が痛くなるが、ミヤコはグッと涙をこらえる。


「美味しいです」


 美弥子の言葉にユカリとコハナが揃って「でしょう?」と笑う。


「挽き肉も美味いんだぞ、食え食え」


 アセビがミヤコの方へと挽き肉入りの鉢皿を寄せる。

 ミヤコは言われりるままに挽き肉も追加でトッピングをした。


「これも美味しいです」


 サラダに挽き肉とは思いもかけなかった新しい味わいに、ミヤコはさらに目を輝かせる。


「ピエトロのイチオシメニューからヒントを得て作りました。うちのパスタではよく使うんだよ」


 とツツジが嬉しそうに教えてくれる。


「これかけるともっと美味しいです」


 と言って持ち上げて見せたのは、タバスコよりも少し大きめの赤いパッケージのビン。


「辛いんですか?」


「ちょっと」


 ツツジはちょっとと言うが、その横でツバキが首を横に激しく振るので、たぶん結構辛いのだろう。


「カレー好きでもちょっと落ち着いて食べられるか見極めた方がいい程度には辛い。メーカーによってまちまちな辛口カレーの辛い方くらい」


ツツジがいたずら心で勧めてるのか、それとも本気でダイジョウブと思ってるのか分からなかったが、ユカリがフォローするようにくれた情報で、ミヤコはツツジが勧めるチリと書かれたその調味料を試してみることにした。


「少しだよ、無理にイッパイは危険だよ」


「危険だよ」


 ツカサの注意に、何故か真剣な顔で追従するミク。

 チラリトムケラレタ視線はアセビに。

 過去に何かあったんだろうなと思いつつ、ミヤコは赤いビンの中身をサラダスパゲッティにふりかけた。


 その後ミヤコはちょっと後悔をした。

 辛い物が平気な人のちょっとは絶対に信用してはならないと、強く心に刻み付けるのだった。

ピエトロは福岡発のスパゲッティレストランのチェーン店ですが、熊本でも美味しくいただけるのです。

森野は光の森かダイヤモンドシティだったゆめタウンに出没します。

地名や施設名がファンタジーですが、いいえいいえ、これはごくごく普通の熊本の地名と施設名です。

平成キラキラ期の名残豊かな、ポジティブネーミング地名です。


親類に詳しい人がいる森野からの裏情報です。

熊本のキラキラ地名は元農地である可能性が異様に高いです。宅地造成の法律が変わった時期に宅地転用した土地が多いのです。

平成の闇。

水害、土地の浸水、地震などによる液状化の心配があるので、できれば移住する際には避けた方がいい地名ですが、所謂ニュータウンの要素を持ってる土地なので、めっちゃ利便性が良かったり、小学校が充実してたりします。

数度の水害と地震を経て、結構近年は災害に強い地域に進化しつつあるので、まあ悪くはない土地です。

というか近年熊本は一部地域が妙に値上がりしてるのです。

でもここ十年内に値上がりした地域は、治安が不安定なのでお勧めできません。

出も住むならここって言える土地も森野的にはなかなかないんですよね。

尖った性能はあるけど、汎用的に誰にでも住むことお勧めできるよ!なんてなかなかないのです。

あ、でも合志は結構お勧めかも。

……バスの時間さえあればだけど。

あと政治デモが近辺で起きる事を気にしないなら、健軍とかも結構いいかもです。起きるんだけどね、政治デモ。

子飼とかもいいです。はい、森野商店街が好きなのです。

子飼と健軍の商店街面白いですよ。子飼とか地理と合わせてみると、戦後の闇市から発症したってのがよくわかるエモスポットです。

日本初のスクランブル交差点もあります。

ラフカディオハーンや夏目漱石も歩いたかもしれない?そんな場所なのです。


最近熊本への愛と破壊衝動を書き散らせてなかったので、ここぞとばかりに放出中。


本日の更新はここまで。

明日は一回更新です。

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