表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
396/398

387.夜のお仕事は終わり

 警察職員たちを伴って、それまで後方で各所と連絡を取り合っていたトラが、巨大アメンボの死骸のある場所へと来た。


「ツカサちゃん!」


 無事かと問うよりも先に、トラはツカサを思いきり抱き締めた。

 黒江家の人間はふとした瞬間にすぐに死んでしまう。特に本家の人間の早世の多さは異状だ。

 だからこそトラはもう二度と主人を持つまいと思っていたが、やはりそれでも黒江家の人間だからか、結局ツカサを主と定め奔走してきた。

 その主が無事であることを確かめて、思わず行動してしまっていた。


 ツカサは抱きしめられながらふふと声に出して笑う。

 ツカサにとってトラは、実の親よりも長く世話になってる相手。こうして抱きしめられるのも何も初めてではない。


 それこそ、右の手足を失った後に初めて会った時も、トラはツカサを抱きかかえてわんわんと泣いたのだ。

 つられてユカリも泣きじゃくりながらトラと一緒にツカサを抱きしめて、一塊になって病院のベッドで少しだけ寝たのはいい思い出だ。


 ツカサは両親とは仲が良いとは言えない。

 ツカサが死ぬことに対して無頓着であるが故に、他者の死に関して怯える二人と反りが合わなかった。

 致命的なまでに、両親にとってツカサは理解できない子供だった。


 だからといって愛情が無いわけでもなく、すぐに死にそうになる息子に、両親は自分達以外の人手を付けてきた。

 その一人がトラだった。

 だからトラがツカサを思い心を砕いてくれる度に、ツカサとユカリは両親の気持ちを感じていた。


 だが、仕事は仕事なので、両親の死にたいする考え方は理解はしても、ツカサ自信が自分の物とすることはない。


「あ、トラさん、対象の巨大生物とりあえず動きを完全に止められたけど、死んでるかどうかわからないから、とどめの処理警察にお願いしていい? あと度の状態までなればもう動かないとは思うけど、もしもあれでまだ生きていて動くようなことになったら困るし、できる人がいるなら脚は全部取った方がいいと思う」


 今はまだ仕事中だからと、自分を抱きしめる親戚のオジサンを引きはがし、ツカサはトラの後方にいた警察職員たちにも聞こえるように説明する。


「あー、はいはい、そうね、うん」


 振り返って、トラはそこに既知の姿を確認すると、にまっと上機嫌な笑みを浮かべる。


「という事なんだけど、お願いできる?」


 説明を丸っと放り投げて、今見聞きしたことで事情を察しろとばかりのトラの言葉に、最初にトラと連れ立って来た警察職員とは違う、トラと同年代の男が三白眼を吊り上げてトラの額に拳をぶつける。


「おいトラ、そういうの横着するなよ。クロエに言いつけるぞ」


「えー、やめてよお、お叱りSMS来ちゃう」


 そのやり取りだけで、その男が黒江家の関係者であり、トラとも親しい中であることが伺えた。

 ツカサはそれなら任せてしまってもいいやと、アメンボからは離れた場所で待たせていたサトルの事を気に掛ける。


「……連絡先分かってるし、もうこの場所離れていい? 身内で大怪我してる人がいるんだよ。腕が無くなっちゃって」


 腕一本切断している。

 止血をし、傷口を塞いだとはいえ、それまでに流れた血の量は十分に人の命を脅かすに足る。

 ましてサトルは意識をはっきりさせておくためにと、痛み止めも飲まずに作戦に参加していたのだ。

 早く病院に運んでやらなくてはとツカサは答えも聞かずにトラたちの通り横を過ぎようとした。

 しかしトラと親し気な三白眼の男は、ツカサの手を掴み待ったをかける。


「ああ、いや、死人がいる以上、事情聴取があるからすまないが君はここに。怪我人は救急車で運んでくれ」


 ツカサはぎゅうっと眉を寄せ、言葉を飲み込んで仕方がないなと頷く。

 その男が死んだ瞬間に立ち会ったのは、ツカサとサトルの二人のみ。

 確かに状況を詳しく聞く相手はツカサしかいないだろう。


 ツカサはぐるっと視界を巡らせ、コトエもまた一緒にここまで来ていたことに気が付く。


「ああ、そ、分かった。 コトエさんちょっとサトルの病院の付き添いお願いね。僕たちはまだ事後処理があるから忙しくてついてけないっぽい」


 仕事を任せるならコトエが良いと、ツカサはサトルの事をコトエに託す。


「はーい、分かりました。受け入れは……三毛氏の病院で?」


 三毛氏の病院、とわざわざコトエが言ったのは、三毛氏が黒江家の傘下にある一族であり、その三毛氏の運営する病院はシオリのような異能持ちの人間と秘密裏の協力体制を作っているからだ。

 サトルの右腕が無くなっていることをコトエは知らないが、サトルがツカサと組んで仕事をすると高確率で死にかけることは知っているので、今回も自分が思う以上に大怪我をしているとコトエは踏んでいた。


「うん、黒江家のって伝えてもらえばいいから」


「はいわかりました」


 ツカサが黒江家の名前を出して特別扱いを求める辺り、やはりサトルの状態はよろしくないのだなとコトエは神妙に頷く。


 それからしばらくして救急車が現場に到着し、サトルが運ばれることになった。

 付き添いとしてコトエが付いて行く。

 ツカサは惜しむようにサトルを見送る。

 傷病者を運ぶためのストレッチャーに乗せられたサトルが、息を吐くようなかすかな声でツカサに謝罪をする。


「……ツカサ、悪い、先に離れる」


 まだ仕事は完全に終わっていないのにと、白い顔で謝るサトルに、ツカサは泣きそうな顔でいいんだよと返す。


「お疲れ様。ありがとう……ごめんね、弱い俺で」


 サトルが乗せられた救急車が現場から離れていくのを見送って、ツカサは両の手で顔を覆って大きなため息を吐いた。

本日の更新は.......あと一回閑話を書くつもりです!

本日(日付変わる前だから昨日だけど)見たテレビ番組がショックだったから、気の向くままに書きます。

色々間に合わなかったら明日になります。

だから本日と明日の更新回数は不定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ