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385.突然の死

GW中は家の中でいじいじしてる森野です今晩は。

身内を跨いで痛めた膝はまだ痛いです。

にんげんを跨いじゃいけないよ、っていう教訓です。

よゐこは人間を跨いじゃいけないよ。

 魔法でかなり軽量化して取りまわしやすくしてあるはずなのだが、ツカサは触腕でワイヤーの端を掴むや、眉間に皺を寄せて呻いた。


「よし……っ、重いな」


 今のツカサの状態ならば容易に持ち上げることはできる重さだが、これを二つ抱えてアメンボの追跡に参加したマコトの膂力に今更ながら驚く。


「マコト腰やらないでね?」


 こんなの持ってたらぎっくり腰になりそうとマコトを気遣うツカサだが、当のマコトは鼻の頭に皺を寄せとても不機嫌そうな表情だ。


「そういう事はやる前に言え。いや言うだけ言って結局これを運ばせたのは変わらないなお前は」


 マコトの苦言は聞こえないふりで、ツカサはワイヤーの先端に付いているフックを使って、ワイヤーの先端を輪の形へと変えそれをアメンボの前にぶら下げた。


 触腕でアメンボの後方で頭上迄持ち上げた。

 ワイヤーはどう見えたのか、アメンボは触覚を忙しなく動かし体を揺らし警戒を露にする。


「あ、暴れそう……え?」


 ツカサがしまったなと思ったのもつかの間、アメンボは急に触覚を力なく落とし、長い手足を体の内側に巻き込むように折りたたんだ。


 ズン、と体の芯まで響く重い衝撃。

 アメンボが地面に落ちた。

 そう表現するしかない様子で、足を完全に折りたたんだ状態で、アメンボは胴体を地面へと投げ出していた。


 虫は死ぬと足が内側に折りたたまれる。

 それはさながら夏の道端に落ちている蝉の如く。


 しかし蝉はセミファイナルとネットで呼ばれる状態が存在する。

 力尽きて地面に落ちていたとしても、まだ息はあるため不用意に取り除こうと振れたとたん、全力で断末魔の大暴れをする。

 虫が嫌いな人間であれば悲鳴は必至の、夏の恐怖の象徴だ。


「あれ? 動かない?」


 ツカサ達はアメンボのセミファイナルに備えつつ、それでも当初の目的であるワイヤーをアメンボに掛ける作業を続けた。

 幸いにして足を払側に折り曲げていてくれたおかげで、その長い足を封じるようにワイヤーを絡ませることが出来た。

 関節を腹側に折り曲げた状態で固定すると、どんな生物も簡単には抜け出せない。

 それは巨大であろうが関係なく、この状態での拘束であればアメンボが暴れても、今いる周辺の地面を抉る程度で被害を押さえることが出来るだろう。


「おかしくないですか?」


 そう呟いたのは、いつの間にか冷気の魔法を止めていたサユキ。

 顎まで流れ落ちる汗をてのこうでぬぐいつつ、サユキは怪訝な様子でアメンボを観察する。


「ん? んー……」


 ツカサもまた黒煙を使い、アメンボの体をまさぐる様に触れて確かめる。

 先ほどまで確かにあった、体液であったり魔力であったりの流れが完全に止まっていた。

 外殻の内側で蠢動していた筋繊維の振動も感じない。


『虫なんだから、足が内側に折られて動かないなら死んでる可能性が高いんだが』


 状況は見えないまでも、聞こえる音声から現場の静かな混乱を察したサトルが、スマホごしにそう言う。

 ツカサはそれを受けて、思い切って黒煙をアメンボの周囲からその体内へと向けて進行させる。

 アメンボを追う前に見た呼吸口の位置を確認し、そこに黒煙を侵入させた。


 するりと、何の抵抗もなく黒煙はアメンボの体内に潜り込む。

 それは生命がある物の質感ではなかった。


「あ……死んだかも?」


 ツカサがおっかなびっくりアメンボの体を触腕でまさぐるも、アメンボはまるで動く気配がない。

 まさか暴れもせずいきなり死んでしまうかもしれないと、誰も考えていなかったのであっけに取られてしまう。


「……想定外ではあるけど、うん、茫然としてる場合じゃないね。トラさん後始末の時間だ」


 それでも事態が収束するのならと、ツカサはスマホを取り出しトラに連絡を取ると、警察に巨大アメンボの死亡を伝えるように頼む。

 流石にここまで巨大な異界の生物をおいそれと会社で引き取ることはできない。

 それに異界の虫なのだ、どこにどういう病原菌を持っているか分からないので、扱いは慎重になる。


 因みに、過去異界の生物が流入したのが直接の原因での疫病、という物は日本では確認されていないが、異界が由来の病気は確認されているので、一応の注意というところだ。

本日の更新もこれだけ。

明日も一回更新です。


セミファイナルアメンボなるか?

夏の物語なので、時々は夏の臭いを醸すのです。

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