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384.夜のお仕事と膠着

 アメンボが動きを止めている隙に、ガリバー旅行記の小人の国リリパットでの話のように、アメンボを地面に縫い付けることはできないだろうか、ツカサはそう考えたが、相談した相手から返って来た答えはそう簡単では無いと言う事だった。


「ワイヤーをかければ重機を用立てて重しにするくらいならできるとの事です。やりますか?」


 ユキがスマホでの通話をスピーカー状態にしながらツカサに問う。


「地面に固定は無理?」


 スマホの向こうからユカリと、一緒にいるサトルの声も聞こえる。


『出来るかなあ?』


『単純に大きさと重さがあるから無理だろう。亀蛇の皮膚のような硬い物を貫くだけの貫通力があるってことは、それを支える体重をあのアメンボ自体が有してると思う……重いのなら、それがただ横転するだけでも抑えこめはしないな。その点で言えば、痛覚が鋭敏で関節の自由度が低い哺乳類の方が抑え込みやすいんだが……』


 アメンボの体重が何トンなのか分からないが、少なくとも象やキリンよりも重いだろうことから、抑え込むために必要な力は、キリンや象を押さえこむ何倍も必要なはずだ。

 生物の動きを止めるには、その生物が振るえる力の何倍も必要となる。

 まして理性を持たないであろう虫であれば、無理に抑え込まれた状態を危険と察すれば、自分の体が損傷を受けるとしても暴れることを止めないだろうことが容易に想像できた。


 また異界産の巨大生物の血肉はその巨体が自重で潰れない様にするために、特殊な動きをするものが多いのだという。

 単純に力や重さだけでは抑え込めない。

 むしろ今回冷気を使っての行動阻害は、思った以上に巨大アメンボに効いているので、このまま完全な冬眠を目指した方がいいと、電話の向こうのサトルが言う。


「うーん、そっか、単純に大きいとか重さがあると無理か。いっそ殺傷兵器じゃないと対処できないのかな。サユキさんの体力が其れ迄持たないかもしれないし、そっちは諦める? でも今から警察にバトンタッチしても、このまま放置してたら冷気も拡散しちゃってアメンボ起きちゃうよね?」


 ツカサがそう言ってサユキを見やる。

 気温に反してサユキは汗だくで荒い息を吐いている。


「ワイヤーだけでもかけておけば、何かに使えるんじゃないか?」


 マコトは手にしていたワイヤーをも弄ぶように掴んで引きながら強度を確かめる。

 怪力とはいえ人間の手では到底千切ることなどできそうにない金属製の綱。

 見た目以上に頑丈で、実を言えばそれ一本で列車を吊り下げられる。マコトはそれをアメンボに掛けるだけかけてみろと言う。


 特に深く考えてはいないようだが、手をかける場所さえあれば、そのワイヤーを引いて物理的にアメンボの動きを牽制できると思っているようだ。

 それは実際にアメンボが移動する動きを見て、これならばできるとマコトが確信したからだろう。

 マコトの横でユキもそうですねと頷いているので、怪力の二人からすれば、あのアメンボにワイヤーを掛けることは有効な手段のように感じるらしい。


「雑だなあ。でもそれでいっか。もうこれ以上はこっちで対応するの難しいし、丸投げする予定だし……ちゃんとクロスノックス経由で依頼貰えれば、もうちょっと派手なことできるんだけどなあ……」


 怪力の異能は異能持ち自体が少ない中でもそこそこ人数がいる。

 そうした異能持ちは、その特性から警察や自衛隊に所属している事も多く、ワイヤーさえかけておけば、この後警察に後始末を押し付ける時にも役に立つだろうと、ツカサは自分を納得させる。


 しかしそれでも納得がいかないこともある。

 今回の仕事は、仕事という態を取ってはいるが、ほぼクロノス社の持ち出し、もっと言えばクロノス社に黒江家からの依頼という形を取っているので、ほぼツカサのポケットマネーで自作自演を行っているような物なのだ。

 もっと警察などの公的組織が、ちゃんと民間企業を利用してくれればいいのになとツカサは嘆く。


「お金かかるからやらないんじゃないですか?」


 身もふたもないユキの言葉に、ツカサはきゅっと唇をすぼめて拗ねた表情を作る。

 それで自腹を切らさせる自分は貧乏くじが過ぎると言う物ではないだろうか。


 ただツカサが拗ねたのはほんの一瞬。

 金銭を惜しんで世界の危機を放置するほど、ツカサは世界に愛着が無いわけではない。

 いや世界そのものはどうでもいいが、そこに住んでいる友人や弟達、せっかく見つけたミヤコには安全安心な状態で生きていて欲しいので、ちょっとくらい損をしても世界を守る事を止めることはない。


 ツカサはマコトにワイヤーを渡すように言う。


「よーし、頑張っちゃうぞ」


 あの巨体にワイヤーを掛けられるのは、ツカサの触腕のほかないので、頑張るのは必然的にツカサになる。

 自分は社長のはずなのにな、とやっぱりちょっと拗ねた考えが浮かんでしまうが、それでもツカサは世界を守るためにアメンボの拘束へと乗り出した。

本日の更新もこれだけ。

明日も一回更新です。

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