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309.サトルさんと夜のお仕事2

 サトルとユカリが夜の仕事に備えて食事をしていると、ツカサが社長室へと帰って来た。


「ただいまー。美味しそうな匂いがするー」


 社長室横の小キッチンで作ったレトルトや冷凍食品を合わせて加熱しただけの雑料理だが、一日中仕事に追われていたツカサにとっては、とても魅力的な匂いに感じているようだ。

 社長などという名前とは裏腹に、ツカサの日々の仕事は書類仕事や他社との折衝以外にも、現場に出て最前線での仕事も少なくない。

 そんなツカサの仕事のために、食事は絶対にかかすことのできない要素だ。


 サトルは苦笑しながら、ソファに座ったツカサに手拭きを渡し、先ほど作ってきたばかりの雑な料理を配膳する。


「スープの方はおかわりがあるから」


「ありがとー、サトルの大雑把な料理好き」


 褒め言葉とも言えない褒め言葉だが、これは本心からの好意の言葉だ。


「どういたしまして。で、食べながら仕事の話するんでもいいか社長?」


「いいよいいよ」


 ツカサはすぐにスープに口を付けながら適当に返す。

 よほど空腹だったのか、しっかりと味わうことも無く食べているように見えた。


「それで、夜間の立ち入りについてなんだが」


「許可取れた?」


 サトルとユカリ二人がかりの問いに、ツカサはちくわサラダを齧りながら頷く。


「ふぉへはふぉへは。むぐ、食べ終わったらすぐ行こう」


「分かった。口の中の物は飲み込んでから喋れ。行儀が悪いぞ」


 母親のように注意をしながら、サトルはツカサにペットボトルの野菜ジュースを渡す。

 気休めかも知れないが少しでも野菜を摂れというサトルの有難い教えだ。

 ツカサは自分を気遣うサトルに嬉しそうに目を細めながら野菜ジュースを受け取る。

 口の中を水分でのみ込んであらためて話をする。


「んぐ……ごめんなさい。それでさ、エーデルっていう聖女はまだ生きているんだよね? それの猶予ってどれくらいか分かる?」


「分からないな。ただミヤコ君の初目撃からもう二週間以上は経ってるからな……」


 ミヤコがエーデルの幽霊を見たのはおてもやん総踊りの日。八月二日だ。

 今は八月の十七日。


「飲まず食わずで生きていられる期間じゃないね」


 それでもエーデルを知るクロエとクロノはエーデルなら大丈夫だと言う。

 しかしそれもいつまでももつものではないだろう。

 少しでもエーデルの居場所に繋がるヒントはないかと、ユカリが今日ルイとクロエがエーデルから聞き取った、エーデルの体のある場所から見える景色を整理する。


「だいたいの方角は、下通入り口から見て熊本城方面周辺、厩橋付近か、もしくはその向こう。頭上に光の見える狭い場所らしい。そんな場所それこそ落ちるようなしぐさをしていた事を考えて、落とし穴のような物かと思うけど……井戸とかかなあ?」


 手にしたタブレットを見ながらそう言うユカリに、サトルは悩まし気に額に手を当て考える。


「井戸って……熊本城付近指さしてたし有り得そうなのがなあ」


 熊本城の敷地は某千葉の夢の国と海を足したワールドの敷地面積とほとんど変わらず、その広い範囲に数十の井戸跡が残っている。

 この井戸跡は全て人が落ちないように金属の重い蓋がしっかりと固定されており、また一部の井戸跡は過去の地震の影響で崩れやすくなり、一般の人間は立ち入ることのできない場所にある。

 熊本城の管理は市が担っており、協力して井戸の中を調べるとなると、それなりに時間がかかるだろうと思えた。


 ユカリはタブレットで熊本城の井戸に付いて書かれたウェブページを探し出し、それを眺めなら柄ため息を吐く。


「あり得そうだし何処探せばいいのか迷うねえ。あそこ井戸多いし」


「探すにしても今日は無理そうだな。先に世界の罅と原因の究明と対処だな」


 ユカリのタブレットを覗き込み、サトルもすぐには無理だと結論付ける。

 代わりに今日やるべきことをと、自分が感じ取ったものを話す。


「鶴屋付近の世界の罅は地獄の花が原因だろう……屋上付近に小さいながら罅があった。ミヤコ君も気にしていたようだから、きっとあの場所......給水タンク付近にもあるんだろうな。原因と言うか、予想の話になるが下手をすれば毒物混入事件だ。警察には事前連絡しっかりする事、いいな?」


 真剣なサトルの言葉に、もちろん大丈夫とツカサは大きく頷く。


「既に連絡済。あ、もしこれで因果関係分かったら、巻き込まれ一般異世界人は警察経由で役所と連携してもらえるかも。そしたら人手も伝手もそっちの方が楽かなあ」


「そうだねえー、警察ちゃんと動いてくれればねえ」


 ユカリがツカサの言葉に追従する。

 でもその警察を動かすには、まず確たる証拠を見つけなきゃいけないんだと、ツカサは大きく肩を落とした。


 嘆いたところでやるべきことは変わらないだろうと、サトルは淡々と話を続ける。


「人の流れは歌姫に協力仰いである程度コントロールしてある」


「よく動いてくれたね」


「そのうち交換条件が提示される予定だ」


 歌姫に働いてもらう交換条件を想像し、ツカサはソファに横倒しになって嘆く。


「はあ……付かれる仕事が後から追加されるってもうさあ、僕今年も夏休み一切ないんだよねえ」


 事件が起きれば仕事が増える。

 立て続けの事件にツカサは休みが欲しいと嘆く。


「……別に本気で進んでブラック企業してるわけじゃないんだよね」

本日の更新もこれだけ。

明日も一回更新です。


ほぼ描写は無いのですが、歌姫にもモデルにした人がいます。

高森の歌のお姉さん。

伸びやかな歌声が素敵かわいいディーヴァです。

本日は競輪場のイベントに出演予定らしいにですが、森野は残念ながら見に行けない。

悔し涙で枕を濡らすのです。

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