304.ジェスチャーゲーム
幽霊こと、聖女エーデルを助けるということに否やはない。
サトルはそのためまずはエーデルの今の体の方の状態を確かめることにした。
「エーデルはこう見えて百歳超えてるんだわ。人生の半分を昏睡してる状態で過ごしてるせいで、身体が歳を取らなくなったらしい。聖女としての力っていうのかね? まあそんなんだから命に別状はないんじゃないかと思うと言うか、大きな怪我がなければ命だけは守れるっつうかな。随分前からここらにいるってことは、身体の方は昏睡状態で、魂だけ飛び出て来たんだと思うんだ……以前からそういう奴だったから。ただその頃は幽霊の状態を俺たちが見るってことはできなかったんだよな」
そう苦く笑いながら説明するクロノ。
エーデルが生霊のような状態になるのは元からの事だったらしい。
「彼女なら有りえる、なのか」
しかしクロノはそんな生霊のエーデルを今までは見ることが出来なかったという。
クロエもそれに追従する。
「そう言えばそうだね。エーデルを見るにはかなり神経集中して魔力を行使しなきゃいけなかったよ。ただ全く見ることができないわけではなかったから、今見えてることが不思議と言うわけでもないかな? ほら、こちらの世界は魔力の代りに食事で賄っているからね」
質問役は変わらずルイ。
『エーデル様の御身体がいらっしゃる場所は分かりますか?』
エーデルは首を横に振り、掌で両の目を隠す。
「分からない……目を隠す? 周りが見えないと言うなら暗い場所ですかね?」
連想ゲームみたいだと称しながらイクミが意見を述べれば、それを拾ってルイが次の質問を口にする。
『暗い場所でしたか?』
エーデルは頷き、さらにジェスチャーを続ける。
身をよじる様に体に腕を密着させ、もぞもぞと動いて見せる。
「んー、何か狭そう?」
まるで狭い隙間に入り込んだ時のようだなとミナミ。
ルイはそれを質問にする。
『狭い場所ですか?』
頷くエーデル。
「どっかの建物の隙間とか?」
『建物の隙間などにいると言う事ですか?』
ミヤコが問い、ルイが通訳すれば、エーデルは首を横に振る。
「野外かどうかを聞いてみたらどうかな?」
言ってシオリは空を指さす。
「建物はたぶん形状が異世界とは違うだろうし、どういう場所にいるかってのは質問だけでは絞り切れないと思う。でも空が見えているかどうかで、外かどうかは分かる気がするんだけど」
シオリの言葉にサトルたちはなるほどと頷き、ルイがまた質問をする。
『空の見える所に居ますか? いるとしたら、それはどのように見えていますか?』
屋根の下なのか、窓のような場所があるのか、それとも一切見えていないのか。
ルイの質問に、エーデルは大きく頷くと手を上げ空を見上げ、自分をすっぽりと覆うほど大きな四角を頭上に空に描く。
真上を見上げて手を伸ばす。
「落とし穴にでも落ちたみたい」
ミナミのつぶやきに頷く一同。
サトルだけが口に手を当てぶつぶつと呟いている。
「暗くて狭い場所……落とし穴……」
次の質問が出てこないようなので、ルイは自分が気になった事を聞いてみる事に。
『いつ頃からこの世界にいらっしゃるのですか?』
エーデルは何時から、という具体的な数字をどう表現するべきか悩んでいるようで、サトルと同じように口に手を当て俯き考え込む。
しばらく考えて、何か思いついたのかルイの前に掌を掲げ、一、二、三と数えるように指折り数えていく。
二十に少し足りないくらいを指を折って数えるエーデル。
ミヤコが初めてエーデルを見たのは今から二週間と少し前。
初めて見た時のエーデルは、この世界に来たばかりだったのだろうことが分かった。
本日の更新もこれだけ。
明日も一回更新です。
暗くて狭くて頭上に空が見えてて熊本の中心市街地にある、ええあれですね。
はい、森野も大好きあれです。




