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302.幽霊とお話合い

「あちらの世界のシロノさんに質問、こちらの世界の言葉って通じるんですかね?」


 それはシオリの極々冷静な問い。


「さあな?」


 今日はただひたすらサトルに張り付くことを役目と定めていたシロノが、名指しをされたのでその分だけそっけなく答える。


「俺とアレはわざわざ覚えたが」


 あれと言って前脚で指すのはクロエの背中。たぶんクロノを指さしているのだろう。

 つまり異界から来たばかりの存在が、そうそうこちらの世界の言語を理解するはずが無いと言う事。


 シオリとルイが顔を見合わせ頷く。


「ちょっと話しかけてきます」


 あちらとこちら両方の言語を習得しているルイが通訳を買って出る。

 クロノに釘付けになっている幽霊の傍に行き、クロエへと話しかける風を装いながらも、視線をちらりと幽霊へと向け迂遠に問う。


『もし、偉大なる精霊クロノ様、あちらの方は貴方様はもしや嘆きの聖女、エーデル様ではございませんか?』


 クロノはルイの顔を見上げ、鼻をひくひくと激しく動かしながら頷く。

 その様子を見た幽霊は、その場で膝を付くと、敬虔な信徒ですとでも言わんばかりに手を組み頭を垂れクロノへと祈りの姿勢を取る。


「やっぱりエーデルさんなんだ」


 クロノを正しく認識しているとしか思えないその動きにミヤコは感心する。


 が、しかし、それらを一切目視できない者たちもいる。

 シオリ、イクミ、ミナミは何が起こってるのかわからないと言った様子でただぼんやりと成り行きを見守るしかない。


「何か起ってはいるんですよね多分」


「見えん」


 何か見ることはできなくても、状況確認できる応報はない物かと頭を悩ます二人に、ミナミは忘れていたと鞄からタブレットを取りだす。


「あ、ユカリさんからコレ預かってる」


 会社の備品の方のタブレット。中には幽霊観察アプリ入りだ。

 幽霊の姿が見えない三人はさっそくそのタブレット越しに幽霊を確認するが、そこまではっきりとした形で見えるわけでもないので、その場に膝を突いている幽霊の動向はあまり分からなかった。


「これ、動いてる幽霊相手以外だとあんまり意味ないですね」


「うーん」


 幽霊を目視できる異能持ちの人間がいる場合、アプリより人間の方が優秀なようだ。


「この結果はユカリさんに伝えた方がいいのかな?」


「そうだね、使い所に付いては気にしていたし、報告書にしっかり書いておこう」


 アプリの改善点に付いては会社に帰ってからの報告と決め、結局タブレットではなく肉眼で、クロエやルイたちの動向を見て対処を決める事にするミナミとイクミ。

 いつでも動けるように、タブレットはシオリに任せ、二人はクロエの横に付く。


 サトルもシオリとミヤコを誘導し、幽霊を囲むようにクロエたちの傍による。

 それぞれが会話をしている風を装って、幽霊に話しかけるルイやクロノをごまかすためだ。


 クロノが幽霊に問う。


『この言葉なら通じるんだな? お前喋れるか?』


 幽霊が首を横に振る。


「クロノ様が喋れるかと聞きました。エーデルさんが会話をするのは無理っぽいですね」


 ルイがクロノの質問と幽霊の答えを合わせて説明をする。

 さらにクロノが問う。


『じゃあ、どこにお前の死体があか分かるか? こっちの世界に死体も来てるんだったら』


 幽霊が死んでいる前提の質問に、食い気味に首を横に振る。


「クロノ様はこちらに死体があるのかと問いました。エーデルさんは違うって言いたいみたいです」


 幽霊はルイの説明には反応を示さないので、間違いなく向こうの世界の言葉でのみ、意志疎通ができると言う事だ。

 幽霊が何をしようとこの場にとどまっていたのか、はっきりとはしないが、少なくともこちらの人間に害意があっての事ではなかったのかもしれないと思えた。

本日の更新もこれだけ。

明日は熊本城マラソンがあるので更新いたしません。

別に出場はしないのですが、応援に行くので余裕がないのです。

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