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298.その男人にあらざるや

 ドッペルゲンガーのルイ。

 突如として湧いた厄介毎の種に、しかしユカリをはじめとしたクロノス社のワーカホリックたちはこれこそはという有用性を見出した。


 結果、調子に乗ったユカリが人権を無視したような横暴を働き、サトルが静かに切れ散らかした。

 サトルは女性の扱いに対してとても紳士なのだ。

 だからユカリを叱る時も決して声は荒げないし、ユカリ個人の人格否定をすることはない。

 ただ、ひたすら正論を刷り込まれるので、地味にダメージがある。


 そしてそんな精神的ダメージでしおれたユカリのケアとして、しばらくこの場を離れる名目込みで、ミヤコとシオリとクロエを黒江家へ送って行くことを命じられた。

 そのままユカリも本日の業務はおしまいで、帰っていいと言われたので、しおれたままのユカリはその言葉に甘えて帰宅した。


 そしてクロノス社に残されるツカサ、サトル、それと姿はシオリと同じくらいの年齢に合わせたルイ。

 見た目は中学生ほどだが、異世界の人間と言う事も有り、警察に対して保護すると報告した場所から移せないからだ。


 クロノス社にある宿泊用の設備、その利用目的の一つ。異世界から意思疎通ができる存在が来た時に、人道的な保護が出来るようにするため。

 異世界から流入にした存在に対して絶対のアドバンテージがあるツカサがすぐ近くにいるので、何かあった時も対応できるようにしている。


 自然、異世界人が保護された場合、ツカサは家に帰らずクロノス社に宿泊する必要があった。

 ツカサはちょっとため息を吐く。


 ユカリたちの車が帰って行くのを窓から確認し、サトルは行ってくると社長室を出ていく。


「ちょっとシロノを迎えに行ってくる」


「あ、行ってらっしゃい。って、シロノ何処にいるの? なんか世界の解析班の人が迎えに来て連れてったよね。朝から帰って来てないから心配は心配だったんだけど、シロノはサトルがいないとほぼ無気力でしょ?」


「ああクロスノックスの方だ。ちょっとした実験の付き合いをしているらしい。緑川家の薬草園の薬草を引き渡す次いでにシロノを迎えに行ってくる」


「んー分かった行ってらっしゃい」


 サトルが出ていき、足音が遠ざかったのを確かめて、ルイが口を開いた。


「……あの、すみません、取り乱してしまって」


 何の謝罪だろうと一瞬分からず首を傾げるツカサだったが、たぶん下着の問題の事だろう。

 態々下着と指定して恥ずかしがらせるくらいならと、明言せずにぼかして答える。


「べつにいいよー。ユカリが暴走しちゃったのが悪いんだものね。こちらこそごめんね? ユカリはこちらの人間の人体に造詣が深いから、逆に人間っぽくないって判断しちゃった相手に雑な対応になっちゃうんだよ。意思疎通が出来ているはずなのに、どこか物のように扱っちゃうとかね」


 物と言うか実験動物のような感じだったと、ルイはちょっとげっそりする。

 体のサイズを細かく変える実験や、つむじの位置や手の指の長さなど微妙な部分も買えられるのか、自分とシオリを混ぜ合わせたような容姿は再現可能か、等々、色々なことをやらされた。

 その結果、これはかなり危険な情報だから、そもそも記録に残さない方がいいねと、ユカリは思ったよりも遅くなった理由をでっちあげることにした。


 それが何故下着の話になるのか。いや下手に追及する気も失せるセンシティブな話ではある、あるがもう少し何とかならなかったのだろうかと、ルイはちょっとユカリに対して恨みがましく思う。

 恥ずかしかったのだ。


 ただ、ユカリはそのルイン恥ずかしいという気持ちを理解できていないような気がした。


 ルイはツカサに訊ねる。


「……ユカリさんも、壊れてるんですか?」


「酷い言い方だけど、そうかもね。どうだろうね? あの子の記憶、どこまで見た?」


 ツカサは張り付いた笑みでルイに問う。


「全部です……サトルさんとの記憶が無いと言う事も、その、あの災害の事も、あの子達が……見捨てようとしたことも」


 ユカリの記憶の中でも、一番激情をもって覚えられていた真っ黒な沼。

 そしてそこに沈む兄の姿。

 それを泥だらけになって震えて見ている三人。


 助けられたくせに、自分たちは助けられたくせに、どうして見捨てるのだと……ユカリは強く三人を恨んだ。

 どうして自分の半身を見捨てたと、心の中で詰っていた。


「ああ、そう、やっぱりユカリはまだ、アセビたちを許せないんだね?」


 あーあと呻いて顔を覆い身を折るツカサ。

 指の間からくぐもった声で言い訳のように気にしなくていいのにとこぼす。


「別にいいんだよ。僕一人が死んで、あの子達が生き延びれば、それで十分黒江家は存続で来ていたし……僕があの子達を助けようとしたのは、僕の自由意志だし? 結局死に損ねた」


 そう言うツカサの目は光とを灯さず、底なし沼のような暗さを湛えていた。


「……でも、それを見て平気なら、きっと君たちドッペルゲンガーは、僕のスペアになり得るね?」


 うっそりと微笑みそう言うツカサに、ルイは静かにうなずいた。

本日の更新もこれだけ。

明日も一回更新です。

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